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K君のおかあさまへ5)ひきこもりと体のケア

 こんにちは。お久しぶりです。
 前回のお手紙は、なんだかまとまらない話を長々としてしまいました…。親子関係を少しでも改善するための、考え方とか、方法を、ひねり出してみたのですが、やはり、ことばにするのが難しいですね。少しでも、お役に立てていたらいいのですが…。

 さて、今回は、もうちょっと具体的に、わたしが歯切れよくお話しできることをお伝えします。体調管理についての話です。
 このことは、「K君への手紙」のほうでも書いた内容なのですが…今回は、もっと詳しく、具体的な体調管理の方法とか、親にやってほしかったケアのことなどを書いていこうと思います。
(もしよろしければ、「K君への手紙」のほうもお読みくださればと思います。)

 さて、まず…、あらかじめ断っておきたいのですが、わたしが経験したのは、体調不良を伴う不登校であって、他の…そうですね、学校がつまらないから、街に遊びに行ったり、夜遅くまでバイトで疲れているから、学校の授業などについていけなかったり…そういう、非行とか、家庭の経済状況の苦しさ、子どもにかまう時間がないなどの要因がひそむ不登校については、あんまり役に立たないかも…ということは、先に申し上げておきます。
 でも、おかあさまもすごく教育熱心で、子どももまじめでいい子だったのに…という場合については、けっこう参考になるのではないかと、自分では思っております。
 K君のおかあさまは…、おそらくですが、後者のほう…。いい家庭で、子どもの教育にも関心が高くて…というケースだと思うので、聞いていただければと思います。

 前置きはこのくらいにして…。
 そうですね、K君は…「おなか痛い」「頭痛がする」「朝起きれない」「からだがしんどい」「だるい」「うごけない」などの症状が、とくに朝に強く出て、それで、学校を休ませてみるも、お昼ごろには、わりと元気そうにしているし、ゲームなんかもしているし、明日は大丈夫そうだな~と思っていたら、やっぱり次の日も、朝、調子がわるくて…。みたいなご様子…今がそうかもしれないし、過去そうだったかもしれません。
 病院につれていくと、「自律神経失調症」とか、「過敏性腸症候群」とか、あと、なんでしょうね…診断名にも、流行り、廃りがありますので、なんとも言えないのですが…。とりあえず、病名をもらって、カウンセリングなどもすすめられて…といった感じでしょうか。
 前も書いたかもしれませんが、「自律神経失調症」とかは、一連の症状が出ている場合にもらう診断名でして、正直、症状の説明にしかなっていないのですよね。ええと、つまりですね、病気であれば、原因と、治療法がセットで知識に織り込まれているのですが、あくまで、症状に名前をつけているだけなので、根本的な解決の仕方が、あんまり教えてもらえないといいますか…。
 少なくとも、わたしの場合はそうでした。いくら病院に通っても、ちょっとした胃腸薬を出されて様子見しましょうと言われたり、うーん、隠れた大きな病気とかは、ないと思うけど、一応検査してみようか、と言われて、検査しまくったり…。
 はっきり言って、全然役に立たなかったんです。病院の治療が…。

 でも、まあ、大病が隠れているかどうか、とか、そういうのを調べるのは得意なんですよね。西洋医学は。そういう風に、機能をしぼって、利用していくといいのだと思います。不定愁訴とか、自律神経失調症とか…、そういう、大病ではないけど、体からのSOSのサイン、みたいな、一連の不快症状に対しては、養生…つまり、無理のない生活を送ったり、よく体を休ませたり、体を労わるものを食べたり…そういう、自分の生活習慣とか、食生活、生活態度によって、改善していくほかないのだと思います。

 もう、お気づきかもしれませんが、わたしは、不登校の時に、病院に行っても、検査・異常なし、検査・異常なしの日々で、一向に治らない、という経験をしてから、病院ぎらいになってしまいましたので、自分で自分の体調を整える方針に、考え方を切り替えました。もちろん、急性の病になってしまったときは、仕方がないので病院に行こうとは思っていますが…。
 病院がきらいではない方…西洋医学がきらいではない方は、きっと、熱が出たら解熱剤を飲んだり、風邪をひいたら風邪薬を飲んだり、頭痛や生理痛の時に痛み止めを飲んだりすることに、抵抗がないかもしれません。
 でも、それって、不快な症状を和らげるだけであって、根本的に風邪を体から追い払ったり、頭痛を治したりは、薬はやってくれないんですよね。もちろん、症状が和らぐことによって、痛みに煩わされずに、よく眠れたりとか、そういう…より質の良い睡眠や休息がとれて、体が回復しやすくなる、という利点もあると思います。しかし、百歩譲って、症状を抑えることは回復の補助にはなる…のかもしれませんが、結局は、よく食べ、よく眠らないと、根本的にからだが元気にならない、と思います。

