見出し画像

三国志、キングダム、宮廷美女の時代劇。『戦乱中国の英雄たち』佐藤信弥


最近、中華ドラマを見ています。毎日があまりにも暑すぎて、体力が落ちたので、ちょっと休憩(!?)するつもりで見始めたのですが、とまりません。ヤバすぎました。麻薬のようにおもしろいです。見応えあります。

とりあえず、『陳情令』と『琅琊榜』を見たのですが、かたや『グリーン・デスティニー』を思わせるような達人たちの武侠モノ。もう片方は架空とはいえ政治闘争ドロドロの世界なのですが、どちらも主人公が罠にはめられ、16年後に復活して悪を倒して(名誉回復して)ハッピーエンドが同じでした。これって、中華ドラマあるあるパターン?と気になって、手に取ったのが佐藤先生のこの本です。

ド定番の『三国志』から始まって、秦の始皇帝の物語『キングダム』、項羽と劉邦、女帝武則天、武侠モノまで、中国古代史の佐藤先生は、日常的に日中韓のドラマを見てつぶやいているだけに、日本や韓国とのドラマのつながりまで網羅しているので、これが半端なく楽しいです。

『三国志』ドラマは数あれど、およそ虚実3:7と言われていて、どのドラマが三国志演義のどの場面をとりいれているか、いないかの解説。正史との関わりなど、日本の三国志小説も参考にしてのコンパクトな解説がさすがです。

日本でタイムスリップものが流行ったように、中国でもタイムスリップドラマはたくさんつくられているようで、その方面の解説や、中国で政治問題になりがちな異民族と漢民族との闘いをどう描くか、女性をどう描くかといった問題なんかもきっちり抑えてあって、にわかにとってうれしい構成。

そして、一番知りたかった『陳情令』や『琅琊榜』についてですが、なんとこれどちらも原作がネット小説なんだそうです。しかも、『陳情令』は原作がBL小説で、それを普通のドラマに改編したものだとか。中国はネット小説の厚みがすごいと聞いていましたが、それほどなんですね。驚き。

中国の武侠小説といえば、金庸のものが有名です。代表的な『笑傲江湖』では、5つの武術の派閥があって、正しい武術の流派とそうでない流派があり、2つが闘うのだとか。しかも、正邪で対立する関係の2つの流派のトップがお互いに友情を育むらしく、なんか『陳情令』に似ています。なるほど、中華武侠の王道のストーリーだったんですね。

一番弟子だった主役が濡れ衣を着せられ、破門され、崖から落ちるけど生きていて、16年後に再会を果たすというのは、同じく金庸の『神雕侠侶』にあるパターンだとか。こちらは男女ですが、『陳情令』は男性2人。『笑傲江湖』の男性2人の友情パターンを踏襲しているとのこと。2人が楽器をつかうところも同じだそうです。

佐藤先生のこの本は、とりあえず、さくっと重要なポイント(私にとって)が簡単に読めて、しかも、次にどんなドラマを見たらいいか、ガイドブックみたいにたくさんのドラマが紹介されています。ここまで広く、浅く(といっても、要点はバッチリ)日中韓ドラマを網羅して紹介できる人は、佐藤先生以外にいないはず。全部読まなくても、気になる部分だけ読めばいい構成がうれしい。中国ドラマが気になる人は、ぜひ手元におきたい1冊です。

佐藤先生のTwitterで知った『紅霞後宮物語』。3巻までは私は全力でおすすめ。そこから先は好みが分かれるかも?








この記事が参加している募集

#読書感想文

188,902件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?