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#読書感想文「82年生まれキム・ジヨン」チョ・ナムジュ

韓国の女性差別を映し出した作品。 

最初から文章に特徴があり、これは誰目線の言葉なのだろう?と思っていたら、最後に、キムジヨンを診察している精神科医の視点ということが判明する。
 女性の置かれた立場の大変さに、男性が気づいていないということを指摘しているのに、男性である精神科医が、無自覚な女性差別的な選択をしているというオチ。
 いろんなシチュエーションを、一人の主人公が経験するでき事として詰め込んだ形のストーリーになっていて、ルポではなく小説にすることで、逆にストレートに表現することができた例ではないか、と思った。
 日本の作品で、ここまでストレートな表現で女性問題を提起したような小説があっただろうか。あったかもしれないが、私は知らない。

 解説で、ミラーリングの事が書かれていた。問題に無自覚な人への気付きを促すのに、ミラーリングは効果的な手法だと思った。
 作品の内容とは、ずれるかもしれないが、映画やドラマ、小説でも、男性が主人公だったものを女性版にしたときに、キャラクターがかわってしまうことに不満を持っている。 
例えば、女性になったとたん露出の多い衣装になるとか。性格とか。男性のキャラクターそのままを女性が演じても良いのに・・・と思う。 
 男性が主人公で、そのキャラクターに感情移入して観たり読んだりすることも多い。少年漫画や男性週刊誌を女性も読む。 
差別と区別は異なるけれど、今まで男性特有のキャラクターとされてきたタイプの女性キャラクターがいてもいいのでは?なんて事を未だに思う。

この作品は女性差別を描いているけれど、あらゆる差別で、差別する側の無自覚というものは、ある程度存在していると思う。 
この作品のような手法や、ミラーリング的な手法で、いろんな社会問題を描く試みがあれば興味が沸く。 
人種、国籍、出身、職業、正規非正規社員、既婚未婚、子あり子なし、見た目、趣味、居住地、血液型、生まれ順(第一子、中間子、末っ子、ひとりっ子)、〇〇占い(その時流行った占い)のタイプ、等々。さまざまな差別と偏見が存在している。 それらは結構無自覚に人を傷つけたり、理不尽な状況を生み出したりしている。 

エンターテイメントは、こういった社会問題を風刺したり、問題提起する力も持っている。 その可能性に新たな希望の一端が見えた作品だった。

〈文・見出しイラスト/犬のしっぽヤモリの手〉
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<© 2024 犬のしっぽヤモリの手 この記事は著作権によって守られています>

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