 要するにですね、なにが申したいかといいますと…。自律神経の乱れ、とか、生活に支障が出るほどの気分のムラ、とか、胃腸の不調とかは、根本的には、体が弱っていて、休息が足りていない状態とみていいと思うのです。あと、ですね、長期的にひきこもっている場合は、やはり、筋肉が落ちていたり、運動不足で血の巡りがわるくなっていたりして、なんていうのでしょう…体力も落ちていて、体の回復力が低下している状態だと思います。
 「うちの子は一日中寝てるから、休息が足りてないなんて嘘だよ!」と思っていらっしゃるかもしれませんが、体の回復力が発揮できない状態…つまり、体がガチガチに緊張していて、ゆるめられない状態だったり、体内の血液循環が滞ってしまっていたり、あるいは、周囲の人たちもそわそわして落ち着かなく、ゆっくり休める環境になっていない状態だったりすると、一日中寝ていても、少しずつしか…あるいは、ほとんど回復していないという可能性もあるかと思います。

 元気な人は、休む、ということが、自然にできていますけど、一度体調をひどく崩すと、ちゃんと休むのってこんなに大変なのか…! と、びっくりするくらい、休むのがむずかしいです。ひょっとしたら、おかあさまも、「ちゃんと休む」ということができていないのかもしれません。いつも、K君のことや、今後のこと、家計のこと、人間関係のこと、などなど…、そういうことを心配していらっしゃるのだとしたら、それは、気が休まっていない証拠です。休む技術、というものが身に付けば、自然と、K君がどうすればリラックスして自分の回復に専念できるのか、ということも、分かっていただけると思います。

 まずですね…。どうしても、皆さん、体質の違いがあります。前回は気質とか性格の違いをお話したのですが、同じく、おかあさまと、K君が、そのまま同じ「体質」とは限らないということを、忘れないでいただきたいのです。
 わたしの生まれた家の話をしますと、わたしには上に姉がいるのですが、姉と母は、けっこう性格も体質も似ているのです。感情表現が豊かで、明るくて元気があって、食べるのが大好きで、ストレスで太りやすいタイプです。そして、姉は体調を崩したときに、どちらかというと、熱がこもって、しんどくなるタイプだったように思います。果物ゼリーとか、プリンとか、冷たいものを好んで食べ、冷えピタ(おでこに貼る、冷たいシート)とかも好きだったようでした。母も、そういう看病の仕方を好み、「病気のときは、果物ゼリー」という家庭でした。しかし、わたしは、どちらかというと、父方の家系の体質に近くて、冷えで体調を崩すことが多いので、そういう時に冷たいものなんて食べたくないし、食欲は湧かないし、放っておくと瘦せていく、というタイプでした。調子がわるい時に、冷たいゼリーをすすめられたり、「たくさん食べないと元気にならないよ」と言われたりするのは、今思い返せば、しんどかったです。わたしには、母の看病より、父方の祖母の看病のやり方…、なるべく冷たいものを避け、とにかく体を温め、少量のおかゆを食べる…というやり方のほうが、体に合っていました。でも、母が、よかれと思ってやってくれている看病に対して、あまりケチはつけられませんし…。病人なのに、母親に、変に気を遣ってしまっていました。
 やはり、体調不良を大きく分けると、体に余計な熱がこもって炎症が出るタイプと、冷えてしまうタイプがあるように感じます。あとは、栄養が足りないタイプと、栄養があり余るタイプですね…。その人に合った看病の仕方をしないと、要らぬおせっかいというか…かえって、回復の妨げになると思います。

