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異形頭好き、『デ・キリコ展』へ行く



異形頭を求めて

 異形頭、それは最後のフロンティア。
 なにそれ? とお思いであれば、映画泥棒を想像して頂くと話が早いと思います。

 要は、体は人間だけど頭が人間じゃないキャラクター。それが私がこよなく愛する異形頭です。(ちなみに私はかつて『映画泥棒カフェ』なるお店に行ったことがあります。)

多分2018年、原宿で期間限定オープンしていたお店です。

 最近だと、『異形頭さんとニンゲンちゃん』というマンガが人気なので、こちらの作品をきっかけに異形頭を知ったという方も多いかもしれません。


 そんな異形頭好きな私の目に留まったが、東京都美術館で2024年4月27日[土]~8月29日[木]開催の『デ・キリコ展』のポスター。(👇のサムネにもあります)

 これを見てからずっと行きたいと思っていましたし、前売り券も即効買ってワクワクと開催を待っておりました。

 私は、異形頭の中でも特に顔が無機物で出来ていて、顔・表情がないものが好きです。だから、デ・キリコがマネキンをモチーフとした絵を多く描いていたと知ったらこれは見るしかないと飛び付きました。

 後、形而上絵画が好きだったのもあります。ちょっとシュールで脈絡がなく、歪んでいる。サイコー!


異形頭好き、顔がないのは不穏だと気づく

 私は異形頭が好きなので、顔がない絵を見ると「わあ……(歓喜)!」となることが大変多いです。
 例えばゲーム『Fate/Grand Order(以下、FGO)』のアヴィケブロンなんか、性格も彼の物語も見た目のデザインも大変素晴らしいと思います。
(👇のサムネの人)
※正確に言うとアヴィケブロンは異形頭ではないけど……。

 ところが、『デ・キリコ展』を見て気づいたのですが顔がないって不穏なんですね。と言うのも、デ・キリコのマネキン(マヌカン)の使い方がめちゃめちゃ不穏だから。

 人物というモチーフは、古典絵画において重要なモチーフです。裸の人がどーん! 人の形をした神様がババァーン! といった絵画をご覧になったことがある方は多いと思います。
 ですが、デ・キリコは哲学者や天文学者といった人が居るべきところに、顔のないマネキンを据えた絵を描きました。

 わあ……(なんか怖いけど見ちゃう)。

 当然、デ・キリコが人の絵を描けなかったからじゃありません。こうやって、人が居たはずのところに記号としてのマネキンが現れることで、ただマネキンが居る以上の不気味さ・不穏さを見る側に与えます。

 今回の展示は、デ・キリコのたくさんの肖像画・自画像で幕を開けていたこともあり(つまり、人面を描くのは得意だし作品の方向性としてやっていたと示している)、マネキンの不気味さ・不穏さを感じやすい構成になっていたなと思いました。

(でも、この「よっ!」って手を挙げてる風に見える『ギリシャの哲学者たち』はちょっとかわいい。哲学者同士、お喋りが弾んでいるのかも👇)

 私が異形頭を好きな理由は、「ない顔を想像してもいいししなくてもいいから」。表情がなくても、他のどこかを見れば感情がわかるかもしれない。表情がないから、こちらが推し量れなくても仕方がない。そういうある種の気軽さを覚える存在でした。

 でも、それが「人が居るべき場所」に挿げ替えられていると、なんとまあ不気味なことか。
 私は、楽しそうに暮らしている異形頭が好きです。意思があって生き生きしていて欲しいなと思います(先述のFGOアヴィケブロンは、なんやかんやでとても楽しそうです)。
 ですが、デ・キリコが描くマネキンたちにはほとんど意思を感じません。それでいて、観賞しているとこっちを見られているような居心地の悪さを覚えたり、ふらりと動き出しそうな迫力に足が竦んだりしてしまうのです。

 異形頭好きな私に『デ・キリコ展』は気づきを与えてくれました。顔がないって、怖いんだな……と。映画泥棒が時として人に嫌われてしまうのは、映画の本編上映直前に割って入って来るからという理由だけでなく、そもそも不気味だったからなんですね。


