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兄貴の声


僕はの兄はとても無口だ


しゃべったりはしゃいだりする姿を見たことない

もっというと泣いたり怒ったりも少ない。
とても感情表現が少ない、泣いたり怒ったりは一度も見たことがない。

多分僕は嫌われているのかほとんど口を聞かない


男兄弟だし2つ歳が違うからだと僕は思うが、友達をみるとそれは関係ないように見える。

まぁ歳が離れているほうが仲良くなる兄弟の方が多いとは思うけどその家庭の育ち方にもよるだろう。

でも異常なほどしゃべらない、僕はそんな兄貴がとても嫌いだ。
なぜならって?

それは僕が小学校3年生の時お遣いが月に300円しかなかった時の話だ、

ちょうど7月夏の始まりの気温の変化にも慣れていない時

その日は38°だった

サッカーの試合帰りの日曜日

あつくてあつくて頑張りきったすえに溶けきってナメクジのようになった僕は家に着く前にコンビニによりアイスを買ったんだ。

その時

1番すきだった「スイカバー🍉」を買ったんだ
あのスイカバーの口の中で広がる爽快さとチョコの甘みがとても大好きだった。

丁度おこ遣いが110円しかなかった僕は頭の中の自分と戦ったすえに購入した。
何気ない買い物だがその時の僕はとても良い決断をしたと今でも自分を褒めたい。

スイカバーを買い家に帰って冷凍庫の1番下に入れた
時間はもー
夜だった夜ご飯のあとのデザートに置いておいた。
それを楽しみにその日を生きていたようなものだ、、
夜ご飯を食べ、お風呂もはいって、いつもは100秒肩まで浸かるところをその日はスイカバーが美味しくなることを考え200秒浸かった。

やっとの思いで、食べようと冷凍庫を開けた1番下を見ると  ないんだ    僕はナメクジのように溶けかけている体をフルにつかって冷凍庫内をあさった、まるでシャケをとる熊のように手で冷凍庫内にあるものを出した。

力尽きた僕は疲れよりも怒りが来た誰が食べたのだと  父も、母も、聞いた

最後だ兄に聞いた

「食べた」

とあっさり言われた僕はプチンときた

「めっちゃ楽しみにしてたのに勝手に食べるなや」

ときつめの関西弁だ

「冷凍庫にあったから食べた、名前とかないし」

「いやわかるやろ1個しか無いねんからにいちゃんのじゃないことぐらい
かあちゃんが買ってくる時は喧嘩せんようにいつも2個あるけど一つしか無かったらわかるやろ」

「あーごめんお前のやったんか」

「買えよあれ俺の金で買ったんやからな」

「俺金ないわ」

この一言で僕はなぜか涙が止まらなくなり母に言いに行った。

「おにちゃんに自分で買ったアイス食べられたーありえへんくない??勝手に食べるとかー」

この時はもう号泣だ多分何言ってるかほとんどわからないくらいだ。

「そーなんかかわいそーに200円あげるからまた買っておいでー」

と母は200円をくれた
今思うと母はとても優しい

110円でありるのをわかってて200円くれた母は女神だ、、

兄はそれをジーと見てた

でも僕は受け取らなかった、

「あいつが食べたんやからあいつから金もらう」

と意地になっていたしかも兄のことを
「あいつ」呼びして笑

なんとなく気持ちはわかる笑

兄はその時僕の2歳年上で小学校5年生なので500円もらっていて、お小遣いあとだからまだお金はあるとずっと思っていて嘘をついてると思ってたのだ。

母と僕の会話を聞いていたのに兄はずっと無視

母があげようとしてた200円を兄はジーと見つめるだけだ

僕は冷蔵庫にあったサイダーを飲んで
2階にあがり「ふて寝」をした。

「おきーや」母の声がした、
朝だった学校の時間だった僕は昨日のことを嘘のように忘れていた、喧嘩したから兄とはしゃべらない兄弟では普通のことだが、僕はいつもどおり兄とはしゃべらない、
そんな兄だ気をつかって少しでも何かいってくれればとは思ったがそんな兄ではないだから嫌いだ。

