名著『冒険の書〜AI時代のアンラーニング』を、強く推奨します!そして僕は決意しました。
本当に素晴らしい本です。日本の、そして人類の未来について真摯に考え、「教育」が最重要と捉えて、「学ぶ」事の本質、「教える」方法の選択肢について、過去の叡智をたどりながら、考え抜いて、それをわかえりやすく、いわばエデュテインメント的にまとめた書籍です。名著です。
人類の歴史は、技術の進化とともにありました。火を操ること、農耕による定住、青銅器、鉄器など、歴史を紐解けば千年単位で、技術の進化が、経済や社会を変えていることは明らかです。
最近の数十年は、インターネットの発展と半導体の進化によるデジタル革命は、人間の社会と生活を大きく変え続けています。そして人工知能(AI)の学習手法のブレイクスルーとブロックチェーン技術が社会基盤になることで、これからもっと変わろうとしています。
人が学ぶ理由、意味、そして方法が全く変わるのは、技術の進化によってです。ところが、教育の「仕組み」の変化は遅れています。特に日本は、明治時代に西洋諸国に上手にキャッチアップした教育制度をマイナーチェンジすることで対応しようとして制度疲労が限界値を超えてきています。
僕自身、スタートアップによる新規事業創出でエンタメの生態系を変えることに取り組むようになって、既存の日本の教育の悲惨さを痛感するようになりました。大阪音大のトラブルは、まさに象徴的な出来事でした。貧して鈍している経営方針、自らの立場を守るために20年前の音楽ビジネスを教えようとする教育主任という悲惨な状況で、年寄りの保身的行動が若者たちの可能性を狭めるというまさに、「日本の病」に直面しました。
そんな時に、シンガポール在住の大羅さん(元MySpaceJapan代表)から、献本いただき、この本を読んだことで、いろんなことを考えさせられました。
孫泰蔵さんの思索のプロセスが古今東西の名著、名言の引用も交えて紹介されていきます。深い考察が求められ、ボリュームもありますから読み応えはありますが、平易な文章と説明は、わかりやすく頭にすっーと入ってきます。全編を通したメッセージは一貫していますので、目次を見て気になるところから読み始めても良いと思います。
僕の読書メモを共有します。
「能力」や「才能」というのは迷信だ
本書では、人間を「能力」で捉えて、「能力向上」という考え方を否定しています。能力の有無は結果論でしかないということです。
「才能」も同様で、「後知恵バイパス」と言う心理学の言葉あるそうです。
音楽プロデューサー、アーティストマネージメントという仕事を長年してきた身としては、「才能」という言葉は頻繁に使ってしまう言葉です。アスリートや音楽家には、素質というような意味で、「才能」としか言いようがない部分があるのは事実です。長年、音楽の仕事をしていると、その素質を見抜けるようになるのも事実です。
ただ、「山口ゼミ」というプライベートスクールを10年主宰して、数多くのプロ作曲家を育成、ヒット曲を生み出す(レコード大賞2021受賞などの)成果をだした経験から、最近よく口にする言葉が2つあります。
・プロ作曲家になるのに必要なのは、才能やセンスではなく「やる気」。大まかに言うと、やる気しか要らないし、意欲があればなれる。
・作曲家にかぎらず、音楽家に才能というものがあるとしたら、「音楽を諦められないこと」だと思う。
これが真理だということを僕は体験しています。才能というのは、得体のしれないもので、「いつ、どこで花開くのか、誰にもわからない」のです。
僕はアーティストマネージメントや音楽家に対するメンターとしてエキスパートを自負しているので、花開く確率を高める方法、開いたタイミングを逃さず伸ばす、みたいなことはできます。音楽家が確変的に開花する瞬間に立ち会うことにカタルシスを覚えるタイプなのですが、何度それを体験しても、「やる気がある」「好きでやめられない」以外の法則を見出すことはできません。
本書に通底している「人間は好きなことだけやるのが一番」というテーマに通じる話だなと思い、深く合点がいきました。
答えようとするな、むしろ問え
