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オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』を読んで

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 1962.5.2 発行  新潮文庫

内容
 舞台はロンドンのサロンと阿片窟。美貌の青年モデル、ドリアンは快楽主義者ヘンリー卿の感化で背徳の生活を享楽するが、彼の重ねる罪悪はすべてその肖像画に現われ、いつしか絵の中の容貌は醜く変り果てていく。慚愧と焦燥に耐えかねた彼は、自分の肖像にナイフを突き刺した……。
 快楽主義を実践し、堕落と悪行の末に破滅する美青年とその画像との二重生活が奏でる、耽美と異端の一大交響楽。

裏表紙より

 刺激的な表現や逆説が多く、驚異的な作品でした。というのも、皮肉な表現、奇抜な考え、真理、戒めとなる言葉といった格言や箴言が多くこの小説の中には埋め込められていたからです。

 こういった警句が多くあったのは印象に残り、納得する部分が多々ありました。


 ドリアンの肖像画はドリアンのもう一つの自分。ジビルが自殺したことを契機として、ドリアンの外見は変わらない代わりに、ドリアンが悪行を繰り返すたびに肖像画の方が醜く歪んだ姿になっていきます。

 逆に善行を繰り返しても肖像画は何も変わっていません。最終的には肖像を突き刺します。
 つまり、もう一人の自分を突き刺して死に、醜かった肖像と若さを保ち美しかったドリアンが肖像画の方になり入れ替わる形になります。

 身体=外見と、魂=内面の関係、外見の美しさと内面の美しさが直結するのではないなと思いました。

 自分から目を逸らしても、結局は「自分からは逃れることはできない」のだと思いました。

印象に残った文章

 ものごとを外観によって判断できぬような人間こそ浅薄なのだ。この世の真の神秘は可視的なもののうちに存しているのだ、見えざるもののうちにあるのではない。

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 50頁

「青春をとり戻したいなら、過去の愚行を繰りかえすにかぎる」
「とりかえしがつかなくなった時はじめて、後悔の種にならないものはただひとつ、自分のあやまちだけであることに思い至るのです」

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 87頁

「だれでも他人のことをよく思いたがるのは、じつは、自分のことが心配だからだ。楽天主義の根底にあるものは単なる恐怖心だ。ひととは自己の利益となりそうな徳をもった隣人をつかまえて、その徳を讃め、自分は寛大なのだと考える。」

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 150頁

「愛も芸術もともに模倣の一つの型にすぎないさ」

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 168頁

「(省略)だいたい人間というものは、自分でなんとも思っていない相手には親切をつくすものだからね」

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 197頁

「(省略)ひとつの感情を振り払うのに何年もかかるのは、くだらぬ人間だけだ。」

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 214頁

 ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。

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