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【評論】_うちゅうひこうしのうた

皆様、こんばんは。最近はどんな作品や出来事に感動されていますでしょうか。やはりお気に入りの詩歌やドラマ等でしょうか。

今回は、2003年12月から2004年1月にNHKの音楽番組『みんなのうた』で放送された楽曲であり、作詞:一倉宏、作曲・編曲:菅野よう子、歌:坂本真綾さんたちによって提供された『うちゅうひこうしのうた』を皆様と解釈の上、味わってみたいと思います。KIRINJIバージョンが個人的には好みですが、独断もございますので是非コメントをいただければ幸甚です!

作詞の一倉さんはサントリー宣伝部出身の『うまいんだな、これがっ。』、『きれいなおねえさんは、好きですか』等の素晴らしいコピーライターでいらっしゃいます。

まずは冒頭。

ちょっと不思議な夢みたの。私は宇宙飛行士であなたは農夫。

カップルである二人のうちの女性は宇宙飛行士のようです。さらに男性は農夫とのこと。園芸というより何かお野菜を育てている感じがします。敢えて「ガーデナー」ではなく「農夫」ですものね。

麦わら帽子に送られて私は元気に飛び立つの。

麦わら帽子を被っているのは農夫の男性なのでしょうね。「飛び立つ」というのはロケットに乗ってやはり宇宙空間へ向かうのだと思います。

空の青さ、重さ、時間の果てしなさ、地球の遠さ、コンピューターのかすな唸り。あなたの育てたトマトの匂い。

空が青く重い、時間の果てしなさが感じられることから、やはり女性は宇宙なり異次元に挑戦していることが窺えます。しかしコンピューターはかすかではあるものの唸っており、計算は止めどもなく進行している。生命維持装置が動いているところに、トマトの香りが漂います。実に生きていることにリアルな香りが添えられている。

イオンのパルスは順調よ。今日も宇宙ラジオにあのリクエスト。

イオンにパルスは無いのかもしれないけれど、順調に航行していることを女性は主張しています。パルスとなると定期的な心臓の鼓動や脈拍を想起させます。どんな曲をリクエストしたのでしょう。男性と一緒に昔聞いていた曲なのか、はたまた自分で作った歌なのか、単に当時流行っていた曲だったのか、非常にリクエスト曲の余韻が漂います。

アルデバランが輝いて。星座がこんなに騒ぐから。
星の運河、彗星たちの渡り鳥、砂漠の影、小惑星群の羊たち。あなたのティーシャツ、レタスの匂い。

アルデバランとは、冬の大三角形の外側の「冬のダイヤモンド」をを形作る「おうし座α(アルファ)星」のことを指しています。
オリオン座の真ん中に並んでいる3つの星を、東から西に並べて延長していくと、最初に突き当たる明るい星が「アルデバラン」です。確かに双眼鏡等でみると周りの星や星雲が明るい。
この詩の季節は、麦わら帽子の男性の夏のイメージとは違い、実は冬に移り変わり、またもやレタスのリアルな匂いが漂う。

ちょっと素敵な夢見たの、私が宇宙飛行士であなたが農夫。

一番と違い、「不思議な」夢では無く、「素敵な」夢になっている。

日に焼けた腕に飛び込んで、黄緑の風に包まれて。

ラストシーンは日に焼けた男性の腕に飛び込んで、黄緑の風に包まれるのですが、
これは既に宇宙に向けて飛び立つ段階において、女性は現世では死を迎えていたことを提示しているのだと解釈出来ます。死への旅立ちを気丈に語り上げた女性の物語であると考えると、なぜか納得がいかないでしょうか。

男性に対して冒頭から、自らの航行が順調であることの気遣い、イオンのパルスが象徴する生命維持装置の人工的な処置下にあるものの、宇宙ラジオにリクエストしてしまう「曲」の健気さ。

あなたにお土産マース(火星)のかけら。何でもないけど宇宙のかけら。

男性にとってはお土産となってしまった「マースのかけら」は女性自身の骨なのか、遺灰なのか、はたまた魂の一部を表しているのではないでしょうか。受け取った男性にとっては何でもない訳ないのに、「何でもない」といってしまう気丈な女性です。

宇宙の壮大さを用いることで、男女の愛を昇華した作者の世界観は、実に素晴らしく、雄大ですね。実にロマンティックで愛おしいストーリーです。

有難うございました!!

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