見出し画像

五輪、日本の膿を出す荒療治

コロナ禍で1年延期された東京2020オリンピック競技大会も、2021年7月23日~8月8日の17日間の幕を下ろした。

東京五輪は日本に何をもたらしたのだろうか。無責任体質、パワハラ、セクハラ、女性蔑視、食品ロス…。私はさまざまな日本社会の膿出しにこそ、意義があったのではないかと思う。

LGBTQの観点から見ると、今大会に参加した1万1000名に及ぶアスリートのうち、クィア(Q=性的マイノリティ)であることを公表した選手は140名以上いたという。ウエイトリフティング女子87キロ超級には、五輪史上初となるトランスジェンダーの選手も出場した。このニュージーランドのローレル・ハッバード選手は競技後に引退を表明したが、今後の五輪のあり方やわれわれの意識変革に、大きな光を投じた。

そしてなだれ込むようにここから8月24日~9月5日の13日間、東京2020パラリンピックが開催される。

パラアスリートの身体能力には度肝を抜かされるだろうし、身体障害を持つもの目線で、都市や製品のユニバーサルデザイン化もさらに進むだろう。ここでもメダルの数以上に、われわれ自身の意識がアップデートされることにこそ、意義がありそうである。

筆者が20代前半ではじめて寺でワークショップを主催した当時、参加者に全盲の方がいた。それまでの人生で「目の見えない方」に接する機会がなかったので戸惑った記憶があるが、他の参加者のスムーズな介助によって、戸惑いは薄れた。思い返すとその戸惑いは「知らないものへの怖れ」のようで、知ることによって世界は開けた。今回のパラリンピックもそのような機会になれば良いなと願っている。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催によって、これまで蓋をされていた多くの事実や、声や、課題が、国際社会の目によって、白日の下に晒される。日本国内の内紛が、海外のジャーナリストたちによってレポートされていく。荒療治とも言える。浮き彫りになったさまざまな問題に対しては、それらを解決するようなムーブメントが加速していくと信じたいし、筆者も一助となって行きたいと思う。


Text by 中島光信(僧侶・ファシリテーター)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?