手のひらの・・・。(550字の小説)
それは私が神様を信じていなかった頃のお話。
うらびれたアパートに、僕は一人住んでいた。
生きる希望も無く、金も無く、友達も恋人も居ない。
まだ25歳なのに、これから何をして生きていこう?
バイトの仕事も無い僕には、満足な食事が取れる訳でも無く
寝るしか無い状態が続いていた。
だが、寝ていても現状は全く変わらない。
……いっそうの事、泥棒でもするか!捕まれば刑務所でただ飯が食える…
馬鹿な事を考える僕。
その時突然の雷。
轟音を立ててアパートを直撃したのか?
驚き外に出てくる住民達。
僕も驚き外に出る。
いつも同じアパートに暮らしている人達なのに、初めて会う人ばかり。
その中に可憐な美女がいる。
一眼で僕は恋に落ちる。
彼女も僕の瞳を覗き込む様に見つめている。
「驚きましたね。雷が落ちたみたいですね。」
と、挨拶を交わす。
彼女も愛想良く僕をみて、
「お腹減っていませんか?」
と、遠慮も無く僕に聞いてくる。
「空いています」と素直に答える僕。
彼女は微笑んで僕の手を握る。
「私は以前から貴方のことを見てました」
繋いだ手の温まりを感じながら僕は佇む。
手のひらに感じる恋の予感。
気がつくと、手のひらにコインが!
「これで、お握りでも買ってね」と、優しく言う彼女。
彼女は何て美しい女神様
そんな事があったら良いな〜って
妄想ばかりしている僕で〜す。
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