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元学芸員が言い残したいこと

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#保存

歴史遺産=文化財の記録保存(次善の策)の必要性

歴史遺産=文化財の記録保存(次善の策)の必要性

個人的に、「歴史遺産(文化財)は原則として全て保存すべき」だが「現実にはそういうわけにいかないので、どれを保存するか取捨選択するのはやむなし」だと思っている。だから、指定・登録という制度があるのだと認識している。
例えば、周知の埋蔵文化財包蔵地=遺跡は、原則に基づいて全て保存するとなると一切の開発ができなくなり、生活に支障をきたす。そのため、発掘調査をして写真や図面で記録を取り、調査報告書を作成す

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博物館資料について

博物館資料について

改めて、博物館資料について考えてみよう。
博物館の収蔵対象となる有形文化財は、彫刻や絵画のような一点ものと、写本のように一点ものだが複数の系譜があり相互の比較検討が必要なもの、土器や民具のような量産型手工業製品にざっくりわかれる(かなり乱暴な分類であることは自覚している)。
近年、博物館収蔵庫の余剰の問題とともにピックアップされているのが最後の量産型手工業製品だ。これらは工人の違いで技法に差異が生

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文化芸術を取り巻く環境の実態

文化芸術を取り巻く環境の実態

しばらく前に、大阪府が美術品を地下駐車場で保管していたというニュースを見て、腰を抜かした。いくつかの新聞記事を渉猟したところ、大阪府立美術館設置の構想があったが、バブル崩壊に前後して頓挫。コレクションのうち大型の彫刻作品の保管場所がなく、地下駐車場に置いていたという。ちなみに、現在、大阪府に現代美術専門の学芸員はいない。
中には梱包もされずビニールシートを被せただけのものもあったといい、美術品に対

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