見出し画像

始めてお目にかかった新紙幣

私が住む街、愛媛県松山市の商店街の路地裏には観光客にも人気の「鍋焼うどん」の店がある。行列が出来るその店の名物が食べたくて私は時折足を運ぶ。メニューは鍋焼うどんといなりだけ。会計のシステムがとてもすっきりしていて、鍋焼うどんが運ばれてきたら、お店の人に料金を手渡すのだ。
店の人はエプロンの前ポケットにお札や小銭を入れていて、そこからおつりを出してくれる。明朗会計なのだ。

その日小銭が無かった私は、「申し訳ないんですけど、5000円でお願いします」と言った。お釣りを渡すために店の人はエプロンのポケットから様々なお札を出していた。見慣れた1000円札に5000円札、1万円札に交じって、新紙幣が何枚かあった。

ニュースでは見ていたが、間近に見るのは初めてだった。新紙幣はすぐに分かった。一部がキラキラ光っていたからだ。

私は「これが新しい紙幣か、見られてラッキー」なんて思っていた。店の人はお釣りのお札の一枚を新しい1,000円札にしてくれた。
思わず私が「わー、初めて見ました」と言うと、店の人は「新しいお札は少し厚めでキラキラしていますよね、まだ慣れませーん」と言っていた。
私は、大切なものをしまい込むように、新紙幣を丁寧に財布に入れた。

「1,000円札の顔の人は誰だっけ・・・」と思いながら、「そうだ、北里柴三郎だった、ところで何をした人だっけ」と気になって調べてみた。ヒゲが似合うメガネをかけた四角い顔のその人は細菌学の分野で功績を上げ、国の内外で伝染病予防と治療に貢献した細菌学者だった。

店を出る時にオーナーに聞いてみた。「新しい紙幣もう出回っていますか」すると「ええ、両替する時に新紙幣にするんですよ、インバウンドの方なども使っていますよ」私は、「そうなんですね、始めて見ました」と言って店を出た。

「鍋焼うどん」の美味しさはもちろん、新紙幣のフレッシュな顔が見られて得した気分になった。



最後までお読みいただきありがとうございました。
たくさんの記事の中から、この記事にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。記事がいいなと思ってスキを押していただけると励みになります♡

また明日お会いしましょう。💗

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?