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あの時私は普通じゃなかった。

長い階段を一歩一歩登ってやっとたどり着いた居心地のいい部屋から、私はあっけなく放り出されて、ほとんど知らない世界で仕事をしなければならなくなりました

テレビと言うマスメディアの世界で何十年もアナウンサーとして仕事を懸命にこなしていた私が、似ているようでしかし違う制作のディレクターの仕事に転向するように命じられたのです
そのことを自分の中で納得させるために、きちんと心のけじめをつけなければいけませんでした。

その時の私は40代でしっかり大人のつもりでしたが、自分自身に言い聞かせなければ、全てを放り出したい気分になっていたのです

年齢を重ねた女性アナウンサーがローカル局で活躍する場所はなかなか見つけることができません。残念ながら仕事に寿命があるのです。

それは十分に分かります、局で仕事を続けるためには、私はディレクターとしてゼロからのスタートをしなければならなくなったのです。

アナウンサーの仕事ならば基礎からしっかりマスターしていて、自分の中で人には負けない経験と自信がありました

しかしディレクターとしては基本が出来ていません。何を伝えるべきかは分かっていても表現できるテクニックが備わっていなかったのです
私にとって難関だったのは、パソコンを使った映像編集をマスターしなければならない事でした。

メカ音痴でパソコン音痴の私は、自分に出来るかどうかの不安とともに、これまでアナウンサーとして第一線で仕事をしてきた人間としてのプライドがありました。

私は暫くの間やる気をなくしていました。
「どうして私が、この年齢でゼロからのスタートをしなければならないんだろう、分からないから後輩たちに教わらなくてはいけない、私にやさしく教えてくれるだろうか・・・」そんなことばかり考えて後ろ向きになっていました。

しかし、ある時私のやる気エンジンにスイッチが入ったのです。

私の中に眠っていた負けてたまるか魂に火がついたのです。ここで自分自身が放り出してしまったらこれまで局の中で懸命に築き上げたものが無駄になってしまうと思いました。

アナウンサーに成り立ての頃の真摯な自分が私を奮い立たせたような気がしました。
「あなたは全くの素人から、今まで頑張ってこられたんだから、絶対ゼロからのスタートでもきっと編集は覚えられるし、自分が思う形に編集出来るようになるはず、そしたらあなた怖いものは何もなくなるよ、自分が思うように編集できて、大切な情報を人に伝えられるんだから
私は自分の内からの言葉に励まされ、自分自身を信じてエンジンスイッチを入れ、フル回転させたのです。

それからは編集で分からないことがあれば、躊躇せず後輩たたちに聞いて編集技術を学んでいきました。
振り返らず、一生懸命前を向かって仕事をこなしていったのです。

私はいつの間にか苦手なパソコン編集も出来るようなり、意欲的に新しい事を覚えていきました。そうすると今まで以上に伝える事が楽しくなっていったのです。

挫折をした時に、自分をどう奮い立たせるは自分自身なのだと思います。エンジンをかけるのは自分自身の意識なのですから。

今から思えばあの時の経験がその後の私の仕事人生に大きな自信を残してくれました。今でも私はその時の自分に励まされ、常に勇気をもってエンジンスイッチを入れています


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《私は嫌な事があったらエンジンがかかるんよ》


「くじけん事よね、あんたあの時は大変そうじゃった、エンジンがONになってよかっわい、一時はどうなるかと思たけんね」

「お母さんがエンジンがかかる時はどんな時」

「私は昔から嫌な事があったら、それがパワースイッチになるんよ、ファイトが湧いてくるんよね、負けてたまるか言う気持ちになるんよね、性格じゃね」

「私と似とるよ」

くじけんのよ、そのためにエンジンスイッチを入れるんよ

辛い時にこそ、エンジンにスイッチが入って動き始める、本当にたくましい母だと思います。

冬の鳥飛び立つ時を待ちにけり


挫折をきっかけに心のエンジンのスイッチをONにした私の話を聞いて、母が詠んだ俳句です。鳥が寒さの中、飛び立とうとその時を待っています。周辺の状況を見極めながら自分でタイミングを計っているのです。

羽ばたくのは何時になるのか。心にスイッチが入ったらその時がやって来るのです。「自分を信じて飛び立ちなさい」母のそんな思いを感じました



最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。

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