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青春ラブコメ3部作。『なぎさボーイ』『多恵子ガール』『北里マドンナ』氷室冴子


 “男はすべからく泰然と構える”のが理想の俺なのに、体は小づくり、しかも女顔、とどめが名前で雨城なぎさ! 幼稚園で複数の男どもから求愛され、今は蕨第一中全校生徒からなぎさちゃん呼ばわりだ。
 その屈辱の過去の元凶北里と、ちゃん付けの張本人多恵子が俺に囁いた。三四郎が恋わずらい!? 恋に、受験に、揺れる青春前期、肩肘つっぱらかったシャイボーイの、悪戦苦闘のラブコメディ!(表紙裏より)

高校時代、大好きだった青春ラブコメディ。『なぎさボーイ』 というタイトルがものすごくぴったり。渡辺多恵子さんの表紙がまた、本当にぴったり以上の言葉がないくらいピッタリ。肩肘つっぱった、なぎさくん。もう、最高にスキでした。

『なぎさボーイ』は、3話構成になっていて、1話が導入部分。ベビーフェイスで女の子みたいななぎさ君が、弱虫でかばってやらないとダメだとばかり思っていた幼馴染の三四郎が、実はなぎさよりよっぽど大人で恋に努力していたことに気づき、応援しながら、自分の恋心にも気づくお話。三四郎くんについては、『蕨ヶ丘物語』にメイン部分のお話があります。

2話は、奥手ななぎさくんががんばって恋愛しようとするけど、うまくイカない空回りする「革命」のお話。昨今のラノベや恋愛小説は、主人公が決心したら、その次の瞬間から次のステップに踏み出せる展開が多いけど、ニンゲン(ましてや思春期ボーイ)はそんな簡単に大人になれないのですよ。そういう思春期の男の子の不器用さを描かせると、氷室冴子さんはピカイチ(死語)ですね。

そして、3話はクールビューティー槇修子の登場。1~2話もそこそこいいけど、とにかく私は3話が好きでした。 プライドはめちゃくちゃ高いけど、その分一途。そして、ただ1人にだけは素直な槇ちゃん。世の中の多恵子派のみなさん、申し訳ありません。私は槇ちゃん大好きです。多分、自分が周りを気にして、誰にでも親切に明るく、常識的に振る舞うことしかできないからだと思います。

結婚して、娘が青春時代真っ只中になっても、高校時代のほろ苦さと楽しさを思い出すような、青春っていいな……なんて、にやにやしてしまいたくなる、そんな話が詰まってます。『なぎさボーイ』名作です。


『多恵子ガール』は、待望の『なぎさボーイ』姉妹編。槇と多恵子の間で、なぎさくん、どーすんの!? と全国のファンが固唾をのんで本を開いたはず。でも、お話は多恵子の小さい頃から始まって、よくも悪くも『なぎさボーイ』とペア構成になっています。

私は槇が好きだったから、多恵子視点から見る槇が、対等なライバルじゃなのが不満。多恵子があからさまに被害者意識だから。まあ、幼なじみって関係もあるし、中学・高校時代の女子たちは「先に告白した人が絶対正義」で「横恋慕最悪ありえない」って不文律あるから、仕方ないのだけれど。

多恵子中心のお話で、槇の出番が減った分、多恵子の親友の野枝のポイントがダダ上がりです。彼女のクールさは大好き。あと、踊りの世界の描写も好き。家業のこと、進路のこと、恋愛のこと。高校時代は、視野が狭いだけに、悩みまくります。ああ、もう二度と戻りたくない。


そして、前二作から少し遅れて、出版されたのが『北里マドンナ』。要領がよくて、愛想もいい、優柔不断でエリート面をしていると思われがちの北里くん。その実、やっぱり高校生なので、悩みもあれば不器用な面もある。本書は、シリーズ完結編みたいな位置にある。

内面 にふつふつとたぎる北里くんの心の揺れが、とても見事に描写されてて、それは、一歩間違えれば平板になりそうな日常的な一こま、1コマの積み重ねだけれど、私は氷室さんのポップで楽しいお話と同じくらい、こういう話も好き。

北里くんとなぎさくんの友情って、氷室さんが女性だから女性視点で、現実にはなさそうにも感じる。なので、同じく氷室冴子さん好きの、夫の意見を聞いてみたけど、答えは「さあ、ねえ?」だった。ちなみに夫が一番好きなのは『なぎさボーイ』の三四郎。さすが寅さんファン。

私の大好きな野枝が、4章でクローズアップされているのもうれしいところ。凛々しくて強くて、美人で男嫌いの野枝。彼女みたいに、クールで毒舌なだけでなく、それを実行するのに必要な物資もちゃんと準備しておける性格に、私もなりたかったな。


いつもは遠方で参加できない氷室冴子さんの集いですが、今年はzoom開催だそうです。一度、参加してみようかな?






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