そんな僕らも少し歳をとり
僕は小学校6年生 兄は中学生2年生になった、
突然のことだ体育の授業中先生が体育館の重たくて分厚いドアを「ゴーーー」と開けて

「シンジ君すぐ家かえって!!!」

と息を切らしながら先生が言った
僕のことだったあわてて先生のとこに行き
理由を聞いたすると父が倒れたと言ってた。

筋肉ムキムキでいつもヘラヘラしてる父は現場作業員で事故が付き物の仕事だ、僕はちょっとした怪我だと思っていた。
もっと詳しく聞くと

「今からお兄さんと2人で京都の病院までいって」

と母から連絡があったらしい

僕はその瞬間 父のことより兄と2人で京都まで行くのが嫌だった、僕は家に帰り病院に行く準備をした。
家が兵庫県だったのでそう遠くはないが小6の僕からしたら少しの長旅だ。
その日は珍しく兄の表情が不安そうだっただから僕は隣に座る兄に言った、

「どーせちょっとした怪我やろー」

兄はまた無視だ
でも僕はわかった不安そうな顔がすこし安心した顔になった。
そして病院についた。
病室のドアをあけると
 
母、おばさん、おばあちゃん、おじいちゃん
駆けつけた人みんな号泣だった

病室の床はすごく涙で濡れていた

母は父の手を握り

「私をおいてかんといてー」

と泣き叫んでいた、父が死を理解するより
母のその姿が怖くて僕は固まっていた、

どうすることもできなければ泣くこともできない、声もでない

兄と違って表情が豊かな僕は今までにない無に近い表情をしてただろう。
その時ふいに兄の顔をみた普段から無表情な兄は僕と同じ表情だここでも泣いてない、

すると母は
「まだ温かいからとおちゃんの手握って」
という

僕は頭が真っ白だ

父はただ寝てると思ってるからだ

だが母は号泣

動かない僕
兄がそっと僕の手をとるそして父の手を握らせる

僕はその瞬間理解した。
たった1人の父が亡くなったことに。

兄は僕の肩に手をまわしさすって父の手を僕と
一緒に握った。

するとすぐ冷たくなった、目をつぶってるだけのその人は最後に涙だけを ひと粒 流した。

このあと僕の記憶は無くなった。

そのあとの記憶だけがないのだ、

何日かしてお通夜がおかなわれた。
くる人々に

「おっきなったねー」

「お父さんそっくりやなー」

「がんばりよー」

「お母さん守るんやでー」

「あんま気よわしんときやー」と明るい人が声を掛けてくれるだがみんな表情は曇り顔は泣いてぐちゃぐちゃだ

兄はこの時も無表情だ、僕はずーと泣いていた

みんなが帰り

棺桶にもたれかかって寝ていた、
すると毛布がかかる感触がわかった、僕は起きて

「ありがとう」

と言ったすると兄だった、

兄は棺桶の父を見つめこう言った

「ありがとう1人しかいないとおちゃんまたね」と
僕はそれを聞いて涙がでてきた

兄もみたことない顔で泣いた。

初めて兄が泣いているところを見た

そして泣きながら話し始めた

「あん時のアイス俺、食べてないねん」

「とおちゃんが食べとってん
      んなら俺の方見て
  コウジが食べたことにしてくれへん?」

「って言われて明日、
2人分のハーゲンダッツ買ってくるからって言われてん」

「そんなん俺らのハーゲンダッツてさかあちゃんが、買い物行った時ねだっても高いからアカン!!」

「って言うやん?」

「やからやったーと思ってシンジと2人で
ハーゲンダッツ食べれるから俺嬉しくて
俺嘘ついてんなー」

「ほんならやで?とおちゃん忘れてて買ってこんかってん
俺何回も言うてんやで?
けど買ってこんくて
かあちゃんに言うって言うたら」

父  「男の約束やろ?」

兄   「って言うねんやばない?」

僕は思わずクスッと笑ってしまった、こんなしゃべる兄を見て

すると兄は声変わりしたての声で棺桶に向かって言った

「シンジにばらしたったし〜〜〜〜なんか文句あるんやったら言いにこいよおーーーい」

それでも父は眠っていた

その日から兄は僕とよくしゃべるようになった
父は僕らに仲良くして欲しくてこんなことをしたのかなーって?

あの時もし父が普通にハーゲンダッツを買ってきて食べていても話すことはあまりなかっただろうと思った、、
でもとても不器用だ兄と同じで

母はびしょびしょのハンカチをもって遠くから僕と兄を見守っていた。

「あ、あの冷凍庫サイダー俺のやったからな
シンジ100円あとで返せよ」

〜終わり〜







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