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村の昔の生活史

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昭和43年から続く小さな村の広報誌。ページをめくると大野見の歴史や民話、暮らしぶりが記されている。 そこには歴史の教科書に出てくる偉人など一人もいない。
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#嫉妬

嫉妬深さに向き合う

嫉妬深さに向き合う

昭和43年から続く大野見の広報誌に編まれている、
昔話「悲劇の神童 庄三郎-前半-」。(後半はこちら)
たかが昔話、されど昔話。
人間の嫉妬の恐ろしさを伝える、ある少年の悲話である。

13歳の少年、盗みを犯す
落合の橋を渡った時一ばんどりが鳴いた。

静寂の空に星が桑田山(そうだやま:中土佐町の東に位置する標高770mの山)にむかって走っても今朝の庄三郎は少しも恐怖をおぼえなかった。彼はただ夢中

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つながりが断たれる心地よさ、つながりを感じる安堵感

つながりが断たれる心地よさ、つながりを感じる安堵感

悲劇の神童 庄三郎①に続く後半。
奇才がゆえに皮肉にも、悲運を辿ってしまった庄三郎の最期はどうなるのか。
そして、改めて思う、「何でもない土地」に昔話が残っている愛おしさを言葉にしてみた。

逃げ続ける庄三郎が見たもの
 どこをどう行ったのかただ夢中であった。
喘ぐような庄三郎のはく息と落葉をふみしめる音が交差しながら、上へ上へと登って行った。

どれだけたったかはじめて振り返った時、神母野の人家

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