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「お父さん、いい顔してる!」

「ぜひこの方にアロマをやってほしいんです」
常勤看護師さんに連れられて、とあるお部屋を訪問。

70代くらいの男性がひとりベッドに横たわっていました。
細い管がベッドの傍にある機械から男性の喉元につながっています。
その管をいじらないように、男性の両手にはミトン(手袋)が装着されています。

看護師さんにミトンのはずし方を教えてもらい、ハンドトリートメントを開始します。
男性は少し戸惑った様子だったけれど、いつのまにか眠っていました。

施術が終わり退室しようとしていたところに女性が入って来ました。
男性の娘さんでした。
今日お父さまにさせてもらったことを説明すると
「ありがとうございます。今度やってるところが見られたらいいなぁ。」

2、3か月後の訪問。
この日は娘さんが先にお部屋に来ていました。

彼女とお話しながらトリートメントを進めます。
父親がここに入ることになった経緯。入ってからの日々。
彼女は毎日面会に来ているそう。

「あっ!お父さん、いい顔してる~!写真撮っちゃおう!」
娘さんがケータイを取り出して、嬉しそうに何度もシャッターを切っています。
「これ、みんなに見せたら喜ぶだろうなぁ」
明るく弾んだ声で、娘さんが楽しそうに言いました。
お父さまの様子からは、その胸の内は分からないけれど、
嬉しそうな娘の姿を嫌がる親はいないでしょう。

でも、本当はね。
私じゃなくて娘さんがマッサージしたら、もっと沢山の表情が見られるだろうな…。
言葉以外のコミュニケーション、親子だからこそ通じる気持ちの量はきっと多いと思うのです。

当時はいろんな都合で、彼女と一緒にマッサージしてみたり、やり方を教えたりが叶わなかったけど。
もしその時に戻れるなら、そうしたい、とずっとずっと思っています。

まだまだマイナーな職業です。ご支援いただけましたら嬉しく思います。なお、いただきました御厚意は今後の活動資金に充てさせていただきます。