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【グリーンブック】信念を貫くピアニストを描いたアカデミー賞受賞作

こんばんは。
りんです。

最近、大人になるにつれて、映画の好みが少しずつ変化してきたなと気づきました。
昔はアクションとサスペンス映画ばかり観ていたのですが、徐々にSF、ヒューマン、ノンフィクションにウェイトをしめるようになりました。

ノンフィクションは中でも黒人差別を取り扱った作品が大好きで、苦渋を味合わされても、絶対の折れない姿を見るたびに、「自分はもっと頑張れる!」と思えるからです。
今回はそんなノンフィクションでも私が特に大好きな映画『グリーンブック』を紹介します。

あらすじ

クラブで用心棒として働いていたイタリア人のトニーは、長続きしない性格が災いして定職に就けず、家計を火の車に追い込みます。
大家族を養う為、彼は仕事を探し始めました。

そんなある日、高収入の仕事の話を聞いて面接に行くと、トニーが最も嫌う黒人の運転手の仕事を依頼されます。

黒人の名は、ドン・シャーリー。
彼は天才的なピアニストでした。

当初はプライドが邪魔をして仕事を断りましたが、トニーはお金の為に渋々2ヶ月間の演奏旅行の運転手を引き受けます。
黒人差別が最も激しいアメリカ南部を目掛けて、礼儀知らずの白人と天才黒人ピアニストが旅を始めます。

アメリカ南部は露骨な黒人差別の地域

当時の黒人差別は非常に露骨で残酷で、当時のアメリカ社会では常識になっていたことが描かれています。
グリーンブックというのも、黒人がアメリカ南部で泊まれる宿が記載されたガイドブックなのですが、そんな本があること自体おかしな話なのです。

そして以下はシャーリーが旅先で被った被害の数々です。
・バーで一杯飲もうとするだけで、白人に絡まれて暴行を受ける
・郊外にあるボロボロの黒人専用ホテルにしか泊まれない
 ※街中は白人だけが泊まれるホテルしかない
・ピアノを演奏するゲストであるにも関わらず、黒人という理由だけで家の外にあるのボロボロのトイレを案内されたり、レストランに入れなかったり、控室も物置を案内されたりする
・黒人は仕立て屋の試着室も使えない
・黒人は夜に外出するだけで、警察から職質される
・etc…

列挙したのはほんの一例です。
これは映画なので、実際はこんなものではなかったと思います。

本作は、こういった黒人差別がベースにある物語ということを最初に理解していただき、続きをお読みください。

お金ではなく、誰と働くかでシャーリーを選んだトニー

トニーの家は家計に余裕がなく、乱暴なところがあった為、マフィアに仕事を世話してもらっていました。
また、彼自身に黒人への差別意識があり、家のリフォームにやってきた黒人の業者が口をつけたグラスを捨てるなど、徹底した嫌いっぷりでした。

当然、シャーリーに雇われた後も、その態度は一貫していました。
最初はシャーリーの荷物すらトランクに運ばず、敬意を払わない、車では当然のように煙草を吸い、好き勝手に飲み食いをしてポイ捨てする素行の悪さです。

私が雇い主ならこの時点で彼をクビにします笑
しかし、シャーリーは黙って彼を観察し、ポイ捨てや万引きを見逃さず、トニーに倫理と法律を徹底的に守るよう説き伏せます。

相手のことを思って、真摯に向き合う姿勢がシャーリーの誠実さや清廉さを表していることが良くわかります。
そんなシャーリーのことが気に入らないトニーでしたが、ある日シャーリーのピアノ演奏を聴いて、本物の天才だと認めました。

その音色の美しさと凄さを誰よりも感じ取ったのです。
シャーリーを認めたトニーは長い旅路の車中で、シャーリーとたくさんのコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていきます。

トニーはシャリーが口にしたことがないファストフードのチキンの食べ方と味を教え、時には黒人を迫害するピンチから救いました。
そんな中、トニーは旅先で元々の仕事仲間に出会い、黒人の下で雇われてい
ることを知るや否や、運転手よりいい給料で雇ってやると誘われます。

しかしトニーは、シャーリーに「俺は辞めないよ。奴らにもそう話す。」といって彼を安心させました。
トニーはシャーリーの人柄や演奏を心から尊敬していたからこそ、お金に釣られることなく、彼を選びました。

私はこのシーンが本当に大好きで、お金以上の価値を生む「誰と働くか」を学びました。

黒人差別をなくす為にピアノの前に座るシャーリー

本作を通じて感じ取ることができるのは、本当にタフで、品位があり、気骨のあるシャーリーの人柄です。
南部での旅は黒人であるシャーリーにとって、本当に辛い試練でした。

一見するとピアノ演奏で賞賛を浴びる彼ですが、上述したことから酷い目に遭い続けます。
それでも彼は決して白人に屈せず、ピアノ演奏の旅を続けます。

そんな彼がトニーに唯一履いた弱音「教養人と思われたい金持ちは演奏を聴くが、それ以外の時の私はニガ—(軽蔑を含んだ黒人の意味)だ。それが白人社会だ。」は、本当に泣きそうになりました。
ではなぜ彼は、黒人差別の激しいアメリカ南部に自らピアノ講演に出向いたのか?

それは黒人が白人の前で登壇し、演奏する勇気が人の心を変えるからです。
この時代の黒人差別は本当に命に関わることです。

それでも勇気を振り絞って登壇するシャーリーを心底尊敬しました!
だからこそ最初にトニーの心を変え、シャーリーの一番の理解者であり友人として傍に居続けたのです。

トニーはシャーリーへの不当な扱いに怒り、暴力を振るうシーンがありますが、シャーリーは「暴力は敗北だ。品位を保つことが勝利だ。」と彼を諭します。
自分が不当に扱われている時に、なかなかこんな言葉は出てこないです。

本当に忍耐強い人だったのでしょう。
そしてしっかりした倫理観を持ち、トニーの軽犯罪を決して許さず、毅然とした態度で接して彼を変えていきます。

ですが、トニーが奥さんに宛てて書く手紙について、ロマンチックな表現を教える優しさも持ち合わせた彼は、お茶目な人物でもあるのです笑

史実では、シャーリーは『冥界のオルフェウス』と呼ばれ、その技巧は神の領域にあるとまで言われたそうです。
トニーは演奏旅行後、クラブの支配人になり、シャーリーとは生涯の友人として人生の幕を閉じます。

こんなに素敵な友人関係はありません。
そしてやっぱり本作を観る度に、彼らが乗り越えた試練に比べれば自分の目の前にある壁なんてちっぽけだなと思えると同時に、何も言い訳できないなと思います。

本当に勇気を与えてくれる映画です。
みなさんもぜひ観てみてください!

今日はここまで。
ありがとうございました。

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