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【小説】星降る夜の、ののもん


星降る夜に佇めば、闇が明るく照らされて、心に燻る火が燃える。情熱を持て余している壇は、出口のないトンネルの中にいた。果てしなく続く、まっすぐな道。行く先は死。道を外れれば闇。人生は、そんなものではないはずだ。星を見つめ、大地を踏みしめ、指さした星が心を震わせる。星を掴みたい。いや、一歩踏み出せればいい。毎日積み重ねてきた単調な日々の軌跡が、世界を暗くしていた。ある日、夢の世界を漂う星に降り立った壇は、衝撃的な出逢いに心を奪われた。


 裏山の丘の上。
 海を見渡す高台に、檀 将だん まさしは今日も立っていた。
 拳を握りしめ、大地に足をめり込ませ、眼で星を射抜く。
 最近は、毎晩こうして夜空を見上げるのが習慣になっていた。
 目線が、いつも遥か彼方を見ている。
 そう、人生の終着点を。
 行く末は、死だろうか。
 だとすれば、自分はもう死んでいる。
 だれにも聞けない問いを、星に問う。
 星降る夜、とは良く言ったものである。
 空一杯に星屑ほしくずがちりばめられている。
 今夜はまるで光のシャワーを浴びているかのようだ。
 遠くの海原は、空との境界線をくっきりと描いていた。
 何も成さずには死ねない。
 だが星空に手を伸ばしても、決して届かない。
 近い星でも500光年。
 約5000兆キロメートル離れている。
 想像力の及ばない単位である。
 もちろん月なら現実的な距離だ。
 だからと言って自分が行けるとは思えない。
 夢とは、そういうものだ。
 どんな夢でも、信じれば叶うなんて、アイドルやアニメのキャラクターが言ってたっけ。
 本当に、叶ったらうれしいのかな。
 道端に座り込んだ。
 見れば見るほど、自分が小さく感じる。
 夜が更けてきて、眠気が差した。
 遠くで犬の鳴き声が聞こえた ───

 少し、うとうとしてしまったのか、壇は地面に手を突いて起き上がろうとした。
 手元が、ほのかに光を放っていた。
 足元にガラスのような輝石が転がっていて、星の光を透かしたり、反射したりしているのだ。
 立ち上がると、透明な地面を踏みしめて歩きだした。
「ここは ───」
 見たことのない風景が広がる。
 空には花束を解き放ったように、無数の星々がさんざめく。
 人気ひとけのない場所なので、ゆっくりと視線を巡らせることができた。
「綺麗だ ───」
 さらに歩いて行くと、ひらひらと地面から沸き立つように鳥が横切っていく。
 次から次へと白くて薄い物が空へと舞い上がるのだった。
 遠くて良く見えなかったが、大量の白い鳥が星屑に溶け込んでいった。
 平らな岩場が広がっていたはずが、いつの間にか右にも、左にも切り立った岩山がそそり立っていた。
 そこには、やはりガラスのように透き通った岩がキラキラと星の明かりを写していた。
 空の果てには、黄色い地平線が薄いグラデーションで空のキャンパスの境目を明るくしている。
 夕暮れと言うよりも、何かが登ってくる前触れのように感じられた。
 先ほどから空へと吸い込まれていく、白くて軽い物体が星の数を増やしていく。
 地面はますます明るくなり、薄ぼんやりと空を青くした。
 壇は少し休もうと、傍らの岩を見回した。
 膝丈ひざたけほどの岩に腰かけると手足を伸ばしてから、もう一度空を見上げる。
 ふう、と息を吐き出すと手の平を返してじっと見つめた。
 何も持っていないから、そろそろ腹が空くのではないだろうか。
 だが、不思議と満たされた気持ちだった。
 次第に足に力がみなぎってくると、頭から地面を覗き込むように身をかがめ、足先に力を込めて立ち上がる。
 眩しいほどの空は、優しく壇の身体を包んでいた。

