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感謝する絵画と言葉

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僕にとって感謝の気持ちは絵画と言葉でしかうまく伝えられません。つまり、絵画と詩は表現させてもらえることへの感謝の証でもあるのです。
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セピア色の花の音

セピア色の花の音

襖をしめる連続音
規則正しいゴングが鳴り響き
風と時が混ざりあう
夕陽のつくる一瞬の人影が
壁を伝わり炊飯器の蒸気に霞む
食卓に添えられた
白くふんわりした手拭いの下に
顔のない手料理が眠っていた
気の利いたメモがないことに安らぐ
茶碗にご飯を粧い
箸を一文字に重ね
感謝して食べます
とだけ言ってみる
ちょっぴり厚めの衣に
微かな塩水が喉から舌に混ざり合い
味噌の香る神経に電撃を打つ
いまも
歯の

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プロローグ

プロローグ

7歳に絵描きになることを夢みて43年が過ぎました。振り返れば、僕にとって絵を描くことは感謝を伝えるツールでした。
作品「シーガイア」は19歳の若さでこの世をあとにした親友に捧げたアクリル画、僕の創作活動を支える原点です。

妻へ

妻へ

いつも僕が思うように
絵を描かせてくれて
病を忘れさせてくれて
そばで静かにサポートしてくれて
僕ができることは
限られているけれど
誰にも経験できないことを
一緒に過ごしてもらおうと
これからも
感謝と情熱を
すべてに注いでいきます

友人へ

友人へ

僕と言葉をかわした人は
みんな僕の友人
「いつか」そう思える瞬間がくる
そんな気がします
僕の絵が生まれるなかの
どこかの時間に
友人とかわした言葉や記憶が
潜んでいると思えるからです
僕と友人は
絵のなかにもつながっています
いきています

医療・介護で支える人へ

医療・介護で支える人へ

子供のとき
愛媛のある大きな病院に
初めて入院した僕は
思わずおねしょをしてしまいました。
翌朝心苦しくナースコールをすると、
かけられた言葉が
「知らせてくれてありがとう」。
そのような心の安らぎを
僕はこれまで何度となく
病をつうじて与えられてきました。
いまもその安らぎに支えられ続け、
僕の絵はうみだされています。

妹へ

妹へ

ある日
きみたちは語ってくれました
子供のころ
部屋の壁にかけられた
一枚の絵をみてよく眠りについたと
その絵は
僕が14歳のとき
夢と星と宝物をテーマに
詩を添えて描いた一枚の作品でした
これが
絵のもつほんとうの姿だと
僕はきみたちから教わりました

母へ

母へ

僕とあなたの共通点といえば、
たわいもない昔のことを
よく覚えていることでしょうか。
その大半は
失敗話か笑い話でしたね。
子供のころ、
明かりを消して
眠りにつくなか
語りあったひとときが、
一番あなたを感じ
素直になれるときでした。
僕の絵の想像力は、
こうしてあなたから与えられ、
育んだものです。

父へ

父へ

あなたは唯一
僕に厳しく接してくれた人でした。
そのおかげで
世の中のどんな厳しさも
やさしく感じることができるのです。
僕が逆境に強いのは、
あなたの厳しさを
経験しただけではありません。
厳しさに眠るやさしさを
必死に探しつづけ、
その答えや発想の転換を
みつける術を
あなたによって
身につけてこれたからです。

あなたへ

あなたへ

ここまで読んでくれてありがとうございます。
僕からの願いは、
これからも世界中のたくさんの絵をみて
自分自身と会話してほしい、
その一点です。
絵には多くの時間と
いろいろな心がつまっています。
画家が何を意図しているのか、
無意識なのか、
その答えはあまり重要ではなく、
あなたが絵をみて
いまどう感じたかが大切です。
10年後、
あなたが同じ絵の前に立ったとき、
きっと
また少し違った風景が広が

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絵画とは

絵画とは

これまでに描いた絵をみつめると
いつもエネルギーをもらえる
僕はそれを繰り返しながら
失われたエネルギーを取り戻し
また新しい作品を描きたいと思う
もし
そのエネルギーを
誰かに分かち合えたなら
これ以上の描きがいはありません

詩とは

詩とは

言葉は人がつくった記号です。
それを借りて思いやことを記します。
同じ記号なのに
違って伝わるのはなぜでしょう。
言霊の仕業でしょうか。
それとも心の鏡がそうさせるのでしょうか。
僕にはよくわかりません。
詩は伝わらなくてもなにも困りません。
僕がこうだといえば
それで世界が創られてゆくからです。
絵画とよく似ていますね。
大きな違いがあるとすれば
あなたに読んでもらわないと始まらない
ということ

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芸術とは

芸術とは

この作品は僕の右手そのものです
筋肉が萎縮し
骨が角張り
歪で不自然なラインを形成しています
また、筋力は小鳥の踏ん張る脚力にも及びません
これはすべて真実です
僕の創作は
この重力に抵抗し続けた魂の分身
脳ミソの化身を通して
この世に解き放たれてきました
僕はこの宇宙が残した孤独な廃棄物に
敬意を表して
愛情と感謝の気持ちを
全力でふり注いできました
流れ星の瞬く光よりも短い僕らの魂は
魔法にか

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