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ショートシュート

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短編集を集めてみました
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#シロクマ文芸部

白い靴を履いていた人(一分で読める小説)

白い靴を履いていた人(一分で読める小説)

白い靴が目立つ、あのお爺ちゃん
毎日この道を散歩している、あのお爺ちゃん。
私の家の前で、腰を下ろし休んでいた、あのお爺ちゃん。
「今日も姿が見えないな〜。
どうしたのだろう?
名前も知らないお爺ちゃんだけど、
会えないと、何だか寂しいなぁ。」

今日、何故かゆっくり走って行く
白い色の霊柩車
私の家の前を名残り惜しそうに通って行く。

霊柩車の中に目を向けると、
抱かているあのお爺ちゃんの遺影。

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春の夢(420字の小説)

春の夢(420字の小説)

「春の夢?
別に夢は春だけでは無いでしょ。
夏だって、秋だって、冬だって、夢はあるでしょう。」
と、冬が冷たく言った。
「そうだよ、春だけなんて可笑しいぞ!」
と、夏が熱く語る。
「まあまあ、皆さん冷静になって」
と、涼しげに秋が言う。
「でも、春と私は姉妹なのに春だけなんて、ズルい」
秋は拗ねている。
「みなさん、ごめんなさい。私、国民の多くの人達に
一番好かれているので、『春の夢』として選ばれ

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ハルの夢を(410字の小説)

ハルの夢を(410字の小説)

「貼るの!夢を。神社の壁にお札を貼るとね、
願いが叶うのよ」
と、見知らぬ人の声が聞こえる。
ここは「壁貼り神社」
…壁に貼ったぐらいで、夢が叶うなら苦労はしないよ。…
と、想っていたのに、この神社に来てしまう
「溺れる者は藁をも掴む」と言うけれど
今の僕の心境だ

壁に貼ってあるお札を見ると、
夢の貼り紙に、❤️のマークが付いている。

神主に聞いてみた。
「他人の夢が良い夢だと感じたら
❤️を

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始まりはいつも・・・(300字の小説)

始まりはいつも・・・(300字の小説)

始まりは、何故かビール。

居酒屋に行くたびに、
「取り敢えずビール」を無意識で注文してしまう。
お酒の種類はいっぱいあるのに何故?

1番バッターはビール。
先ずは軽く塁に出る事🟰軽く酔うのはビールに限る

2番バッターはチュウハイだ
どんな物にも対応できる柔軟さ
水で割ったり、炭酸で割ったり
何でもありのお酒だ

3番バッターは日本酒だ。
一つ一つに個性がある。
水で割ることもない純粋さが魅

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チョコレートの想い出(300字の小説)

チョコレートの想い出(300字の小説)

チョコレートで思い出すのは、私が小学二年の時、父が東京からのお土産に
買ってきたチョコレートを思い出す。
その頃のチョコレートは、子供にとっては、ご馳走であり贅沢な品物だった。

一粒口に含んだ時の甘い感覚は、僕の今まで感じた事もない喜びであった
僕は、全部食べてしまうのがもったい無くて、
後のチョコレートを残しておいた。
妹も同じチョコレートを父から貰ったが、一度に全てを平らげていた。

次の日

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