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大規模Webサイト運営におけるプロダクトマネジメントのすヽめ

この記事は Ateam Group Manager & Specialist Advent Calendar 2020
7日目の記事です。このアドベントカレンダーでは、エイチームグループの各子会社及び各部門のマネジメント職、シニアエンジニア、シニアデザイナー以上が記事を投稿しています。

株式会社エイチームライフスタイルでデザインチームのアシスタントマネージャーしてます@xiolkeeがお送りします🐶

今回は「大規模Webサイト」を運営する新規事業のグロースに2年以上携わってきた私自身の経験を元に、「大規模Webサイト運営におけるプロダクトマネジメントのすヽめ」について書いてみたいと思います。

「大規模Webサイト」について
この記事では大量の商品情報を保有し、サイト内でユーザーが検索し、購入に向けた行動を取ってもらう形態のサイトを「大規模Webサイト」と定義しています。他に良い表現の言葉が思い当たらなかったので、業界的にもっと適切な名称があれば教えてください🙏

はじめに

私が所属する部署では、日本全国の霊園・墓地の検索、資料請求・見学予約ができるライフエンディング情報サイト「Life.(ライフドット)」※を運営しています。
※「霊園・墓地の検索」と言われてもパッとイメージつかない方も多いと思うので、「不動産(物件)」や「結婚式場」検索サイトのようなものをイメージしてください。

2017年にサイトがローンチされ、事業が立ち上がってからかれこれ3年が経過しましたが、サービス改善する上で様々な困難に直面しました。

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事業会社なので、当然私たちは売上をKGIとして事業運営を行なっているわけですが、売上を構成する事業KPIとして、「資料請求・見学予約数」「ARPU」があり、さらにそれを構成するKPIとして「SEO順位」「CVR」「広告CPA」「見学予約率」etc…様々な指標があります。

売上目標達成のために部署内でさらに主要KPI単位でチームを分けてプロジェクト推進する体制はよくある話だと思います。

しかし、改善活動においては同一サイトを触る事が多く、ページ数も膨大にあるため、チーム間でうまく連携しないと施策が互いに干渉し、指標のバッティングによって効果検証が正しく行えず、時には互いの成果に悪影響を及ぼしてしまう問題が発生しました。

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また、各プロジェクトチームでやりたい施策を担当者レベルで都度開発に依頼していたこともあり、開発のキャパシティを超える量の施策をどのように優先順位付けて着手すべきか判断できない問題もありました。

この問題を放置すると何が起こるかというと、施策を打っても打っても成果に現れず、時間と開発のリソースをただただ浪費するだけの状況になります。
また、開発チームからすると施策が都度依頼されるわけですから、プロジェクトの全貌が見えない状況です。
そのためプロダクトマネジメントが適切に行われないまま突貫工事で開発が進み、システム負債が蓄積し開発パフォーマンスが低下、気づいた頃にはシステム自体をリプレイスせざるを得なくなります
それに対してもさらなる投資が必要になって結果的に事業の赤字は膨らむばかり…。

適切なプロジェクト管理が行われないと最終的には事業撤退なんてことにもなりかねません😱

課題を整理してみる

これらの問題を解消すべく、課題を整理します。

・レポートラインが整理できておらず、役割と責任の所在がわからない
・ロードマップ(計画)がないため、開発スケジュールが立てにくい
・施策優先順位を事業俯瞰して判断できていない(そのための情報がない)
・アクションプランがプロジェクトに関わる全員に見える化できていない

レポートラインを整理し、役割と責任者を明確にする

1ヶ月先、3ヶ月先を見据えて今何をしているか、何をすべきか、それがきちんと進行しているかを把握するのは事業を成長させる上で大事なことです。
その中で情報が各所に散らばっていると状況把握だけでも非常にコストがかかります。

整理する前の状況は以下のようなイメージです。

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わあ。。。これは大変ですね。
情報が錯綜しており、1つの施策の状況を把握するだけでも誰が何の情報を持っているか、誰が施策オーナーなのかすらさっぱりわかりません。

綺麗に整理してあげましょう。

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各チームで責任者を立てることがポイントです。

チームの責任者は自チームの施策やメンバーに入っている状況をしっかりと把握します。また、メンバーもきちんと自チームの責任者に自分が持っている情報を伝えることで責任者に全ての情報が集約されます。

だいぶ状況が把握しやすくなりましたね。

運用に乗せる際はメンバー間の意思決定のみで進んでいる施策に対してはストップをかけ、最初は多少口酸っぱく責任者の承認を得ること促すことで軌道にのせやすいです。

また、こうすることで責任者は各チームの施策状況を把握できるので、施策のバッティングが起こるリスクも低減しますし、事業のあずかり知らぬところでプロジェクトが進んでいるなんてことも防げます。

