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育休プチMBA 10周年記念セミナー【採録③~今後の女性活躍支援への提言・多様性と管理体制の概念モデル】

育休プチMBA®は2024年7月に10周年を迎えました。

7月5日に開催した
「育休プチMBA」10周年記念セミナー 
育休取得者・復職者に向けた、企業の「活躍支援制度」の果たす役割とは

から、国保祥子の講演部分を3回に分けてお届けします。

【採録①~育休プチMBAの始まり】はこちら
【採録②~育休期間を利用した復職支援プログラムの内容と効果に関する研究】はこちら



復職支援プログラムを実施して分かったこと

復職者の不安、苦悩と罪悪感

国保:実際にワークショップをしている中で感じたことのひとつはですね、復職後の皆さんは本当に不安で、特にその不安の理由のひとつがですね、復職後はもう自分はメンバーとして期待されなくなるんだろうと考える人が非常に多かったです。その理由は残業だったり、イレギュラー対応ができなくなるから、メンバーとして不完全である。その不完全な状態で組織に戻るという罪悪感を抱えているというのが大きかったんですよね。

さらに会社側がいろんな配慮や遠慮をしてくれているんですけども、それが遠慮だという発想があまりなくてですね。「もう期待されなくなったんだな」という捉え方をされる方が多かったです。なので、もう期待されていない不十分なメンバーだという認識から、例えばキャリアに対する要望や意気込みがあったとしても、それを自分はもう口にする権利がないんだろうなということで口をつぐんでしまうということが分かりました。

「期待」を伝える

ただこれがですね、「いやそうではないですよ、会社は皆さんのこれからにもすごく期待をしてるんですよ」ということを伝えるとですね、面白いことに急に課題解決思考になりまして。例えば、期待されていないという捉え方をしている時はいかに迷惑にならないようにするか、先ほどのライフゲージを保護するというモードに入ってしまっていたところがですね、「実は期待されてるんですよ」ということを伝えるとですね、じゃあ、自分の働ける時間の中でどうやったら期待に応えられるか、というようにですね、問題解決といいますか、いかに資源を獲得できるかという風に思考が変わっていくということが確認できました。なので、企業の皆様はですね、育休中の人、そして育休から復職する人たちにですね、「期待をしているんだ」ということをぜひしっかりと伝えていただくことが重要です。それによって、よりどうやって貢献できるかということを考える復職者を増やすのではないかと思います。

企業横断的な外部研修の効果

ご参考までに、今回企業横断的に検証したので、この企業横断的であるところの効果についても少し触れさせていただくと、客観性が増すので愚痴になりにくいというところと、一般論として伝えることによって、プレッシャーやハラスメントに取られにくい、ということも同時に分かりました。

育休復職者に「会社として期待している」ことを伝え続けたい

研究まとめ

ここまでのまとめです。まず、プログラムを受講することによる効果は大きくふたつ。両立への懸念が減少することと、両立効力感と管理職効力感が高まるというところです。この両立効率感が高まることの効果が何かというと、自分の担当業務を遂行するだけではなく、チームへの貢献行動をとるというところと、あと補足になりますけれども、より挑戦的な仕事に取り組もうという行動も促進されていることが分かります。

育休プチMBAのような育休中の研修プログラムによって、復職後の不安の軽減と両立効力感、管理職効力感の向上ということが実現できるということが確認できまして、こういった[無限定性でない]新しい働き方、復職前とは違う働き方に移行する上での課題に対処するための個人的資源となる、HP、MPの獲得ということを可能にするということが分かりましたし、自分のHPやMPを伸ばす資源を獲得することによって、さらなる獲得行動というものが確認できるということも、本研究のまとめとなります。

育休期間を利用した復職支援プログラムの効果【まとめ】

今後の女性活躍支援への提言

では、最後に今後の女性活躍支援に関する提言です。両立効力感というものが復職後の活躍に影響しますので、復職支援としてはぜひこの両立効力感を高めるということを意識してほしいと思います。

また、育休からの復帰は[昨今]ほぼ100%になりますので、就業を継続するだけではなくて、復帰後のキャリアアップ、健全な昇進意欲を持てるような、キャリアアップを目的とした取り組みにシフトする時期かなと思います。

復職が当たり前になってくると、「なんとかなるでしょう」という無防備な復職も同時に増えてきます。無防備なこと自体は悪くはないんですけれども、復職後のつまずきが意欲の低下につながらないようにキャリアアップの引き付けだったり、視野を広めるような施策というのを意識していただくといいのかな、特に復職の当事者はもちろんなんですけども、その方たちを迎える上司にもそういった意識付けが有効ではないかと思います。

仕事にフルコミットできない人材というのは今後どんどんと増えます。なので、早めに働き方の多様性を前提とした組織管理体制にシフトするというのが、今後の少子化を生き抜く企業として大事なスタンスかと思います。

最後5つ目ですけれども、昨年から義務化されましたが、男性育休はですね、業務の効率化と職場のジェンダー平等意識を平等な意識に持っていく機会になりますので、ぜひそういった機会だと捉えて対応していただくといいと思います。

ワークシフト研究所 所長、国保祥子から今後の女性活躍支援への提言

多様性と管理体制の概念モデル

最後に、多様性と管理体制の概念モデルをご紹介して終わりにしたいと思います。こちらは、組織の生産性と多様性を図式化したものなんですけれども、組織の中で働き方の多様性が上がっていくと、生産性は一時的には落ちていきます。ですが、多様性を前提とした組織管理体制に切り替えることによって、むしろ生産性は上がっていくんですね。

もう少し具体的な話をすると、例えば、時短の方がだんだんと増えていく。組織の中の割合として増えていくときに最初は善意での対応になってくるんですけれども、そういった働き方をする人たちが増えてくると、だんだんと一部の方に負荷を与えることによる不満や遠慮コストというのが増大してきます。

ですが、時短の人たちが多いのであれば、そういった人たちを前提とした組織管理体制に切り替える、残業を前提としない働き方に切り替えることによって、むしろ生産性が上がるということが言われています。なので、早くこういった多様性を前提とした管理体制に切り替えるということが、今後は重要ではないかなと思います。

多様性と管理体制の概念モデル

私の方からの研究の紹介は以上となります。ありがとうございました。

ご清聴ありがとうございました!

※ [ ] は広報にて補足。一部再構成してお届けしました。


育休プチMBA 10周年記念ウェビナー【パネルディスカッション①】に続きます。






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