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ことば遊びとショートショート38『炎交』

 最初はただの火遊びだった。

 年上のライターの火村とはマッチングアプリで知り合った。体を許し、お金を受け取るだけの関係。

 変化が生じたのは、私が炎上したときだ。

 互いに干渉しない約束だけど、その日の私は余りに落ち込んでいたらしい。

「どうした?風前の灯火みたいな顔して」

『実はネットで炎上してさ』

「ネットなんて少しの火種があれば、すぐに薪を焚べにくる奴ばかりさ。近づきすぎると火傷じゃすまない。距離をとればあったかいのにな」

『さすがライター』

 それにチャッカマンだ。普段、無口な彼の言葉は、私の心に火をつけた。

 それから、ホテルの後には焼鳥や焼餃子を食べにいくようになり、少しずつお互いのことを知っていった。


「お金はもう払えない。俺と付き合ってくれないか?」

 ある夜、ベッドの上で彼に告げられた。

 私の心は今、完全に焼き尽くされた。

『灰』

 一瞬、真っ白になった私は抱きしめられてまた燃えた。

 (了)

【雑記38】

 自主制作のショートショート2nd Album『ハートワーカー』より、本日は8曲目の『炎交』の制作背景と創作について書いていこうと思います。
 昨日の7曲目の『銭湯機』はこちらから。

 当初は『炎上交際』というタイトルにしようと思っていたところ、シンガーソングライターの日食なつこさんのツアータイトルと丸被りだったこともあり省略形に。

 誰かを好きになるきっかけ、友情から愛情へと変わるきっかけは思いも寄らない瞬間だったりする。
 恋のキューピッドとやらが先端がハート型の弓を放っているのかもしれない。
 付き合って、手を繋いで、キスをして、セックスをしてと、なんとなく段階が設けられているが、セックスから始まる突発的な恋だって世の中にはある。
 激しく燃えてすぐに消えてしまう火もあり、種火のような小さな火が徐々に燃え広がっていくこともある。
 よく恋愛を炎に例えたりするが、恋の数だけ炎の色も熱さも形も違う。

 1日の終わりに、愛する誰かのことを考えたり、一緒に過ごす時間は、なんて尊いんだ。
 そんなことを考えながら、冷めた自分のハートに火をつけて完成したお話でした。

 お読みいただき、ありがとうございます!

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