「流行」で終わるものと、「文化」として根付くもの
■「流行」の恐ろしい破壊力。Bean to Barの「流行」のインパクトの大きさとその反動
2014年12月1日に打ったたった1本のブランドローンチのプレスリリースでMinimal は200媒体以上に取り上げてもらいました。それ以外何もしていないにも関わらず、TV、ラジオ、雑誌、新聞、Web主要な媒体を網羅して取り上げられ、開業したばかりの小さいなお店に連日行列ができるほどお客さんが押し寄せました。
「流行」「ブーム」のものすごい破壊力を身を持って体験しました。Minimalの船出は「Bean to Bar」ブームが乗れたと言えます。そこから数年ブームは継続し、おかげ様でMinimalは多くのお客さんと出会う機会を頂けました。もちろん、プロダクトへの徹底的なこだわり、ブランドコンセプトの一貫性など、絶えまぬ努力が今でもMinimalが存在している大前提ではありますが、それでもブームの力をすごかったと言えます。
この流行やブームというのは恐ろしいモノで、必ず終わりが来るのです。そして、ブームの波が大きければ大きいほどその反対の反動も大きいのです。連日大行列な店が1年後跡形もなくなくってしまうという事が日常茶飯事に起こります。良くも悪くもMinimalは流行に乗って認知が広がり、そして流行の終わりが近づいていることをひしひしと感じていると言えます。好調なスタートを「流行」に乗ってきれたからこそ、一過性の「流行」に終わらせることなく、新しい「文化」として根付かせていく事ができるかはMinimalが今もこの先向き合っていかないといけない重要な命題なのです。
■大事なのは妄想やイメージ!新しいチョコレートが「文化」となる未来
Minimalは「チョコレートを新しくする」というビジョン掲げています。価格選ぶお菓子とブランドで選ぶ高級品の2極化したチョコレートに嗜好性やストーリーで選ぶ第3極として新しい文化創りこそが実現したい未来です。
第3極として新しいチョコレート未来、文化としての未来をいつも妄想しているのですが、妄想を膨らませた先の預言としては、
今から10年後なのか20年後なのか、カカオ農家から「スター農家」が生まれ、彼が「スターチョコレートメーカー」になっていくと思っています。消費者の皆さんがチョコレートを選ぶときに「今年はホンジュラスのサントス農園の西側の区画がいいらしいぞ。」的な選び方をする未来がくると本気で思います。ロマネ・コンティが一本とんでもない額になるように、その年のその畑からとれたカカオ豆から造ったチョコレートが1枚数万円という日が来るかもしません。by 山下貴嗣
ぜひその未来が来た時に一番最初にその未来を予言した人として記憶しておいてください笑
■流行作りと文化創りの違いは「1対n」と「n′:n」の違い
ビジネスとして存続していく事はもちろん、実現したい未来に向けて、Bean to Barを一過性の「流行」で終わらせる事なく、新しい「文化」として根付かせていく事がとても重要なのです。
では、「流行」で終わるものと「文化」として根付いていくものの差は何であるのか。これをずっと考えていました。仮に一時的にブームに乗り、Minimalが流行ってもそれは一過性のブームに過ぎない。ブランドや飲食店ではこの一過性のブームが良く起こるし、数年前には毎日どこかで目にしたお店が今はもうなくなっているなんてことは日常茶飯事です。
こうなるのは、1:nの関係=Minimal(1):お客様や生産者(n)という関係で捉えてしまっている事だと気づきました。つまり、自社の事や自社のブランドを中心にお客さんやそれを取り巻くステークホルダーの関係だけを捉えている状態です。もちろん生き残っていくためにはそこがベースでとても重要なのですが、本当に文化を創っていくなら社会全体の中でコレクティブなインパクトを起こしていかないといけないのです。
■きっかけは業界を巻き込んだチョコレートイベント
これを気付けたのが、発起人として行った「クラフトチョコレートフェスティバル(以下CCF)」です。日本中のクラフトチョコレートメーカーが30ブランド程集まって青山国連大学で行ったものですが、初開催にも関わらず多くの皆様にご来場いただき大盛況に終わりました。
Minimalが単体で行ってもこうはならなかったと思います。
それは1:nの関係性だけでなく、そもそも「1」を「n′」にすることが大事という事です。
つまりMinimalだけの「1」から、他のクラフトブランドを巻き込んで1を「n′」にしていく。