プロジェクト毎にロードマップを立て、アクションプランを作る

自チームの目標KPIを達成するためにやりたいことは無制限に出てきます。
特に予算から乖離している状況だとやれることは何でもやりたい!!となりがちです。

しかし、そういう時こそ冷静に状況を分析することが大切です。

突発的なアイデアの中にはもしかしたら有効なものもあるかもしれませんが、そのようなやり方は再現性が低いです。
目の前の課題に対して都度施策を出しても、先々を見据えた時に本当に解決すべき課題から外れていたら事業リソースを食いつぶすだけで却って目標達成が遠回りになります。

時間やリソースが限られている中、本当に解決すべき課題に集中しないと、いつまで経っても成果は現れません。

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前提となる課題を洗い出し、認識をすり合わせた上で、課題の真因は何か、本当に今やるべきことは何か、プロジェクトチーム内で最低限やるべきことを絞ることが重要です。

注力すべき課題を適切に設定できれば自ずとやるべきことは見えてきます。

ロードマップが明確になれば開発チームも先々を見据えて保守性を考慮した開発をすることができ、サイトの安全性とパフォーマンスも向上し、よりスピーディな目標達成が期待できます

もちろん、当時立てたロードマップやアクションプランが必ずしも最善であるわけではないので、定期的な振り返り、必要であれば計画の見直しをきちんと行いましょう。

事業方針に基づいて施策の優先順位をつける

施策を取捨選択した上で工数が小さく済むものであれば問題ないですが、時には事業のリソースを集中する必要がある課題もあるでしょう。

この段階で出ている施策は全て重要なもののはずなので、全てを滞りなく行うことが理想ですが、現実問題、事業の予算進捗やメンバーのスキル、キャパシティを考慮した際に何かを捨てる判断も避けては通れません。

リソースは事業全体で持っているものです。

私の部署では毎週各職能のリーダー陣が集う「連携MTG」を実施しており、その中で施策優先度の決定を行っています。

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連携MTGでは各プロジェクトのロードマップに従って立てたアクションプランのすり合わせと、開発リソースと照らし合わせながら施策の優先度を調整します。
プロジェクト視点からさらに上位の事業視点でアクションプランに対する質問・提案・リクエストを行ない、施策の優先度を判断することでより洗練されたアクションに落とし込まれます。

ここで適切に優先順位の判断をするためにも、施策を打つことでどれくらいの改善が期待できるかといった事前の情報収集が重要になります。

アクションプランを共有・見える化する

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連携MTG&施策優先度決めで議論した内容は事業部の方針としてメンバーに共有しています。
また、各プロジェクトチームのアクションプランやKPI進捗も事業メンバー全員が参加する毎日30分の朝会で曜日別に共有されます。

高い専門性が求められるプロジェクトほど職能に閉じて施策案を考えがちですが、題が絞られた状態で協力を仰げば、専門外の領域に対しても施策のアイデアは出てくるものです。

伝え方の工夫次第で他チームのメンバーからの支援を受けやすくなりますし、素人の突拍子もないアイデアが大きな改善を生み出すこともあります。

アクションの背景・課題を明確に伝えることがポイントです。
効果的に情報を開示し、周りを頼ることで全員のベクトルが事業成長に向かって揃います。

「プロダクトマネジメントのすヽめ」まとめ

【其の一】レポートラインを整理し、役割と責任者を明確にすべし
【其の二】プロジェクト毎にロードマップを立て、アクションプランを作るべし
【其の三】事業方針に基づいて施策の優先順位をつけるべし
【其の四】アクションプランを共有・見える化し、適切な支援を求めるべし

私が所属する部署は立ち上げ当初こそ伸び悩んでいたものの、今回お伝えしたことを取り組んできたことで、事業KPIはこの2年間で100倍の成長率で推移してきました。

今回この記事を執筆するにあたり過去の取り組みを振り返ってみましたが、数ある課題の中からいかに今解決すべき課題を選択し、リソースを集中して策を講じることできるかが重要だと改めて実感しました。

事業目標を達成するためには、事業全体を俯瞰し見た上で時には捨てる判断も必要で、そのような意思決定ができるようにするためにも、前提となる情報や課題が部署内で共通認識になっている必要があります。

事業や規模が大きくなればなるほど関わるの人数は増え、全員のベクトルを揃えるのは難しくなりますが、前提条件をすり合わせた上での計画立て、アクションプランの見える化、定期的な振り返り、必要に応じて計画を見直すことで事業成長を最大化できる手応えを感じています。

今回お伝えしたことをチームに取り入れるのは、最初は抵抗があるかもしれませんが、成功事例を積み重ねていけば、チームメンバーの意識も変わるでしょう。

最後に

Ateam Group Manager & Specialist Advent Calendar 2020の8日目は @aiji42 がお送りします!

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メラメラと闘志が燃え盛っておりますが、一体どんな内容になるのでしょうか。非常に楽しみです!


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