これも至言です。経済至上主義は、ソリューション(解決策)を求めます。クライアントに対して、適切な解決策を提供するのが、わかりやすいtoBビジネスですね。
そこからは、社会の課題は解決できないと、泰蔵さんは述べています。社会の人類の構造的な問題は、問いかけと行動を繰り返すことで生まれるイノベーションでしか克服できないということですね。
まったくもってその通りだと思います。
本書はこのような本質的な至言に溢れています。偉人の言葉や古典の一節も適切に引用されていて、高い教養のある人から見ても、完璧なのではないでしょうか?教育や人材育成に携わる人は、読むべき本です。
そして、能力開発という考え方の限界を知りましょう。
この言葉を実感として捉えることができると大げさではなく、日々の生活が変わるはずです。 個性が大事とか、自主性を尊重してといか言うレベルの話ではありません。そもそもの前提が崩れていることを謙虚に認めなければ行けないのです。製造業中心の産業界が終わり、社会構造も変わっているわけですから、教育界の前提も変えるのはアタリマエのことですね。
エンターテック×起業は時代の要請、必然だ
僕はこの本を読んで、一番勇気をもらったのは、「世の中が、エンタメに寄ってきている」という実感でした。
実は、僕の周りは、大人も若者も「自分がやりたいことが決まっている」人の確率が、普通の日本人よりは何倍も高いです。理由は2つあります。音楽や映像やアニメや出版やメディアやエンターテインメントにまつわる仕事をしている人が多いこと。そして起業家や社長が多いことです。
自己責任でリスクを取って、自己実現に向かっている人は、この本の課題の半分はクリアーしています。
テクノロジーとAIの発展で、人間にしかできないことが減ってきているのですが、「人生を楽しむ」ということは今のところ、紛れもなく人間にしかできないことです。楽しむことの周辺にいると、「好きなことだけやっている」時間が長いし、そこに重点をおいている人が多くなります。
Web3について考えても、例えばメタバースとか、デジタルツイン(バーチャルにもうひとりの自分がいる)って、僕から見ると生活時間における「エンタメ比率」が著しく上がる時代が来ることに思えます。
僕の世代は、終身雇用を前提に、大企業に入れば安全だと誰もが信じている時代でした。僕は「安全かもしれないけれど、つまんねー」と思って、20歳頃から、はみ出した人生を選びましたが、いつの間にか、僕が選んだ「エンターテインメント×テクノロジー」というコンセプトは、日本の未来を担う領域になっていました。そこに起業を掛け合わせる僕は「国策」を推進しいるようなポジションになっていて、びっくりします。
そんな2023年、一番大切なのは若い世代の人材育成で、明治時代からの制度疲労を解消しなければいけないのが教育分野です。
そう思っている僕に、この言葉は刺さりました。
僕が担う「クサビ」は何か?決意の時が来た
僕はどこに「クサビ」を打てばよいのでしょうか?エンターテックにフォーカスしたスタートアップスタジオ(StudioENTRE)を設立しての起業家育成と新規事業創出は僕のキャリアの集大成であり柱です。同時に、「教育のアップデート」に本気で取り組む時が来たなと、この本を読んで決意しました。特にエンタメ領域は、日本にまともな教育機関がありません。シーンの第一線にいる人しか真の育成はできない分野です。校舎という不動産に縛られ、文科省の制約だらけの既存の学校法人の仕組みの中では、一流のビジネスパーソンが教育に携わるのは困難ですが、オンラインベースに、デジタルの仕組みを活用して、そこに特別なリアルの時間(スクーリング)を組み合わせれば一流の業界人が直接、次世代と接することが可能になっています。
そんなエンターテック・ユニバーシティを作るのが、僕が挑戦できる「社会を良い方向に向かわせる『クサビ』になる」と、1ヶ月かけてこの本を読んだことで確信することができました。
具体化していきますので、ご期待ください。そして、力を貸してください。
そして、まずは、孫泰蔵さんの力作『冒険の書』を読んでみてください。
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