 オーダースーツを着てデスクに向かう壇は、机に重ねた本を読みあさっていた。
 まだ駆け出しの司法書士として、先輩の事務仕事を手伝う以外はほとんど勉強に時間を割いている。
 企業法務の業界は、高度な法律の知識と財務や不動産の実務的な能力が求められる。
 だから、ずっと本を読むだけで一日が終わる日もあるくらいである。
 面談に訪れたクライアントには、ベテラン弁護士がまず対応する。
 そして壇のところには形式が決まった書類作成の仕事が回ってくるのである。
 一言一句、間違いがないように何度も確認する。
 法律上の判断など、ほとんど必要ない。
 ドラマのような、白熱した議論など実際にはほとんどないのである。
 貸しビルの一角にある法律事務所は、手狭で静かである。
 外にはオフィス街の乾いた風景が広がる。
 通りを行き交う車は、どれも同じような形をしている。
 歩道を歩く人たちは、せかせかと先を急ぐ。
 街に潤いを与えるはずの街路樹も、見事に刈られ、まっすぐに立っている。
 街灯と樹のフォルムが、等間隔のリズムを刻み、遠くへ消えていく。
 外を眺めていると、息が詰まりそうだった。
 デスクにまた書類が運ばれてきた。
 すぐにチームチャットでデータを確認する。
 ひな形を元に、慎重に入力作業を進めていった。
 でき上った書類を上司に送ると、すぐに修正指示がくる。
 修正して再送信しても、またたくさんの修正があった。
 こんなやり取りを続けながら、勉強して、レポートや論文執筆のための情報集めをする。
 リモートの社員が増えている中、入社間もない壇は事務所に詰めて電話番をしながら仕事をこなしている。
 毎朝の通勤ラッシュには、何か月たっても慣れていかない。
 足を踏まれたり、肩でぶつかられたり。
 通勤電車は人間を苛々いらいらさせる。
 それでも毎日同じルーティンを繰り返さなくてはならない。
 良くないのは分かっているが、ついため息がでてしまうのだった。

4

 星へと続くかのように、空へと繋がる道を進んでいく。
 ぼんやりと地平線に目をやっていると、吸い込まれそうな曙に心が澄んで心地いい。
 壇は呼吸を深くして、夢見心地を楽しんだ。
 少しずつ、周囲の岩がせり出してきていつの間にか森のようにガラス質の木が立ち並ぶようになってきた。
 幹が太い木が、うねる様に身を捩るよじらせて天を指す。
 光を透かしてキラキラと輝き、弦を弾くような乾いた高い音を出していた。
 まるでオルゴールか何かみたいに、ノスタルジックな気分になる音楽だった。
 心に染み入る情景と、耳に心地よい音が、壇をさらに夢見心地にした。
 ふと、透明で不思議な木々に触れてみたくなった。
 足を止めると、じんわりと太ももの辺りに血が巡るのを感じる。
 かなりの距離を歩いたはずだが、気分が良いせいか疲れなかった。
 右手の中指で、幹を触ってみると温かみがある。
 黄色みがかった光をたたえ、中を何かの液体が流れているようだった。
 見上げてみると、幹から太い枝が幾重にも広がっている。
 枝がさらに分かれ、徐々に細くなって葉をつける。
 透き通った葉が、重なるほどに明るくなっていく。
 そう、光を透過しているのだ。
 この透き通った植物は、長い年月をかけて枝を産み出しながら身を捩ってきた。
 まっすぐ伸びるベクトルに、枝葉ができるとき別の力が加わる。
 人生が枝分かれするとき、その地点に広場ができるのだろう。
 もしかすると、自分は枝分かれした道を見ているのかもしれない。
 そして、同じような木が無数に生えている。
 たくさんの木を眺めていると、人混みも悪くないような気がするのだった。
 先ほどから歩いてきた道だけは、ひときわ輝いて森の中に横たわっていた。
 この先に、何が待っているのか、壇はどうしても知りたくなった。
 道自体も生き物のような、深い謎を感じさせる。
 壇は再び道を辿たどって歩き始める。
 行く先に、どんな驚きが待っているのだろうか。
 また地平線に視線を投げてぼんやりとした。

