枕を濡らした夜

母親の機嫌がすこぶる悪かった

夕食後、通話中の部屋を乱暴に叩き、「ちょっといい」と言いながら入って来た。

要点はこうだった

「家事は言わなきゃ手伝わない。お金は一銭も入れてない。家では無愛想。デートには行く。どう思って生活をしてるのか？」

これを嫌味ったらしく、プラスαで突っ込む必要が全くない所をネチネチと言われた

我が家は彼女の機嫌次第で回っている
怒らせれば父親でも日付けが変わる時間帯に怒鳴られるし、逆に弟は何をしても許されている(バイトはフルタイムだけれど、家には一銭も入れていない)

私は彼女と過ごすのが嫌いだ。彼女を嫌いだから。
嫌いになったきっかけはマガジンで書いている

私は「自己中なんでしょ」と返した。それがまた彼女を怒らせた。

さすがに医師から「家にいる事がストレスで、体調を崩してる原因」「母親とは物理的距離を置いた方がいい」と言われている事は言えなかった。無一文で追い出されるし、何より彼女が激怒で発狂するのは想像に難くないから。

彼女は私が家での無愛想な態度を「薬を減らしたから」と言った
あながち間違いではないけれど、私の苦悩を知らない彼女に言われる筋合いはなかった

こんなご時世になる前から、私は家にいなければいけなかった
トイレにいてもLINEで居場所を聞かれるほど、自宅軟禁状態だった

私は彼女を構う事にした。朝は洗濯機を回し干し、5時になると彼女の部屋をノックして起こす。朝食を一緒に摂り、見送り、仕事が終われば出迎え、一緒に2時間以上の刑事ドラマを見て、夕食を一緒に作り、食べ、愚痴を聞いた。

そんな生活を、去年半年間以上続けた。物理的な傷は急増した。愛想笑いを保つ為に、薬を飲み続けた。

交際を機に、ほとんどを止めた。薬も止めた。止める事が出来た。
その代わり、家での愛想笑いもなくなった。私は彼女を構うのを止めた。

我が家は機能不全家族だと思っている。それぞれの仕事の都合もあるけれど、全員が揃うのは週に1度あるかないかだ。2～3人は毎晩夕食の時に揃う。それ以外は各自で過ごしているし、夕食が終わればすぐに部屋に戻る。
家庭内別居みたいなものか。私と弟もいい年なのだから、2人共未だに実家暮らしな時点で少しおかしい。

悔しかった。私だけが彼女に責められる。確かに私は自己中に暮らしている。でもそれまでに散々してきたじゃないか。心身を削ってきたじゃないか。誰が嫌いな人間に対して笑顔を振りまける？いつまで構わなければいけない？いい加減解き放ってくれても良いじゃないか？

仕事は探している。動いている。年金は2ヶ月で1人の1ヶ月分の給料より少ない。

娯楽なんてほとんど出来ない。借りたいCDは50枚を超えた。服も随分買ってない。出掛けても、ほとんど支払わせてしまう事に罪悪感を抱いている。家に入れられるお金はどこにもない。ガン保険を解約して、積立年金を止めるのが最終手段になる。

対話中も通話は切っていなかったので、内容は全て筒抜けになっていた。
決めたはずの「人前で泣かない」という自分との約束は、交際を始めてから、すぐに破られた。

昨夜は自分でも混乱する程に泣きじゃくった。我ながら理由が判らなかった。

普段なら5時台には目が覚めるのに、今朝は全然起き上がれなかった。食欲のないお腹に目玉焼きをぶち込み、午前中はほとんど眠った。頭がロックダウンした状態だと言いたい。
今は辛うじてPCの前に座っているけれど、正直頭はガンガンするし、目を開けているのがツライ。すぐにでも横になりたいけれど、彼女の機嫌を取るべく家事を少ししたり、やらなければならない事はある。

実家が1番生きづらい。早く抜け出すんだ、こんな所から。