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しっかりものの女性たちと愛すべき男性たちの映画『クイーンズ・オブ・フィールド』フランス、2019年

『アプローズ、アプローズ』がよかったので、フランス映画つながりで見てみたら、なんと主役は同じカド・メラッドさんでした。公式サイトをみると、彼は国民的俳優さんということなので、まあ、偶然かなとも思ったのですが、よくよくみたら『オーケストラ・クラス』の主演もやっていました。

もはや、韓国映画が日本で人気になりだした頃のハン・ソッキュかソン・ガンホって感じですね。しかも、役どころは売れない芸術家で奥さんとは別居、娘に冷たくされているところが泣けます。フランスの平均的な男性像って、そういう感じなんでしょうか?それとも彼のイメージ??

ともあれ、今回カド・メラッドさんが演じるのは若い頃にサッカー選手で、今は監督のマルコ。舞台は、北フランスのクルリエール。歴史ある地元のサッカーチームの選手たちが、試合中に乱闘さわぎを起こして、メンバーが出場停止の大ピンチ。残りのリーグが戦えないと、チーム消滅の危機を迎えてしまいます。

そんなチームの危機に立ち上がったのが、マルコの娘(学生)、女性警察、専業主婦といった地元の女性たち。自分たちのせいでチームの存続が危ういのに、夫たちは大反対どころか嫌がらせまでする始末。本当にどうしようもありません。それでも、マルコは、なんとか彼女たちを鍛えて、残り3試合を闘おうとしますし、女性たちもキャッキャ女子会のように楽しみながら、一致団結してわからず屋の夫たちに立ち向かうというお話。

とまあ、こういうコメディなんですが。いや、なんか日本でも普通にありそうな、専業主婦してた奥さんが働きだしたら育児のしわ寄せをうけた夫がへばったり、世話を焼いてもらえない夫がすねたりという家庭内不協和音のオンパレード。妻が家事以外にやりがいを見つけたり、自分の世界を持つと疎外感を感じる夫たち。リアルなコメディで笑えました(笑えませんが)。ダメンズたちが本当に甘えん坊で、頭が固くて、家事育児能力がなくて笑えます(笑えませんが)。

町でサッカーの女性チームに賛成するのが、妻とは別居で、娘のやる気に押し切られたマルコと、日頃は遅刻常習犯で遊び人でチームに迷惑をかけていたミミルっていうのが、なんだか象徴的です。あとは、妻に先立たれ、孫娘がかわいいマルコの父。女性が自立するには、男性の側も普段から自立していることが結構重要なんですね。

一方で、女性たちは試合や練習を通じて、チームとしてお互い支え合っていきます。女性たちがサッカーに打ち込むだけでなくて、普段の家事や育児にもこんなシスターフッドが大事なんだなあと思わせられるいいシーンが目白押し。フランスのコメディはハズレ無し。女性たちの闘いが素敵でした。

邦題:クイーンズオブフィールド(原題:QUEENS OF THE FIELD)
監督:モハメド・ハミディ
主演:カド・メラッド、アルバン・イヴァノフ、セリーヌ・サレット、サブリナ・ウアザニ、ロール・カラミー、ギヨーム・グイほか
制作:フランス(2019年)95分



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