母の背中にありがとう
「あんた背中にお薬を塗ってくれんかな、手が届かんのよ」と母に言われて、私は洋服を押し上げた母の背中を久し振りにまじまじと見ました。
そして、何故か悲しくなりました。
背中が細く小さくなっているのです。筋肉が無くなって、か細い上に、わずかに傾いているのです。
「昔はこんなじゃなかったのに・・・」私は言葉を失いました。
母の背中は、私が幼い頃におんぶしてもらっていた、ふっくらとした頼もしい背中とはずいぶん違っていました。
「私らが、山の学校の教員住宅におった時、あんたがひきつけを起こしてねー、あんたを背負って何キロもお父さんと交代で病院まで走ったんよ、一生懸命じゃった、あんたが背中で舌を噛んだら大ごとじゃと思てね・・・」ふと母から聞いたそんな話を思い出しました。
私は母の小さな背中を見ながら「お母さん、いつの間にこんなにか細くなったんだろう・・・」と、涙が出そうになりました。
洋服の下にこんなにも細い背中が隠されていたとは。
母は足腰が弱いので、家の中でも杖を頼りに歩るいています。そのせいで、体が少し傾いています。何でも自分が出来ることはやらなければと思っている母は、そんな体で一生懸命なのです。
私に何でも頼んで任せればいいものをやってもらう事に申し訳なさを感じているのです。ゴミ出しも、洗濯も掃除も、出来ることなら自分でしたいと思っているのです。
それは若い頃と比べるとかかる時間も完成度も随分違います。でもやり遂げたいと思って必死なのです。
私はずっと母の逞しい背中を見て育ってきました。
だからこそ、挫折をしそうになってもすぐに立ち上がる、ポジティブで強い女性になりました。
たくさんの事を私たち姉妹に教えてくれた母の背中。
私の知らないところで、むせび泣いていたこともきっとあったでしょう。母の背中で私たち姉妹は守られてきたように思います。
家族の様々な事を背負って生きてきて、母の今があるのです。
小さく細くなった母の背中を見ながら、私はこのか細い背中を守らなければと思いました。
健康作りのためにおぼつかない足で家の中をぐるぐると歩いている、母の背中を追いながら、私は「長生きしてね」と呟きました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《あんた助かって本当に良かったんよ》
「私の背中そんなにか細いんかね、自分ではそんなに思わんのじゃけどねー、あんたは強調しすぎじゃないん、私は足は弱いけど他は元気なんよ」
「お母さん、自分では分からんのよ、お母さんの背中を見て、昔の話も思い出したわい」
「ほうよ、田舎でねー、病院が遠いし、タクシーなんか走ってないしね、大変じゃったんよ、あんた助かって良かったんよ、それで今があるんじゃけん、生きた心地がせんかったわい」
母の背中には様々な思い出があります。本当にありがとうの言葉しかありません。
幼日の父の思い出春袷
母は私の今回の投稿から、自分自身の父の事を思い出したようです。幼くして母親を亡くした母は、優しいお父さんの愛情いっぱいに育てられたそうです。12歳年上のお姉さんはとても器用でよく洋服を手作りしてくれたそうです。「着物はお父さんが買うてくれよった」と嬉しそうに話していました。親の愛情は心に深く残るものです。
最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。
また明日お会いしましょう。💗
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