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たどってみたい場所。『台湾 近い昔の旅』又吉盛清


リトル東京のような台湾の首都、タイペイ(台北)。日本人にもおなじみの店の看板が多くて、整った楽しい町。でも、大きな通りの何気ないカドとか、ちょっと横道に入った先に、昔の遺跡が残っています。それは、日本植民地時代の石造りのりっぱな建物だったりします。

かつての総督府は、いま台湾総統府になっているし、旧台北市役所は、いま行政院になっています。台湾総督府研究所は教育部(=日本の文科省)だし、台北帝国大学医学部専門部は国立台湾大学医学院付設医院に変わり、台湾総督府の官舎は国家図書館になりました。そして、山砲隊・歩兵第一連隊の軍用地跡地はいま、中正紀念堂として観光客や散策する人、イベント会場などに使われています。

トップの写真の台湾博物館は、1908年に第4代台湾総督の児玉源太郎と民政長官後藤新平を記念する、児玉総督後藤民政長官記念館として建築されたとか。翌年、台湾総督府博物館に改称され、日本の敗戦後の1949年に台湾省立博物館と改称。現在の名前になったのは、1999年だそうです。

そんなこんなの日本植民地時代の遺跡は、タイペイ全部全部で50カ所以上。もう建物はなくなっていたり、別の建物がたっていたり、一部だけそのまま残っていたり。このガイドブックは、よくもこれだけ調べたなあと感心するほどです。

日本の植民地時代についての評価は、中国との関係でいつも複雑。そして、昔の建物はどんどんなくなっていくので、一般向けに日本でこういう本が出るのはいいなと思います。そういえば、私がタイペイの書店で見つけた、別の植民地時代の台湾ガイドも、日本人のフリーライターさんが書いて、台湾の人が訳したとか。

普通の観光に、ちょっと歴史ポイントを加えてみたい人にお勧めの本。他のガイドブックの記述と比べてみると、いろいろ違いがわかっておもしろいし、ガイドブック自体の間違いさがしにもなったりするので楽しいです。ああ、また早く台湾に行けるようになって欲しいなあ。

又吉さんは沖縄出身。沖縄関係の取材をしている中で、この本も企画出版されたそうです。


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