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夢から覚めたら

◇◇ショートショート

慎二は高原を一時間程歩いて、大きな木にたどり着きました。その道中で少しずつ心が癒されていました。山の自然が彼を優しく包み込み、かわいい高山植物が励ましてくれました。「後少しだから頑張って」そんな声が聞こえたのです。

高原の頂についた頃に、慎二は慌ただしい日常から解放されて、肩の力が抜けていました。

やってきたのは村で「精樹せいじゅさん」と呼ばれている樹齢300年の大きな木です。
「その根元で夢を見ると、心が癒され、多くの人が幸せを手にすることが出来る」と言われている伝説の樹でした。

慎二は「我が町のパワースポット」と言うネットの記事からその存在を知りました。

彼には最近いいことがありませんでした。小さい頃から可愛がっていた愛犬が亡くなり、大学時代から付き合っていた彼女から別れを告げられ、その上職場の部署が変わって、落ち込むことばかりでした。

「この暗いトンネルから抜け出さないと僕は自分を失ってしまう」と思い、すがる気持ちでここにやって来たのです。

慎二は、近くの湧水を手に掬って、一気にゴクリと、飲みました。

すると急に眠くなって、精樹さんの根元で目を閉じたのです。

山肌を吹き抜けるやさしい風が慎二を包み込み、彼の体を空の彼方に運んでいきました。

慎二は心地いい眠りの中で、優しい声を聞きました。
「慎二さん、あなたは何を悩んでいるんですか、私に話してみてください」

「僕は今、自分が本当に惨めで寂しいんです、僕を癒してくれていたジョンが死んでしまって、好きだった彼女にも嫌われて、慣れない職場で失敗ばかり、僕の心はズタズタです」

「慎二さん、そんなに落胆しなくても、人生は良いこともあれば悪いこともあります、あなたがもっと自分を愛してあげれば、幸せを手にすることができますよ」

「僕は何をすればいいですか」

「あなたは眠りから覚めたら、最初に出逢った人に親切にしてあげて下さい、ただそれだけです、どんな人でもあなたに幸せを運んでくれるはずですよ」

そんな言葉を遠くで聞きながら、慎二は目覚めました。
「あれは夢か、幻か、分からないけれど、でも僕にはあの声が聞こえた、夢から覚めて初めて会った人に親切にすればいいのか・・・」

半信半疑で慎二はゆっくりと高原を降りていきます。

慎二はとても新鮮な気持ちで山を降りていきました。登る時にも同じ緑を見ていたはずなのに、何故だかいっそう森が美しく輝いて見えました。

登山道の入り口近くで慎二はおばあさんに出会いました。
「あんた、この辺の人じゃないねー、精樹さんに行ったかい、あの根元で夢みたかいなー、あれは正夢よ、あんた見た夢大事にせんといかんよ、あんたの幸せにつながるけんな」
そう言われて慎二はゆっくりうなずきました。
顔を上げると、おばあさんはもうどこかに消えていなくなっていました。

それ時からです。慎二が出会う人すべてにやさしく接するようになったのは。
もちろん彼はその日から毎日幸せに過ごしています。

ピピピーっと目覚ましの音が慎二の耳に響きます。

「あー、夢だったのか、何だか不思議な夢だったな―、でも今日から僕は変われそうだ、出会う人すべてに親切に生きよう・・・」
慎二はにこやかな顔で目覚めました。彼の人生はこれから変わりそうです。


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《あんた大きい木が目に浮かんだよ》


「人には親切にせんといかん、ええことがあるんよ落ち込んどる時こそ考え方を変えたらええ、そうすることで気分が変わるんよ

「ショートショーツストーリーは夢が大きなテーマじゃったけど」

夢から学ぶこともあらいね

「物語を聞いて何か浮かんだ」

大きな木が目に浮かんだよー、ほじゃけんヘッダー画面もそれにしたんよ」

母の描いたヘッダー画面の大きな木、何だかすべてを受け入れてくれそうな大木に愛を感じました。

初夢や文学賞の授賞式

母の初夢はどうやら私にラッキーな出来事が訪れる夢のようです。母は毎日仏壇で「応募している文学賞に私の作品が入選するように」とお願いをしているようです。正夢になったらそれはビギナーズラックで素晴らしいのですが。母の夢は正夢になるのでしょうか・・・。

最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。

私のアルバムの中の写真から

また明日お会いしましょう。💗


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