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短編小説・詩

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ちょっと重めのヒューマンドラマが多めの作品群。
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#短編小説

竹馬ん友の頭ん中。【短編小説】

竹馬ん友の頭ん中。【短編小説】

 メロス。君がアホの子であることは承知している。
 だが、今回だけは言わせてもらうぞ。

 その一。王の暗殺を企てるなら、家の用事は済ませてから来なさい。
 その二。勝手に人を身代わり指名するんじゃありません!

 幼少期に足が速いというだけで女子にもてはやされ、勘違いして成長したせいで友と呼べる者がいないのは知っているが。
 私は今、誰とでも広く親交を持ってきた事をかつてないほど悔やんているぞ。

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蜘蛛の糸の蜘蛛【掌編小説】

蜘蛛の糸の蜘蛛【掌編小説】

 いかにも私は天上に暮らす蜘蛛である。

 悟った人・仏陀の遣いであり、あの方が望むならばどんな役目でも果たしたいと思っておる。しかし――。

 いくら蜘蛛とて、無限に糸を吐ける訳ではない。
 糸を吐く行為自体、それなりに負担がかかるのだ。

 「地獄の底に糸を垂らし、大の男ひとりを引っ張り上げろ」とは、何という無理難題!

 ……とはいえ、否と言えるはずもなく。

 僅かな猶予を使い、氣を集める

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テロメア。【再掲】

テロメア。【再掲】

 独りぼっちは、寒い。肌がひやりとして、ピリピリと引き攣れるよう。
 五十年前。この世界から、「ニンゲン」は消えてしまいました。

「……おはよう、メア」
「なーん」

 私は明るい日差しで、いつも目を覚まします。時計は必要ありません。だって、時間はニンゲンが勝手に作った概念なのですから。大勢の人々が混乱なく動くためのそれは、もう役目を終えていました。
 ベッドの上に飛び乗ってきた年寄りの猫・メア

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