![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/91330796/rectangle_large_type_2_98382f4764b5a8146cf190ad02756d03.jpeg?width=800)
おばあちゃんと夜空
◇◇ショートショート◇◇
輝美おばあちゃんは毎晩、星を眺めています。
「一つ、二つ、三つ・・・」そう声を出して数えながら40個数え終わると、星空に向かって手を合わせます。
僕はおばあちゃんに「いつものルーティンは終わった」と聞くと
輝美おばあちゃんは「うん、これでほっとするんだよ、おじいちゃんの年まで数えたからね」とにっこり笑います。
「おばあちゃん、もう何年もこうしてるねー」と言うとおばあちゃんは「昴、おじいちゃんがあの空の向こうから見てるからね」と微笑みます。
おじいちゃんはおばあちゃんが35歳の時に40歳で星になりました。それからおばあちゃんは小さかった僕のお母さんを抱えて、一人で子育てをしながら頑張りました。
輝美おばあちゃんが夜空の星を数えるようになったのは僕が生まれてからです。
僕はおばあちゃんに聞きました。
「おばあちゃん、何で毎日、夜空を見るん」
「昴、それはねー、亡くなったおじいちゃんが星空が好きじゃったけんよ、おじいちゃんと付き合い始めた頃に、近くの展望台でお互いの歳の数だけ星を数えてね、その後それぞれの幸せを祈ったんよ、ほじゃけんおばあちゃんは夜空を見るとおじいちゃんの事を思い出すんよ」
そして星を見ながら、二人は将来の話をしていたそうです。
おじいちゃんは、天体観測が好きだったお父さんがつけてくれた空と言う名前がとても気に入っていました。だから自分の子どもには空に繋がる名前をつけたいと思っていて、男の子が生まれたら昴って名前にしたいな―と話していたそうです。
小さい頃からそんな話をずっーと聞かされていた僕のお母さんは、僕が生まれた時におばあちゃんを喜ばせようと昴と名付けました。
僕のお母さんの名前は星が七つと書いて、「せいな」です。おじいちゃんがたくさんの候補の中から何日も考えて、幸運に恵まれる実り多い人生になって欲しいと思って星七とつけたそうです。
おばあちゃんに聞きました。
「おばあちゃん、星を数え終わった後に、何をお願いしているの」するとおばあちゃんは、「おじいちゃんとまたいつか出会って、星を数えたいってお願いしとるんよ、いつか会えたらええねー、空さん何をしよんじゃろうか」
僕はそんなおばあちゃんの話を聞いて、おばあちゃんを空さんに合わせてあげたいと思いましたが、それは叶わないと言う事も分かっていました。
❀❀❀
それから15年が経って、僕は結婚して男の子が生まれました。
輝美おばあちゃんは80歳になりましたが、とっても元気で、相変わらず、毎日夜空を眺めて星を数えてお祈りしているそうです。
僕は遠く離れた場所で、夜空を見ながらおばあちゃんのことを思って、決めたのです。
「輝美おばあちゃんをおじいちゃんに合わせてあげよう、僕は決めたよ、息子の名前はおじいちゃんからもらって空にする」
僕は、おばあちゃんに電話をしました。
「おばあちゃん、ひ孫の名前を決めたよ」
「昴、何にしたん」
「おばあちゃん、空にした」
「・・・・」
「おばあちゃん、ええ名前じゃろう」
「昴、ありがとう、嬉しいねー、ソラええ名前じゃねー、どんな字を書くんぞね」
「おじいちゃんと同じ、夜空の空だよ」
すると、おばあちゃんがこう言いました。
「昴、宇宙と書いて、そらにしたらええ」
僕はその言葉を聞いて、心がときめきました。
「おばあちゃんいいねー、それがいい、絶対にいい」本当にいい名前だと思いました。
それからです、おばあちゃんは星を40数えた後で「宇宙にええことがいっぱいありますように、空さんお願いするよ」とひ孫の幸せをおじいちゃんにお願いするようになりました。
ある日、おばちゃんから僕に電話がありました。おばあちゃんは興奮ぎみです。
「昴、昨日おばあちゃんの夢に空さんが出てきたんよー、おじいちゃんはひ孫の名前が気にいった言よったよ」
僕は、おばあちゃんに伝えました。
「おばあちゃんきっと、今夜もおじいちゃんに夢で会えるよ」
おばあちゃんはその日も夜空を眺めていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1668383627065-1f5Sx9AXD6.jpg?width=800)
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《おじいちゃんにありがとう》
※92歳のばあばと娘の会話です。
「名前を付ける時は考えるんよねー、時代によって人気の名前も違わいね、あんたの名前はおじいさんがつけてくれたんよ、ええ名前じゃろう」
「妹の名前はおばあさんから一字もらったんだよね、ところでお母さんの名前は誰がつけたん」
「お父さんがつけてくれたんよ、気に入っとるよ」
ショートショートから母と名前の話になりました。私は幸子という名前がとても好きです。おじいさんにありがとうと伝えなければと思います。星空を眺めながら。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。
![](https://assets.st-note.com/img/1668383696687-0m9kQh6FJU.jpg?width=800)
また明日お会いしましょう。💗
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?