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創作小説『こうして店は消えていく』 (1/4)

『続・こうして店は潰れた』という本を出した時、架空の店が壊れていく様子を小説に書いた。しかし文字数の関係でこの部分は全てボツ💧
せっかく書いたので『note』に遺しておきたい🙏🏻良かったらお付き合いを!


10の倒産や閉店があれば10通り、それが100なら100通りの原因や事情がある。とかく「売り上げ低迷」とか「借入金負担が経営を圧迫」「人手不足倒産」などとカテゴリー分けされてしまうが、当事者にとっては自社の倒産がすべてである。

☝️ここであくまで架空のスーパーが破綻に至る流れを追ってみたい。

フィクションなのでサンプルがある訳ではない。もし倒産する予定があるなら、少しは参考になるかもしれない (笑)

✅最近、売り上げが落ちてきた「スーパーとまと」。地域に1つしかない食品スーパーで、従業員は親族に加え社員・パート数名の計10名ほどの個人店である。

年配のカリスマ社長とは違い、2代目である専務の息子はパソコンばかりいじっている道楽息子である。地元の大学を卒業し、結婚後も両親と店の2階にある住宅に同居している。

商人の血筋から外ヅラだけはよく、やれ青年会議所だ商工会議所青年部の会合だと言ってほとんど店にはいない。

👤「田舎で商店なんかやってもたかが知れている」と友人たちとインターネットを使ったビジネスを企んでいるらしい。

店ではチラシの作成とポイントカード販促を担当する。店番の時はエプロンをしているが、出かける時はスーツに身を包み、深夜の帰宅がほとんどだ。

社長はその歴史の長さから、地域や金融機関からの信頼も厚かったが、息子は何をするにも反対する父にいつも歯向かっていた。

👤「商工会議所に資金の繰りの相談に行くからお前も来い!」と社長の父。

『金のことはわからないから任せるよ』と他人事の息子。

いつものことだが、社長(父親)は跡を継がせるかどうか迷いながら、もしその時には少しは金を残して店を渡したいとの思いから、老体に鞭打ちながら休みもなく日々頑張っていた。

☝️「マル経融資の枠はもう使い切っているので、公庫からの借り入れは無理ですね…」

社長は旧知の商工会議所職員に言われて店に戻った。このままでは代替わりどころか月末の支払いにも困ってしまう。なんとかしなくては……


☝️スーパーとまとの売り上げ低迷の原因は、すぐ近くにコンビニができたことだ。

「こんな田舎にまでコンビニを建てやがって!オーナーなんか商売も知らない隣町の土地持ちらしい、とっちめてやりたいわ💢」いくら憎んでも法律に基づいて出店しているのだから、その文句は誰にも届かない。

次の日、社長は古くから付き合いのあるメインバンクでもある地方銀行の支店長を訪ねた。

👤『これが支店長に頼まれた直近3カ月の試算表と資金繰り表です。なんとか月末までに500万ほど借り入れをしたいのですが……』

いつもは会うとニコニコして、人当たりの良さそうな支店長の目が曇る。

「急に売り上げが下がってきていますね、原因はコンビニの出店だけですか?」

痛いところを突かれてしまった💦
実は隣町にできた大型スーパーの影響を甘く見ていたため、挽回のために負けじとチラシ広告を増やしたり、原価を割った安売りで商品を提供し続け、利益率が大幅に低下していたのだ。

「それと、人件費も少し増えていますね?」

『息子も子供が産まれてなにかと金が掛かるとかで……』今日のやり取りはいつもと違う。

「保険料も今期から増額ですか?」

『私の退職金代わりに、半分経費計上できる商工会議所お勧めの保険です』

「それで売り上げや経費をどう改善されるつもりですか?」

『地域密着で惣菜部の売り上げや利益率を上げます!経費は全部見直しますからなんとか🙏🏻』

こうした警察の取り調べのような問答の後、「本部の決済が必要ですから、数日後に回答いたします」との返事をもらい、とりあえずその日は銀行を後にした。

週明け、その銀行の担当者(息子の同級生)が結果を知らせに来ると言う。

嫌な予感はしていたが…。

続く


※最後までお読み頂きありがとうございます!

あなたが失敗した時、迷った時、逆境の時、倒産地獄から生還した私だからこそできる励ましを届けたい。皆さんの力となり、笑顔になれる記事を投稿していきます。私もまだ発展途上です、一緒に成長していきましょう!

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