リユースプロジェクトのコンセプトデザイン|リマーケット(群馬県太田市)
仕事の事例(2021.3)
2021年、ブックオフがREMARKET(群馬県前橋市)の立ち上げで出品する昭和レトロの家電や生活雑貨のコンセプトデザインのアップデートをおこないました。
戦後昭和は「勢い」の時代
オファーをいただいた2020年末は2021年3月のオープンに迫った時期で、しかもコロナ禍の真っただなかです。そのため製造していたメーカーへの取材や視察などは困難でしたが、なんとか書籍、展示物、関わった人などを通じて理解に努めることができました。まずここでの率直な感想は「昭和の勢い」を感じたことです。
まず、どのメーカーも意欲的に機能やデザインにチャレンジしていています。一見無駄のように見える機能やデザインも(今見れば本当に無駄と思えるものも)、当時は意欲的に設けているものが多くあります。これは社会全体に「少しでも生活を楽しく豊かに過ごせるように」という強い思いを反映しています。また、高度経済成長期に入って考え方も行動も勢いがありました。
たとえば花柄の魔法瓶のデザインは、「色鮮やかなアイテムで、和の食卓を明るい雰囲気に」というコンセプトがあります。現在でイメージすると、団地に住んで花柄の魔法瓶を使うような暮らしは、タワーマンションに住んでネスプレッソがある暮らしに近いようです。ちなみに花柄のデザインは、景気が悪くなると流行る傾向があります。これは花柄の色合いやデザインで、少しでも日常生活を明るく健やかに暮らしたいという心理が影響しています。2000年代に花柄の北欧デザインが流行ったのも、同じような理屈と言えます。このようなアイテムが日本の家庭に登場してくると、食卓からリビングという生活様式の概念が変化していったことも興味深いものがあります。
コンセプトのデザインで大切にしたもの
令和になって、昭和の家電や雑貨は「昭和レトロ」と注目されています。レトロは懐古趣味という意味で、古さやノスタルジックを懐かしむ概念です。コンセプトデザインを進めていくと昭和レトロの捉え方が1つではないことがわかりました。それは、この時代を懐かしむ世代もいれば、はじめてふれた製品に新しさを感じる世代もいることです。私は、子供のときに家にあったことを何となく覚えていて、どちらかというと懐かしいと感じる世代です。それでも、見たこともない製品にふれると新しさを感じました。そのような感覚を大切にしなければなりません。
ヒトとモノとの関係を結び直して人生に寄りそえること
大切なのは昭和レトロに対する個人の思い出(記憶)や好奇心で、過度な装飾展示は必要がありません。そのため説明書きも時代背景と機能を要約した最小限の文字情報に留めました。周辺情報が入ってこないので、当時を忘れていた人は思い出(記憶)を振り返り、初めて見た人は好奇心で想像を掻き立てられやすくなります。そうすることで、目の前にある昭和レトロの世界観は、人それぞれに心のなかで広がっていきます。オープンした日に店内の様子を伺っていると、1人のお客様が「ここに来るまですっかり忘れていたけど、子供の頃にこの商品を使っていたことを思い出して、急に実家の親に会いたくなりました」と話しかけてくれました。
身近にあったモノが再び姿を見せてくれたときに人生を振り返るきっかけになれば、きっと何かが見つかると思います。今回は昭和レトロがテーマでしたが、リユースがもつ可能性は「ヒトとモノとの関係を結び直して人生に寄りそえること」ではないでしょうか。人生の、どこかで一緒だったモノとの再会は、これからの人生を見つめ直せるタイミングになるかもしれません。なぜなら、そのモノとの記憶は、そのヒトだけがもっている記憶だからです。
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