 こういう話は、あんまり西洋医学の界隈では聞かないのではないでしょうか。わたしの家庭は、結構、健康オタクの集まりというか…。母も、祖母も、テレビで健康情報を集めるのが大好きだったし、病気についての番組もよく見ていたり、家に分厚い「家庭の医学」という本が置いてあったり…。健康に対する意識が高くて、わたしも、そういう情報を親と一緒にみたりしていたのですが、いま話したようなことは、一切聞いたことがありません。「病気」については詳しくなっても、病気がおこる環境である「人の体」についての知識がなかったように思います。人それぞれ、求めるものも、好みも、全然違うのに、病気の治し方はみな同じ…なんて、そうとは限らないかもしれません。
 いまお話していることは、「東洋医学」の知識です。東洋医学…そうですね、中医学とか、漢方とか、薬膳とか、そういう系のやつですね。「怪しいなあ」と感じる方も、まあ、いらっしゃると思いますが…、人それぞれの体質に合わせた、体のいたわり方、ねぎらい方がある、という考え方に基づき、西洋医学がうまく対応してくれない不定愁訴やら、自律神経失調症やらにも、原因や解決法を提示してくれるので、結構わたしは気に入っています。
 そうですね、皆さま全員に当てはまるような、いまいち元気がない時の過ごし方としては…、砂糖の入ったものを食べ過ぎない(消化管の負担が大きいのです)、体温より冷たい食べ物・飲み物をとらない(内臓をむやみに冷やしたくないです)、刺身などの生ものを控える(同じく消化管の負担大)、油の多いものを控える(同じく…)など、消化吸収にかかる負担をできるだけ減らして、体調の回復に専念できるようにするといいです。元気がない時に、励まそうとして、子どもの好物のピザ・ケーキ・すし・霜降りステーキを食卓に出すとか、ほんとうに逆効果ですので、お気持ちはありがたいのですが、お控えくださいね…(食べるとしても、少量でお願いします)。

 あと、過緊張のことをお話しさせてください。これが、ほんとうに、回復を妨げます。
 わたしは、小さい頃から人間不信といいますか…、人に心を開いたり、頼ったりするのが苦手だった、というお話は、以前させていただいたかと思いますが、そういう人って、体がガチガチに固まっているんですよね(これは、整体の界隈ではよく聞く話です)。よく、大した筋トレもしていないのに、腹筋が割れていたり、上腕筋がくっきり出ていたりして自慢している人がいますが(はい、わたしのことです)、これは筋肉がムキムキである証拠ではなくて、余計な緊張があったり、体をゆるめるのが苦手な証拠なのです。残念なことですが、大して使ってもいないのに筋肉が盛り上がったりは、ありません(たぶん)。お腹は、ガチガチではなく、手を当てたら柔らかく、指が沈んでいくのが理想です。
 自律神経失調症やら不定愁訴やらを、そういう…筋肉の硬直を解くことによって、改善していく、というのも、ひとつの手だと思います。よく、回復のために、「散歩しなさい」と言われると思うのですが、軽い運動で、体をほぐして、血液の循環をよくすることで、確実に身体の回復力は高まりますし、丈夫になると思います。気分の憂鬱も、だるさも、面倒くささも、案外、身体が柔らかくなって、よく動くようになると、改善していったりします。
 わたし自身、2年間メンタルヘルスに通うよりも、1回の整体で、精神の不調が大きく改善した経験があります。みんなに当てはまるわけではないと思うので、あまり期待を大きくしてもよくないかもしれませんが、もし…K君自身が、行ってみたい、と言ったら、連れて行ってあげてもいいんじゃないかと思います。K君の気が進まない様子だったら、ぜひ、おかあさまだけで、整体やマッサージなど、行ってみてはいかがでしょうか。きっと、おかあさまも、ご苦労が多いことと思いますので、体に疲労がたまっているかもしれません。
 人に心を開くのが苦手な方は、きっと、他人に体を触られるのも、ものすごく嫌なので(これも、わたしのことです…)、そういうところに行くのも勇気がいると思います。決して、K君に無理強いをしないであげてください。人に言われて無理やり動くことは、なんといっても、いちばん体にわるいですから…。人に触られたくなかったら、お風呂に入って体をゆるめるのも効果的だと思います。でも、そもそも、緊張状態に慣れ過ぎて、体がゆるむ感覚がきらい、という方もいらっしゃいますので、まあ、無理はなさらず。自分で、お腹に手をあてているだけでも、結構ゆるみますし、今にわかに話題の「ヒモトレ」なんかも、体が整う実感があります。あんまり詳しく解説はしませんが、体をゆるめる手段はいろいろありますので、どうかあまり思いつめずに、ご自身とK君に合う方法を、探していってもらえたらと思います。

 長くなってもいけませんので、今日はこのくらいにしておきます。
 子どもからすると、親に、あまり、心の問題のほうには立ち入ってほしくない、という思いもあるかもしれないので、深いお悩み相談の相手になってくれるよりは、体調や、体を元気にするための環境に気を配ってくれたほうが、ありがたいかもな…と思い、体のケアのことをお伝えさせていただきました。あくまで、わたしの好みの問題かもしれませんが…。
 もうすでに、いろいろ調べていらっしゃって、わたしの知識など足元にも及ばないかもしれませんが、それでも、今日お話ししたことの中に、なにか参考になることがあれば嬉しいです。

 それでは、おかあさまも、自分の体に合ったやり方で養生して、からだをゆるめて、リラックスしてお過ごしください。
 どうぞ、ご自愛くださいね。

                            20XX年X月X日
                         やまのうえのきのこ

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