 通勤電車の中で、吊革つりかわを持つ手に力をこめる。
 電車が前後左右に揺れ、そして上下に跳ね足元が一瞬床を離れる。
 隣りの人がどんな態勢なのか分からないが、さっきから背中に硬い物体を押し付けてくる。
 少しでも重心を安定させるため、足を捻じりスタンスを確保しに行くがはばまれた。
 つかまっていられるだけマシだと思うしかない。
 毎日通勤電車に揺られていると、他人への憤懣ふんまんと不条理極まりない車内が心を削っていく。
 会社の最寄り駅に着くと、暑苦しい車内から解放された。
 階段を登ろうとすると「のぼり」と書いてあるほうから降りてくるやからがいた。
 割り込みなどは日常茶飯事で、譲り合いなど誰もしない。
 身体を張って自己主張をしながら、無言で歩く。
 これが人生だろうか。
 一生懸命勉強したし、スポーツにも打ち込んだ。
 お陰で不況にも負けない、安定した仕事にありついた。
 サッカーで足腰を鍛えたお陰で、人にぶつかられても当たり負けしない。
 振り返ってみると、スポーツは通勤ラッシュに耐える身体を手に入れるためだった。
 デスクワークが多いし、いつも同じような書類を書いている。
 論文を頼まれたからと言って、好き勝手は書けない。
 始めから正解がある問いに答えているだけである。
 歩道を歩くと、いつもすれ違う人の雰囲気は記憶に残っている。
 天然パーマの大柄な男や、やけにスラリとした女。
 犬を散歩させている老人。
 うるさい小学生の集団。
 電車の中で虐められた自分には、ネガティブな面ばかりが目についてしまうのだ。
 透き通ったガラス窓が、自分の姿をくっきりと映し出した。
 いつも疲れた顔をして、ため息をつく。
 上等なスーツを着ていても、貧相に見えてしまうのだ。
 とにかく、職場へ行こう。
 重い身体をコンクリートの上に引きずって、ビルの中へと入っていった。

 透き通った森を抜けると、急に冷え込んできた。
 空は相変わらず星屑に覆われている。
 遥か向こうの光は、いくら歩いても変わらない。
 足元をでる冷気が、少しずつ身体を硬くしていく。
 思わず肩をすくめて身体を震わせた。
「暖かさをイメージしてください ───」
 どこからか声がした。
 ギョッと目を見開いて、後ろを振り返る。
 さらに身体を硬くして、左右を何度も見渡した。
 穏やかに包み込むような声だった。
 少しかすれて、ちょうどこの風景のような清潔感があった。
 イメージする、と言っていた。
 足を止めて瞑目し、試しに太陽の光をイメージしてみた。
 暖かい陽の光が、ポカポカと背中を温める。
 日向にいるだけで、身体が熱を帯び、活力がみなぎるようだった。
 そして、うとうとと気持ちよく眠気をもよおす。
 すると、どういうわけか本当に暖かくなってきた。
 振り向くと大きな太陽が燦々さんさんと輝いている。
 壇は目を丸くした。
「思った通りになった ───」
 光が心を弛緩しかんさせ、笑みをもらした。
 気分が上がってくると、景色にも注文をつけたくなった。
 きれいな花にちょうが舞い、はちの羽音が聞こえる。
 生命の営みを感じる。
 小川が流れ、透き通った水の中には小魚が泳ぐ。
 さらさらとした水の音と臭い。
 菜の花が咲き、芳醇ほうじゅんな香りが広がる。
 一面に目の覚めるような黄色い絨毯じゅうたんが現れた。
 木々がりんごやみかんなどの果実をつけ始める。
 陽光をたっぷりと浴びた、甘酸っぱくて赤みが濃いりんごを見るだけで口の中に味が広がる。
 一ついでかじると、この世のものとは思えないほどの大地の恵みを感じたのだった。

