マガジンのカバー画像

短歌集

12
2016年以降発表分。Twitter未投稿作品あり。
運営しているクリエイター

記事一覧

コロナ短歌、2021夏

コロナ短歌、2021夏

副反応レトルト食品開けてゆくリモートワークの家族に隠れて

これ投稿したら不謹慎になるのかな逡巡増えるスマホをさす指

酒飲むな、8時には帰れ、県出るな、不純な濃厚接触禁止

あと少し君と遅くまでいたい続きはZoomで8時の会食

午後8時魔法が解けるシンデレラ閉店だねさぁ次どうしようか

増えてゆくメダルも感染者の数もセンセーショナルなニュースな日々も

ほんとうはこんなはずじゃなかったね値下げ

もっとみる
【俳句・川柳・短歌】2020-21 色褪せぬセカイ

【俳句・川柳・短歌】2020-21 色褪せぬセカイ

冬の星夜明けを待つよ離職票

吐き出した柘榴の種のような恋

ともだちの噂の刺青隠す君

運命の歯車軋む回転音

ふいうちのような写真を宿すときカメラはわたしを切り取ってゆく

鮮やかなようで色褪せて見えるいちねんまえから変わらぬ世界

どうやって誰と一緒に生きていく?恋の緊急事態宣言

夏の日にこの世を去った俳優はどんなセカイを見てたのだろうか

若者の自殺増加もオンラインサロンの罠も根本は同じ

もっとみる
コロナ短歌 ─春の只中─

コロナ短歌 ─春の只中─

ニンニクと汗の匂いをさせてても堂々とできるWeb meeting

銀座線の中がこんなに白かったいつもと違う通勤電車

いつもすぐ倒されてしまうモンスターずっと残るよポケモンジムに

ポケモンの名を叫ぶ子に旗を振るしりとり続ける集団下校

診断ではじめて目にしたE判定コロナとどちらがまだマシですか

大震災、コロナ以外の病気さえ同時に来ないという保証なく

コロナ終活ひと事じゃないね明日には何が起

もっとみる
コロナ短歌 ─金太郎飴な日々─

コロナ短歌 ─金太郎飴な日々─

出勤の10分前に目覚めても間に合ってしまうリモート・ワーク

ギフト機能バリエーションも減ってきたポケストップは動いてくれない

使いみちなかった色の口紅も部屋や画面では気軽に試せる

一日を家の中だけで過ごすなんてまるで私たち病人みたいだ

この地球の人類全てが病人か、病人予備軍、ひとり残らず

人間はみんな平等なんだってこんなところで実感をする

レトルトの容器のまま食べるんじゃなく器に盛って

もっとみる
コロナ短歌

コロナ短歌

花弁の上、怒涛のみぞれが舞い降りる 窓の中には私とあなた

オンライン 繋いで聴こえて漏れてくる 飲み会? ラジオ? さまよう言葉

期待してなかったZoom交流会 仮想背景みんな笑った

笑い声も涙声もいつも聞こえてる 内緒話が許されない壁

アフターコロナまで持つかなこのスーツ スポーツジムにも行けない世界

お留守番 靴にかばんに社員証 次の出番はいつになるかな

リモートワークの孤独と引き

もっとみる
人工知能になりたい【短歌 2018-2019】

人工知能になりたい【短歌 2018-2019】

別に好きでもなかったあの人の【結婚報告】ざわめいている

もしひとの人生が漫画だったなら連載会議にもかからない、いのち

遠い日の痛みを覚えて閉ざす夜:傷跡は勲章にならない

「2年前の今日の投稿」は「今日」じゃない 「今日」じゃないのに「今日」になる、意味

人工知能になりたかった、叶わないけど
叶わないけど人工知能になりたい

【短歌 2018年春】

【短歌 2018年春】

端末に保存 記憶に鍵掛けて一日だって忘れないでいて 

思い出のひとすじの道をたどる時記憶の中の笑顔は星に 

衝動性コントロールを失って淡く溢れるは純愛ですか 

たましいがぶつかり合う場を何度でもくぐり抜けて生きてきたような君 

春の夜に薄衣を脱いで穏やかな初恋を待つ水の訪れ 

メモ。時計の電池を近々替えること。(別に何かの比喩ではなくて) 

セクハラは「大事なひとにだけ空けている席に他

もっとみる
【短歌 2017年秋〜】

【短歌 2017年秋〜】

一冊の論考集の感想をめぐって東と西とを結ぶ 

あのときに扉をひとつ開けたなら叶えられるものは増えたんだろうか 

かみなりに打たれたように恋に落ちどうすれば良いかわからないこと 

昨秋に橋を渡ったと聞きました 犬の名前のメールアドレス 

貸し借りは作ったままでいいからさ 弱った面まで隠さず見せて 

知り合いのエコノミストの男性が「ママレード・ボーイ」の時代を読み解く 

杏仁豆腐をバケツで

もっとみる
夏へと向かう【短歌 2017年夏】

夏へと向かう【短歌 2017年夏】

三日月が綺麗な夜は見つからないはずのものまで見つかりそうで 

セブンティーンアイスを食べる喜びを噛みしめながら夏へと向かう 

あの経産省若手のペーパーを読み込んだひとと話がしたい 

「どの服で行こう」並べるワンピース翻し駆ける夜更けの妄想  

あの懐かしい団地をすべて買い取って好きなひとたちを集めて住みたい  

夏コミのコスプレに負けないくらい少女漫画な夏が始まる 

ミクシィが全盛期だ

もっとみる
【短歌 2017年4〜5月】

【短歌 2017年4〜5月】

名鉄の赤い電車を見るたびに京急電車を思い出してた 

季節過ぎのココアの香りが匂い立つ 恋の予感が醒めないうちに 

この人生、描いているのはだれですか。「作者の気持ちを答えてください」 

青春の力強さと躍動感、私はそれを気に入っている 

春の夜渋谷の雑踏すり抜けて「きょうから僕らは他人じゃないよ」  

あといくつ指折り数える母の日を下り坂から仰ぎ見て、今 

いもうとに似た後輩の投稿に躊躇

もっとみる
【短歌 2017年1〜3月】

【短歌 2017年1〜3月】

まどろみが布団の中に残ってる 食べきれなかった日々を砕いて
 閉じる前もういちど見せてくれないか 連載漫画のようないちにち
 振り返る金木犀の舞う空にいつかどこかで逢えますように
 やりたいことがきみよりもできたんだ。プロポーズよりもどきどきしてる
 留守電を閉じ込め繰り返す真夜中「卵と牛乳買って帰るね」
 なんかきょう、異常なくらい超楽しい。とても素晴らしい休日みたいだ。
 恋人も知らない私の趣

もっとみる
【短歌 2016年】

【短歌 2016年】

“違ってる”ことは悪いことじゃない、ってわかってはいるけれど、でも 

「消しゴムを使い切ったら両想い」大人の恋にはその先がほしい 

「居たいからいるんだ。ここに」ひとりだけ きみの承認お構いなしに 

高尚な理念を掲げているけれど私の願いひとつ叶えて 

「そうか、あの頃の担任の先生はもう還暦か」ため息混じり 

私にはいったい何を代入すれば隣のあなたと結ばれるのか 

「着信音、設定変えて

もっとみる