Bean to Barやクラフトチョコレートという業界においてn′:nの関係性の輪を広げていく事ができればそれは加速度的に拡がり、いつか閾値を超えて文化になるはずだと実感できた経験でした。
■「1:n」が「n′:n」に変わる事の影響力
これを体現した事例として面白いは、バスク地方のサンセバスチャンではないかと思います。
バスク地方はスペインとフランスの国境当たりですが、決してアクセスのよい地域ではありませんが、美食の街として知られ世界中から観光客が訪れ、経済は潤っています。
2017年のデータですが、ミシュランの三つ星レストランが3店、二つ星が2店、一つ星が4店あります。これは、人口一人あたりとしては世界一のミシュランの星付きレストランを有していることになります。さらに、世界的な飲食業界専門誌「レストラン」の「世界ベストレストラン50」のトップに2店がランクインしています。
言ってみれば地方都市にもかからず星付きレストランの宝庫なのです。なぜそうなったかと、料理人同士が手法やレシピを店ごとに独占せずに共有するという「料理のオープンソース化」を実現したことにあります。
普通に考えれば自店の美味しいメニューは自店のみで抱え込んで競合と差別化するために使うのが常にです。
しかしサンセバスチャンでは、小さなパイを取り合うよりも、そのパイの総数自体を大きくしていく事を選んだのです。
1:nの関係ではなく、個店(1)を町全体の料理人(n′)にして成功した好事例であると思います。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
さらにこの事例から学べることがあります。サンセバスチャンにはバスク美食倶楽部という組織が多数存在しているそうです。
元々はバスク男子が仲間同士で料理の腕を競いながら美味しい料理を食べるという目的だったらしいのですがいまでは男女問わず多くの人が所属しているようです。
この美食倶楽部が拡がって多くの人が食の感度を上げていく問う事は、1:nの関係で言えばnの方の質がどんどん上がっていく事を意味していると思います。いわばお客さん側がどんどんよりレベルの高いモノを求めるようになるし、町全体の食のレベルが高まるので、外からきた人への満足度も高まるという好循環が起こっている事なのだと思います。
■「1」を「n′」を変えるためにメタ化して考える
CCFを行って学んだことは、前述した通り、本来は競合関係にある業界関係者を巻き込んでn′にしていく事。
そして、気づいたのはn′は必ずしも業界内に限る必要はないという事です。
CCFが大盛況となったのは、クラフトチョコレートメーカーが一堂に会したことに加えて、私自身がカッコよくて信念を持っていると思う異業種のクラフトブランドの皆さんにも声をかけて参加してくれた事が一因だった思います。
チーズ、お菓子、日本茶、日本酒、コーヒーなど各ファンを持つブランドが参加してくれた事で各ブランドのお客さんにも情報が届いて普段チョコレートに遠い人たちが来てくれた可能性があります。
では、異業種であればどこでもよかったかというと少し違って、彼らとチョコレートメーカーの共通点はモノづくりに圧倒的にこだわりを持つクラフトブランドであったという事です。
彼らのお客さんはそこに理解があり、それを知りたいと思っているから彼らのお客さんはCCFに来てくれたのだと思います。
「流行」で終わらせず「文化」として根付かせていくためにはn′の定義仕方が大事です。要素をメタ化して、共通項を抜き、そこからn′を強化していく事が近道であると思います。
■「1」 を「n′」に、そしてもう一方の「n」の質を上げ続ける先に「文化」になる、、かもしれない。
実際にMinimalで日々カカオ豆やお客様と対話するうちにその可能性を感じています。しかし一方でそれがとても大それたことで実現できるかどうか全く見えないという事も同時に実感しました。
やればやるほどその難易度がリアルにわかり、途方もない事であると理解をして投げ出したくなることもありました(笑)
正直な話、死ぬまでに「文化」なんて大それたことにならないかもしれないけど、そうなるかもしれない!と1%でも可能性を感じながら仕事ができる事はとても幸せな事かもしれないと思います。
Minimalとして1:nの信頼関係性をベースにして、Bean to Barやクラフトチョコレート業界全体のためにn′:nの関係を創っていくためにできる事やっていきたいと思います。
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