 休みを利用して、大きな書店で買い物をすることにした。
 駅の近くにあるため、開店時間を狙って混まないうちに出かけた。
 薄い水色のシャツにベージュのパンツと、カジュアルな恰好でデパートの裏手を抜け、2階のペデストリアンデッキに出る。
 平日とは違い、人はまばらだが目的地まで一直線の機能的な道である。
 晴れた陽射しが首筋を焦がす。
 照り返しが目を強く刺激するので、思わず顔をしかめた。
 フォークギターのまろやかな音を耳に捉え、道端に目をやる。
 同い年くらいの若い青年が、弾き語りをやっていた。
 楽器ケースをタイル張りの地面に開け、後ろに立ってかき鳴らし自作のフォークソングを歌う。
 都会の憂鬱ゆううつ、何かを作りだしたい、人生の悲哀、など次々に心の奥底にある憂いを紡ぎだしていた。
 曲が終わり、1000円札を投げ入れると男が近づいてきた。
「ありがとうございます。
 気に入っていただけましたか」
 暖かい光を放つような男のムードに、少々気圧された。
 自分はこんな風に笑えない。
 いつも地面を見て歩いているような気がする。
 さらに男が言葉を継いだ。
「この手に触れてみてください」
 何を思ったか、右手を差し出してきた。
「硬い ───」
 一回り大きくなっている手は、グローブのようだった。
 特に指先が硬い。
「この手が、私の財産です。
 人生を賭けて、歌を作った証なのです」
 どれほど練習すれば、こんな手になるのだろう。
 楽器を演奏するには、毎日の地道な努力が不可欠である。
 何かを作りだす人生は、眩しく輝いている。
 毎日単調な仕事をしていると、損をしている気分になる。
「まあ、あまり偉そうなことを言うものではありませんね。
 こうやって日銭を稼ぎ、アルバイトで食いつないでいる身ですから」
 ふっと自嘲に口元を緩めたが、笑顔が輝きを増したように感じた。

 ガラスの石でできた世界が、星屑の下で輝く。
 いかにもロマンチックなイメージを新又 彩葉あらまた あやはは思い描いた。
 脳に描いた幻想を体感できる空間に、自由に出入りできるようになってからどれ程経っただろうか。
 金銀財宝に囲まれて夢のような暮らしをしたこともあるし、お腹いっぱい好きなものを食べたこともある。
 ひとしきり欲望を満たすと、人恋しくなるものらしい。
 だが、人間をイメージしても人型の物体が産まれるだけだった。
 イケメンでも、かっこいいヒーローでも、動かないし喋らない。
 人間とは、物体ではない。
 人生の営みを感じさせるから、興味深いのである。
 簡単に言えば、むなしくて、寂しくなった。
 そこへ、若い壇がやってきたのである。
 新又は心躍らせた。
 まずはじっくり観察してみることにした。
 彼はかなり生真面目らしい。
 まっすぐに地平線に視線を合わせたきり、一心不乱に一定のペースで歩いていた。
 何かを目指しているのだろうか。
 あまりに根気強いので、イメージが破綻はたんし始める。
 寒さに凍えていたので、少々助言をした。
 頭の回転も良いらしく、すぐにこの世界を理解した。
 2人でイメージを共有できるなら、どこかに接点があるのだろう。
 何でも自由になるならば、他人の予想外な振る舞いに対して何が起きるのだろうか。
「綺麗なイメージだね。
 私より早くここへ来ていたみたいね」
 背後に姿を現した新又の方を振り向いた。
 目が大きく見開かれ、後ろへ大きく飛び退き地面に尻もちをついてしまった。
 彼女は構わず近づいて行った。
「おもしろいね。
 人間が、そんなに珍しいかな」
 微笑を浮かべながら、手を差し伸べた。
 久しぶりに感じる、あたたかい温もり。
 心の中に、ふんわりと柔らかい感情が流れ込んできた。
 照れたように目を伏せて、壇は肩を震わせて笑い始めた。
「人間が、珍しいかって。
 僕は、人間しかいないような世界で、ギリギリ生きてきたんだ。
 人間の群れに、いつもおびやかされながらね」
 今度は夜空を仰いで、肩をすくめた。
「変だよね。
 私もそうだった気がするよ。
 現実から逃げたい気持ちが、この世界を支えているのかも知れないね」
 遠くの地平線は、黄色い閃光を放っていた。
 太陽のまばゆい光が、2人の横顔を照らし、長い影を描き出した。

