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ショートシュート

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2024年3月の記事一覧

始まりは、あの雨の日(450字の小説)

始まりは、あの雨の日(450字の小説)

始まりは雨だった。
傘も持たずに、濡れてる君の後姿に僕は惹かれた。

…あの時の僕と同じだ…
僕は遠い昔の事を思い出す。
あの日僕は、雨に濡れながら歩いていた。
荒む心を雨が洗い流すのか、僕の体に降り掛かる。

…君に何があったの?…
と、問いかけるすべは何も無く見つめているだけ。

あの日の僕も、雨のことなど気にもならなかった。
…この雨に打たれながら死んでしまいたい…
と、心の片隅に残して歩い

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始まりはいつも・・・(300字の小説)

始まりはいつも・・・(300字の小説)

始まりは、何故かビール。

居酒屋に行くたびに、
「取り敢えずビール」を無意識で注文してしまう。
お酒の種類はいっぱいあるのに何故?

1番バッターはビール。
先ずは軽く塁に出る事🟰軽く酔うのはビールに限る

2番バッターはチュウハイだ
どんな物にも対応できる柔軟さ
水で割ったり、炭酸で割ったり
何でもありのお酒だ

3番バッターは日本酒だ。
一つ一つに個性がある。
水で割ることもない純粋さが魅

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階段を登る君を見つめて➕追伸

階段を登る君を見つめて➕追伸

「初恋!?。いつの事か思い出すのも困難だ。
この歳になると。最初誰に恋したっけ?」
初老の男は、5歳の孫の質問に真剣に悩んでいる。
「そう、あれは・・・」

男は頭の中で時を戻し始めた。
目に浮かび見えてきたのは、五月雨の季節。
中学二年生だったあの時の体育館。

私が淡い感情を抱いている娘が僕の側にいた。

時々、彼女と目線が重なり合う。
トキメキを隠しながら、素知らぬ顔の僕。
その娘も恥ずかし

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手のひらの・・・。(550字の小説)

手のひらの・・・。(550字の小説)

それは私が神様を信じていなかった頃のお話。

うらびれたアパートに、僕は一人住んでいた。
生きる希望も無く、金も無く、友達も恋人も居ない。
まだ25歳なのに、これから何をして生きていこう?

バイトの仕事も無い僕には、満足な食事が取れる訳でも無く
寝るしか無い状態が続いていた。

だが、寝ていても現状は全く変わらない。
……いっそうの事、泥棒でもするか!捕まれば刑務所でただ飯が食える…
馬鹿な事を

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電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話) 結➕追伸

電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話) 結➕追伸

「物凄いスピードで走ってくるのは誰だ?」
と、電柱は目を細め、
走る姿を見て韋駄天という事が解った。
韋駄天は、電柱に宣伝の張り紙を貼る仕事をしているからだ。
「また、私の身体に変な物貼るのね。嫌だわ」

韋駄天は、着くなり、
「電柱さん、今日お手紙持ってきたよ。
これはそんじょそこらにある手紙と違うよ。
これは、樹木が貴女に宛てに書いた恋文だよ。
樹木は貴女の事が好きなんだよ」
「えっ、樹木さん

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電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話) 承

電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話) 承

一部始終を見ていた観音は、どの様にしたら二つの物達が仲良くなるかを
考えていました。
…お互い、何故憎しみ合うのか?樹木と電柱は物が違っていても、
歪み合う事はないはずだ。…
観音様はこの様に考えていました。

しかし残念な事に観音像は動けない。
あの物達の側にも行くことが出来ない。
また、私はあの物に対して言葉を伝える通力も無い。
観音の想いをどの様に伝えるかを、思案していました。
そうだ!お釈

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お返し断捨離(410字の小説)

お返し断捨離(410字の小説)

[「断捨離」とは、不要な物を「断ち」「捨て」、物への執着から「離れる」ことにより、「もったいない」という固定観念に凝り固まってしまった心を開放する]
と、ある。
何と!哲学的な事が書いてある。
「ほっといてくれ!」
と、私は言いたい。

私はケチな男
一度買った物は捨てられない
不要な物であっても
「捨てるのはもったいない」
と、思う心が強い。

物にも命がある。
使命があるはずだ。
それを活かせ

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春は風を待っていた(410字の小説)

春は風を待っていた(410字の小説)

春は風を待っていた
寒風は冬だ
熱風は夏だ
春の風は寒くも熱くもない、心地よい風
そんな風を、春は待っていた

だが、最近の地球環境は、春の思い通りにさせてはくれない
夏はまだまだ遠いのに、
異常な暑さは一体何?
春の出番を飛び越えて夏が突然顔を出す

「僕の季節は無くなるのか?」
元気無くつぶやく春
そのつぶやきが聞こえたのか、
秋が駆け寄って来た
「君と僕は兄弟さ
夏が済んでも僕の出番は、最近

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