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休養 睡眠法

前回、休養にはパッシブレストとアクティブレストがある、と書きましたが、今回は、究極のパッシブレスト、睡眠についてです。

ヒトにとっては言わずもがなの事ですが、あらゆる動物にとって、睡眠が大切な行為であることが、2020年の発見によって明らかにされました。
長年の間、睡眠は脳機能と切り離せない関係にあると考えられてきましたが、九州大学の研究グループによると、脳を持たない刺胞生物であるヒドラにも、睡眠メカニズムが存在するというのです。
つまり脳の進化より先に、動物には眠りが必要だったということです。
ということは多分、そもそも睡眠の本来の目的は、カラダを休ませることだったのでしょう。

このカラダの動きを止めることで休息させる睡眠法を「行動睡眠」「原始睡眠」と言い、無脊椎動物や、魚類、両生類、爬虫類などの変温脊椎動物に広く見られます。
しかし鳥類や哺乳類など恒温脊椎動物は、大脳の発達とともに、睡眠の方法も進化させました。
レム睡眠とノンレム睡眠の二本立てで休息させる「真睡眠」です。

真睡眠では、脳幹にある睡眠中枢が定期的にスイッチを切り替え、大脳を休息させるノンレム睡眠と、カラダの筋肉を弛緩させながら大脳を活性化するレム睡眠とを使い分けます。
ヒトでは1単位約1.5時間の間にノンレム期とレム期のサイクルを交代させ、それを数単位繰り返すことで一回の睡眠を構成しますが、最初の2単位(=3時間)に深いノンレム状態がまとまって現れるため、この時間帯が睡眠中で一番大切となります。
寝入りばなの3時間に大脳をしっかり休ませておかないと、睡眠の休養効果が不十分となり、覚醒時の脳の働きも低下してしまうのです。

睡眠は24時間から25時間のサーカディアン(概日)リズムとカラダのホメオスタシス機能に基づいて、自律神経系とホルモン系の働きにより調節されています。
毎日一定の時間に一定の環境で眠るのが理想的ですが、ある程度時間帯や間隔がずれても、埋め合わせができるようにプログラムされています。
しかしその人自身が持っている閾値を超えて不摂生をすると、大脳を十分休めることができず、機能回復が果たせずに睡眠負債を溜め込んでしまうことになります。
蓄積した睡眠負債が一定レベルに達すれば、自律神経やホルモンバランスの乱れを招いて不整脈や肥満、メタボリック症候群の原因となり、抑うつやアルツハイマー病を発症させる要因ともなります。

不眠症や過眠症などの睡眠障害に悩まされる人が、現代の社会では5人に1人いるそうです。
長時間眠らないでいると、記憶力の低下やイライラ状態が発生し、白日夢や記憶障害が現れて、精神的変調をきたした結果、ついには生命の維持もできなくなると言われています。
1日に必要な睡眠時間はヒトそれぞれ違いますが、覚醒時の効率を高めるためにも、まず優先的に確保すべきは適切な睡眠時間です。

睡眠は意識レベルを下げて筋肉の緊張を緩ませる、あらゆる動物にとって正に命がけの行為です。
睡眠中に襲われることは、生命の終わりを意味します。
大脳の休息は、それほどの危険を冒してでも、放棄することのできない大切な本質的タスクなのだということです。
他のあらゆる動物たちに比べて、人一倍発達した大脳を持つヒトにとっては、尚のこと、睡眠は重要な行為であると言えるでしょう。

夜ぐっすりと眠るためには、朝起きた時にしっかり太陽の光を浴びることが大切です。
視覚細胞が日の光を感じることで、脳の松果体から分泌される睡眠ホルモンメラトニンを抑え、体内時計を1日のスタート時間にリセットするのです。
そこから15時間後にメラトニンは再分泌され、自然な眠気が訪れます。
日中のストレスが大きすぎて、自律神経のバランスを交感神経優位の状態からうまく切り替えできない人には、5分から10分程度の瞑想をお勧めします。
その方法については、次回紹介したいと思います。

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