思い出のアルバム

 東京都美術館での『デ・キリコ展』は展示物の撮影NG。ですが、展示室の外にはちらほらフォトスポットがあるので、その辺りの様子&持ち帰ったグッズの思い出、おまけに上野公園の景色を置いておきます。

上野公園を歩いてしばらく行ったところに看板。晴天に映えますね。
やってるやってる。
展示室入り口そばにもパネルがあります。右の灰色の壁の向こうはイヤフォンガイドの貸し出し受付。
展示室を出るとこんなスポットが。
新聞の記念号外がもらえます。
こんな感じの一枚です。
紙が結構丈夫なポストカード。テンション上がってたくさん買ってしまいました。

 どんなグッズがあるのかは、公式ホームページにてご確認ください。図録は表紙が2種類から選べたようです。また、2024/5/16からヒグチユウウコさんとのコラボグッズも販売とか。

とてもいい天気の日に行きました。修学旅行生も多かったです。(私も修学旅行で来たことがあります。)
同じ上野公園内にある国立西洋美術館の庭で見られるロダンの『地獄の門』。無料で観賞出来るので、『デ・キリコ展』の道すがら立ち寄るのも良い感じです。


あなたの好きがきっと見つかる

 デ・キリコは、形而上絵画はもちろん肖像画・自画像や古典絵画に影響を受けた画風など、年代によって色んな方向性の絵を描いた人。ですから、きっとあなたが好きな雰囲気がどこかにあると思います。

 また、東京都美術館内ではcafeとのコラボメニューも展開中。五感をフル稼働させてデ・キリコの世界をお楽しみくださいな。

『デ・キリコ展』は東京都美術館で2024年4月27日[土]~8月29日[木]、神戸市立博物館で2024年9月14日[土]~12月8日[日]開催。休館日など最新情報は公式ホームページSNSにてご確認の上、ぜひとも足をお運びください。


参考文献とおまけ

デ・キリコに目覚めた・目覚めそうな方へ

 せっかくだから『デ・キリコ展』の前に予習して展示をもっと楽しみたい! 『デ・キリコ展』をきっかけにデ・キリコについて知りたくなった! そんなあなたにおすすめの文献をいくつかご紹介します。


異形頭に目覚めた・目覚めそうな方へ

 こちらでご紹介するのは、デ・キリコには全く関係ありません。ただの異形頭好きな私の趣味です。

 まず、先述のFGOアヴィケブロンはアニメ『Fate/Apocrypha』に登場しています。気になった方はぜひご覧になってください。最高にいい地獄をどうぞ。FGOのアヴィケブロンはこのお話を経ているので、色々と吹っ切れて楽しそうです。

 あと、世の中の異形頭ってちょっと怖かったりゴシック寄りだったり血みどろだったりすることが多く、自分の好みではない場合もあります。(そうした有り方の異形頭を否定するわけではありません。ただの私の好みの問題です。)
 そこで私は、自分好みの異形頭を考えて小説をしたためました。以下はいずれもカクヨムで公開中の拙作(小説)です。ご興味あればぜひ。

・ティーンズ・イン・ザ・ボックス
 
近未来のハイスクールを舞台にした、内気な少女と黒い茶筒頭の少年による青春SF恋愛小説。洋画・洋ドラマがお好きな方、ディスコサウンドやエレクトロニカがお好きな方、あと直接表現はないですがDaft Punkがお好きな方にもおすすめです。(※現在非公開)

 この作品は、以前こちらの記事でも取り上げています。

・物語屋、移住する ~人人種と人木種の類まれなる理想的な結婚
 異世界が舞台の中編作で、都会っ子の主人公が持病をきっかけに森へ引っ越すお話です。主人公のクセモノ主治医の頭がミルクパン、頭で紅茶を淹れることもあります。(※現在非公開)

『デ・キリコ展』の思い出話をするエッセイで、拙作をご紹介することになるとは思ってもいませんでした。でも、私が好きな異形頭について少しだけ触れることが出来てなんだか嬉しいです。

 何はともあれ、『デ・キリコ展』はとてもいい不穏と色を浴びることが出来る展示。これからの会期中も引き続き、盛況したらいいなぁと思います。


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© 2024 Aki Yamukai

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矢向 亜紀 / やむかい あき
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