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【赤毛のアン】の贈り物 ―Anne of Green Gables―



 
仕事の関係で、大阪に半月ばかり滞在していた頃
先輩から一冊の本をいただいた。
村岡花子訳、ルーシー・モード・モンゴメリー女史の
『赤毛のアン』である。



先輩とは言っても、むこうはずっと年上だ。
若かった頃の僕は世間知らずで、何かとお世話になった。




生まれ故郷を離れてなお
大都会の大阪で、まるで映画の一場面のような
銀杏並木の美しい ≪御堂筋≫ での再会が
この本をいただく経緯となった。
 


アンはいわゆる、みなし児である。
孤児院などを転々としたのち、思いがけぬ手違いから
アヴォンリー村の ≪グリーンゲイブルズ≫ に住む
老兄妹に引き取られていく。



やがて、アンは幸せに育っていくのだが
彼女の魅力的な生き方と、この作品の舞台となった
カナダの『プリンスエドワード島』の
美しい自然描写に、僕は新鮮な感動を覚えたものだ。
 


アンやダイアナ、マリラやマシュウが
本当に生きている人のように思えてならなかった。



あえて言うなら、アンの生き方は僕の理想である。
この世の中にあって、アンのような女性が
はたして どのくらい存在するのだろうか?


一冊の本との出会い——。
それは、ひとりの親友と巡り会えた時の
喜びと感動にも似ている。



本嫌いであったはずの僕に
本を紐解くことの楽しみを教えてくれたのは
『赤毛のアン』であり、先輩でした。
 


その先輩も今はどこで
どのように過ごしておられることやら?
先輩、とても懐かしいです。
故郷の相生でも、きっと今ごろは紅葉の見頃ですね。
 


『紅葉と言っても、さまざまな色彩があるの』
『赤に黄色に紫にオレンジ、それにサーモンピンク…』
『あれらはきっと、妖精たちがこっそりと描いていった絵よね!』



読書の秋、そして紅葉の美しい季節になると
僕は つい  思い出さずにはおれません。
先輩らしいお言葉の数々を……。



先輩のことだから
またいつものように瞳を輝かせて
周囲にたくさんの夢を、まき散らしておられるに違いない。
 


思えば先輩も、アンのような女性でしたね。
あとから聞いてわかったことですが
先輩には案の定、婚約者がいたらしい。



先輩が嫁がれる少し前に
『赤毛のアン』は僕に残してくれた
生涯忘れられない、素敵な贈り物であったと思う。
                          建礼門 葵



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♬BGM1曲目『イエスタデイワンスモア』/カーペンターズ
♬BGM2曲目『ジョニーエンジェル』/シェリー・フェブレー
♬BGM3曲目『想い出のグリーングラス』/キャンディーズ
♬BGM4曲目『屋根』/高田真樹子
♬BGM5曲目『青空の翳り』/太田裕美
♬BGM6曲目『振り向けばイエスタデイ』/太田裕美
♬BGM7曲目『君と歩いた青春』/太田裕美
♬BGM8曲目『三枚の写真』/石川ひとみ
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