 ガランとした、家具の少ない部屋の隅にベッドが一つ。
 白いシーツの上に布団をかぶって、壇はすやすやと寝息を立てていた。
 近頃は、眠りが浅い。
 だが疲れはなかった。
 アラームを止め、右手を突き上げて伸びをする。
 すぐにストレッチをして、本を読み始めた。
 1人で暮らすには広いリビングに、小さな白いテーブルにパソコンが置かれている。
 朝の空気は少し肌寒い。
 眠気を吹き飛ばすにはちょうどよかった。
 外をバイクが通る音がする。
 今どき新聞を取っている家が、近所にあるのだろう。
 目を閉じると、虫の声が聞こえる。
 最近、少しずつ小説を書き始めた。
 ガラスの石や木が生えた不思議な世界を歩いて行く、というストーリーだった。
 毎日法律に縛られて生きていると、意識を思い切り解放してみたくなる。
 人間が奔放に振舞うと、イメージが現実になっていく。
 社会の一員ではなくなったとき、人間らしい生き方ができるはずだ。
 その答えを、執筆活動に求めてみたい。
 思うがままに書いて、心に抱いたイメージを文字として定着していく。
 集中し始めると、すぐに小一時間が過ぎた。

 いつものホームに並んで電車を待つ。
 大抵1分ほどで来るのだが、今日は少し早く着いたようだ。
 スーツ姿のビジネスマンが多い中で、白いワンピースが強烈に目に飛び込んできた。
 どこかで見た気がするが、一度そう思い込むと確信が持てなくなってきた。
 電車が入ってくる。
 凄まじい轟音が、心を波立たせる。
 誰もがドアに視線を集め、ポジション取りをイメージしているだろう。
 満員電車では、遠慮は美徳ではない。
 美徳とは、自分がそれを認めて初めて成立する。
 譲ろうが譲るまいが、次々に人はやって来るのだ。
 駅のアナウンスがうるさい。
 降りてくる人は、必要以上に急いでいる。
 みな、ポジションという既得権益を守ろうと、必死で走る。
 電車のポジションなど、つまらないことのはずなのに。
 会社の最寄り駅で降りると、白ワンピの若い女が立っていた。
「壇、私のこと、わかるかな」
 彼女の周りだけ、空間が空いていた。
 猛然と通り過ぎる人波が、なぜか避けて通るのだ。
「どこかで会ったような気がするけど ───」
 足を止めて、腕組みをした。
 顔をしかめてうなったが、思い出せなかった。
 視線を上げると、彼女は忽然と消えていた。
 そして革靴の無機質な音が、現実に引き戻した。
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「きっと、どこかで会ったことがあるのだろう」
 考え込んでから、ポツリと言った。
「壇の性格が、この世界にはっきり現れてるよ」
 新又は、口角を上げて景色に目をやった。
「何でも思い通りになる世界か ───」
「私、1年くらい前からいるのだけど、イメージをここまではっきりと共有したのは初めてだよ」
「へえ」
 壇の関心事は、彼方に見える光だった。
 あの先に何があるのか知りたい。
 自分の足で超えていきたい。
 また、大地を踏みしめて歩き始めた。
 少し離れて新又がついてくる。
「私、邪魔しないから、ついて行ってもいいかな」
 答える代わりに壇は、遥か彼方を指さした。
「あの光を、追っていくんだ。
 どこまでも、どこまでも」
 歩いている限り、人生は開けていくのだからね。
 新又は、小さくうなづくと、黙ってついて行った。
 星降る夜には、人生が輝きを増す。
 どこまでも、希望を持って歩く旅人は、命を燃やして歩くのだ。

この物語はフィクションです


「利益」をもたらすコンテンツは、すぐに廃れます。 不況、インフレ、円安などの経済不安から、短期的な利益を求める風潮があっても、真実は変わりません。 人の心を動かすのは「物語」以外にありません。 心を打つ物語を発信する。 時代が求めるのは、イノベーティブなブレークスルーです。