ことば遊びとショートショート44『タイムミシン』
妻の運転する車に乗る夫。
「なぁ、下から変な音がきこえないか?」
「この車は、タイムミシンといって特定の時間と現在を縫い合わせることができる装置なの。ほら、歴史をつむぐというじゃない? 過去も現在も未来も糸でできた一枚の布のようなもので、時計針とクロノ糸を使うことで時間の裁縫が可能なの」
「じゃあ、この音は……」
よく見ると、妻が踏んでいるのは足踏みミシンのペダルだ。
前方の景色を見た夫は驚いた。運転席側には超高層ビル、助手席側には太古の密林が広がっている。
「あなた、熱心に化石収集するほど恐竜がお好きでしょ」
「これはすごい。でも、こちらの時代に影響はないのかい?」
「安心して。この装置のドアを通じないとこちらの時代にはこれないの」
すると、妻は助手席側のドアを開けて、夫を突き落とした。そして、針を抜き、糸を切った。
助手席のシートには夫婦のかけ違ったボタンがひとつ落ちているだけだった。
(了)
【雑記44】
とにかく不器用なもので裁縫は苦手分野だ。
手縫いであろうがミシンであろうがとにかく糸が絡まる(天才的に)
圧倒的に手先及び指先のパフォーマンスが低い。
そもそも飽きっぽい性格だけどアイデアを出すのが好きでショートショートを書いている自分からすれば、手編みのマフラーやセーターを編むというのは長編小説を完成させるようなものだ。
手先の器用さもそうだが、並々ならぬ集中力とそこに費やす時間が発生する。ひたすら尊敬です。
自分はもの作りには向いていないが、針をペンに、糸をストーリーラインに置き換え、物語作りに励んで、あたたかい気持ちになってもらえたらなと思う。
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