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ロックでなければ宗教じゃない!?『前衛仏教論』町田宗鳳


著者の町田宗鳳先生は宗教学が専門。先生によれば、「宗教の思想とは、もともと危ない前衛的もの。また、そうでなければ意味がない」のだそうです。つまり、ロックでないと意味がない!?

町田先生は、唐の時代の臨済というお坊さんが言った「仏を殺せ!親を殺せ!」「経典は糞書きべラ」に始まり、聖徳太子、最澄、空海、法然、親鸞などなど、それまでの社会的仏教的常識を覆そうとした仏教者たちのエピソードを本書で教えてくれます。

そして、現在の「仏教=葬式」という静(あるいは停滞)のイメージを覆し、日本仏教の再生を呼びかけたいという目的で書かれたとか。この本は10年以上前の本ですが、今でも十分刺激的です。

でも、一方で、今ではいろんなお坊さんやお寺が多彩な活動をしているので、(たとえば坊主バーで人生相談とか、お坊さんたちのバンドとか)町田先生たちのような考えの人たちが多かったのでしょうね。

私は、以前は昔のお坊さんといえば一休さんはアニメのイメージか、そうでなければ教科書で習った僧兵みたいな、極端な例しか知らなかったので、町田先生からいろんな事例を教えてもらって、驚きました。とくに、蓮如という人に興味をもったかな。

町田先生の本は、日本の仏教入門としてはとてもおもしろい本だと思います。ただ、現代と過去のお坊さんの行動や、ブッダの言葉を直接的に結びつけて、仏教的な生活の奨励と仏教寺院の活用を勧める内容には、6割の共感と、4割の物足らない何かを感じました。

最初はそれが何でなのかわかりませんでしたが、その後、『ブータン仏教からみた日本仏教』という本を読んだら、物足りない理由がわかった気がします。

つまり、町田先生が訴えるのは、日本の現状から考えた日本仏教再生で、仏教とはそもそも何なのか、なぜ21世紀の日本で仏教を再生しないといけないのかという、根本的な部分に説明がないからだと思います。

町田先生は宗教学でも特に比較宗教学がご専門だそうなので、ご自身にとって仏教の復活もお寺の活用も大事なことは自明かもしれませんが、そうでない人のために何かちゃんとした、先生なりの説明が欲しかった気がします。

そして、仏教だけでなく、キリスト教もそれ以外の新興宗教といわれるものも、どちらかというと現代社会では前衛的ではなく、保守的で束縛的な方向に「危なく」なっているのはなぜなのか、も言及していただきたかったかな。



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