見出し画像

猫たちが支えてくれた生活。『ワルシャワ猫物語』工藤久代


工藤久代さんが語るのは、ポーランドで飼った16匹の猫たちの話。そして、猫と暮らした社会主義時代のポーランドの7年間の生活。

工藤さんにとって初めての海外生活は、不自由ばかりだった社会主義ポーランド。猫との生活が唯一のなぐさめで、支え。ポーランドに赴任して、ようやく妊娠できたのに、結局流産してしまったことも、猫との生活にのめり込む理由だったそうだ。

それにしても、猫と一緒に生活を通して見えてくるポーランドというのは本当にずるい世界で、ロシアでの生活を描いたエッセイなんかとよく似ている。もちろん、いい人もいるのだけれど、1960年代から70年代の社会主義的お役所体制と、それを利用するズルイ人たちの方がよりたくさん出てくる。そして、何事も理不尽だし、いい人たちはあきらめるか、辛い思いをした仲間でなぐさめあうか……。

高校時代にこの本を読んだとき、教科書に出てくる”社会主義”のいいイメージとはほど遠くて、不思議だったっけ。もちろん、同じ社会主義でもいろいろあって、中国はまたちょっと違ったり。

20年近くたって突然思い出して懐かしくなって、ネットの古書店で探して購入してみたら、実は別の本と勘違いしていたことが判明。もう1冊の欲しかった本は絶版になっていて、古書店で高値がついていたので、とりあえず図書館の本を再読した。

再読したときには、ちょうど子供ができなくて、いろいろ悩んでいた時期だったので、工藤さんの悩みに共感できた。しかも、猫に助けられたことまで共通していて、不思議な縁を感じたっけ。

やっぱり、高校生は読書の時間はあるけれど、あっという的に経験が足りないから理解力も足りないし、記憶もあいまい。で、社会人になると、経験値は足りるけれど、あっという的に時間がない。難しい。

余談ですが。その後、『ポーランドに殉じた禅僧 梅田良忠』って本を読んだら、なんとこの方、工藤さんのだんなさんだった。世の中狭すぎる!



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?