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親魏倭王の本の話題

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主に小説について。読書録とはまた別です。
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#読書

推理小説の二大潮流

推理小説の二大潮流

ミステリー=探偵小説=推理小説は、犯罪を通して人間を分析する小説と言うこともできる。その萌芽はすでにエドガー・アラン・ポーの時点で見られており、「モルグ街の殺人」冒頭の語り手とデュパンの会話に凝縮されている。また、「盗まれた手紙」は作品自体が人間が持つ心理的盲点の暴露を意図していて、この作風は直接的にギルバート・キース・チェスタトンに受け継がれる。

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推理小説の寓話的側面

推理小説の寓話的側面

ギルバート・キース・チェスタトンはミステリー作家の中でも特異な存在である。
彼はもともと評論家として活躍しており、小説、特に推理小説を書き始めたのは1910年頃(それ以前にスリラーが1篇ある)である。

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エドガー・アラン・ポーの推理小説

エドガー・アラン・ポーの推理小説

エドガー・アラン・ポーは19世紀アメリカの小説家で、ナサニエル・ホーソーン、ハーマン・メルヴィルと並んでアメリカ文学黎明期の巨匠と言える。
ポーはミステリー、SF、ホラー、ファンタジーといった大衆文学のあらゆる分野を網羅した作家である。ゆえに、これらのジャンルはポーに始まると言っていい。ポーの作品をジャンル別にすると下記のようになる。

・ミステリー
 モルグ街の殺人、盗まれた手紙
・SF
 ハン

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シャーロック・ホームズシリーズの4大長編について

シャーロック・ホームズシリーズの4大長編について

シャーロック・ホームズシリーズは、4つの長編と5冊の短編集(全56篇)の計60篇からなる。今回は、そのうちの4大長編について、思うところを書いてみる。

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怪盗ルパンシリーズの人気の秘訣とは

怪盗ルパンシリーズの人気の秘訣とは

推理小説から派生した1ジャンルに「怪盗小説」がある。嚆矢となったのはE・W・ホーナングの『二人で泥棒を』(1899年)で、この時点でフェアプレイや殺人の忌避など、怪盗小説の定番となるルールができあがっている。その後、四十面相のクリークをはじめとする怪盗キャラクターが数多く生まれ、百花繚乱を呈したが、シリーズとして長続きしたものはなかった。怪盗小説は「何をどうやって盗むか」が物語の焦点となるが、通常

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エルキュール・ポアロの探偵手法

エルキュール・ポアロの探偵手法

「ミステリーの女王」の異名を持つアガサ・クリスティーは、生涯に数多くの推理小説、冒険小説を残しているが、中でも大きな功績は名探偵エルキュール・ポアロを生んだことだろう。ポアロはその知名度ではシャーロック・ホームズに匹敵する。彼がそこまで有名になったのは、クリスティーの作品が世界各国で訳され親しまれているからだが、彼の探偵手法にオリジナリティがあったからでもある。でなければ、シャーロック・ホームズと

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