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猫になった宇宙人(12)


猫になった宇宙人(12)

今日の夜の事、父親孝太郎が久々に帰宅した。
 
「オーイ、誰か居ないのか?雅子は居るのか?」と
玄関先で叫んでいる。
少女は怯えている。余程父親が怖いのだろう。それとも、本当の父親では無いと感じているのかも知れないが、まだその事を少女の心の声で聞いた事は無い。

孝太郎が二階の少女の部屋に来た。
私は、孝太郎とは初めての出会いだ。

「雅子、いるのなら、返事ぐらいしろ。達也は帰ってないか?」

「お兄ちゃんもお姉ちゃんも居ない。」
その声は弱く、かなり動揺している。

「達也、まだ帰ってないのか?
 なんだその猫!捨ててこい。汚いだろう。」

孝太郎は横柄な人間だと瞬時に分かった。
少女が私を抱きしめているのを見ているのに、少女の気持ちも
考える事も出来ない人間。

「達也が帰ってきたら、私に連絡しろと言え。
明日その猫、捨て来るんだぞ。」

少女は何も言わなかったが、
(あんたの言葉は聞く事はできない。たまに帰ってきて、偉そうに言うのはおかしい、あんたが、捨てられたらいいのに、そして死んだらいいのに)
と辛辣な言葉を発していた。

孝太郎という男、初めて会ったが、非常に傲慢で自分勝手で
横柄で、暴力さえふるいそうな男と感じた。そして臭い。
雅子の事を、嫌っている。自分の子供でないと確信している。
何故あの様な男と律子は結婚したのか?
夫婦とは何か?
私の星には無い制度なので、本当に調べてみたい。

孝太郎はその言葉を残したまま、帰って行った。

達也が帰宅したのは、孝太郎が帰って間もなくであった。

この家の夕食は、母親が雅子の分と達也の分を作っていくが
朋美の分は無い。
朋美がどこかで泊まっているから、作らないのだ。
達也は、夕食を摂った後、何処かに行き、夜遅く寝に帰ってくるのが、日常だ。
私は達也と顔を会わす事は今まで無かった。

少女が私を抱いたまま下に連れて行ったので初対面である。
「お兄ちゃん、お父さんが連絡してと言っていたよ。」

「うん、そうなの。雅子はご飯食べた?
何、その猫?
飼っているの?可愛いね。
雅子、小さい頃から、猫好きだったよね。」

この達也は、心の綺麗な優しい人だ と一瞬で分かった。
嫌な匂いを感じない。

心根の悪い人は嫌な匂いを感じる。
これも、地球に来て初めて分かった事だ。私の星では心根の悪い人はいない為、臭いとは感じる事は無かったが、地球人は大勢いる。
その匂いは、独特で、悪い人ほど強い匂いを発している。
だが、地球人には心根の匂いを嗅ぐ事は出来ないであろう。

どんなに、綺麗な言葉や、優しい事を言っていても、
心根が悪いと一瞬して分かる。
孝太郎は直ぐに分かった。臭いと。

少女は夕食を摂ってはいなかった。
食欲が無いのだ。
でも、今日は達也と久しぶりに夕食を摂りたいと思っている。

少女は家族の中で一番達也を好きであった。
達也も少女を可愛く思っているが、孝太郎が少女を憎んでいると
感じた時から、孝太郎の前で少女を可愛いがるの控えた。

何故なら、達也が可愛いがった分だけ、孝太郎が少女に辛く当たるのが、分かったからだ。
孝太郎とは、その様な人物である。

久しぶりに夕食を達也と摂る少女は嬉しいそうであった。
心の声はいつもと無く、はしゃいでいる。

達也の声も聞こえくる。
少女と毎日でも夕食を摂ろうかと思っている。
でも出来無い時があると、少女を傷つけるかも知れない。

食事を済ませた後、思い出したかの様に、孝太郎に電話した。

電話口で達也は孝太郎に謝っている。
何を謝っているのか分からないが、心では何も謝ってはいない。
むしろ、孝太郎に反論し、馬鹿にしている。

きっと、孝太郎には本心が言えないのであろう。
親子でありながら、本心も言えない。
何故この様な関係に、この家族は成ったのか?
原因を探りたいと本気で私は思った。
地球人の一つの家族であるが、この様な家族は地球上に多く存在するのでは無いかと思った。

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