ことば遊びとショートショート33『ガソリンスタンドバイミー』
あれは十二歳の夏。
長い線路を僕は歩いていた。
この先に【したい】があると親が教えてくれた。したいことのない僕はその通りに歩いた。
時にヘビーに睨まれ、時に危機感車に急かされ、ガス欠寸前の僕の前に君が現れた。
君は僕の涙を拭き、心の吸殻を掃除し、元気を給油してくれた。
『沼を軽油しない?』
道なき道を示す君。
『イレギュラーも悪くないさ』
怖かったけど、僕のエンジンは唸った。
翌朝、僕は森の中を君と一緒に進んだ。
沼でヒルに噛まれると君が体を洗車してくれた。
『オーライ!』
いつも君が励ましてくれて心強かった。
遂に【したい】を見つけた。
線路をずっと歩いてきた末に押し潰された誰かの死体だった。
これが僕のしたいこと?
『君のしたいこと、本当はわかっているはずだ』
あっ……自分で蓋をした給油口を僕は思い出した。君はそこに勇気を満タンに給油してくれた。
ガソリンスタンドはもう動かなかった。
(了)
【雑記33】
自主制作のショートショート2nd Album『ハートワーカー』より、本日は3曲目の『ガソリンスタンドバイミー』の制作背景と創作について書いていこうと思います。
昨日の2曲目の『サヤ遠藤』はこちらから。
昨日に引き続き、このお話もタイトル先行型の物語でした。
タイトルのつけ方でいう方法の①すでにある言葉をもじる、です。
このタイトルができたと同時にぱっと思い浮かんだのが映画『Stand By Me』でした。
12歳の少年たちが死体探しの旅にでるあの名作が、同名曲の音色とともに蘇ってきました。
なので、素直にこのお話はオマージュ作品にしようと思いました。
まずは物語の中で重要な『死体』というキーワードを『したい』に置き換えました。
人生のあるタイミングで自分の『したい』ことは何だろう?と考えることが誰にもあります。
すぐに見つかる人もいれば、見つからなかったり、誰かに踏みにじられたり、自分の中で折り合いをつけて次に進んだりすることがある。
人生は『線路』のようなものでもあり、かといって決して敷かれた1本のレールではなくて、寄り道することもあれば、思いもよらなかった場所へと辿り着くことだってあるなぁ、と想像を広げました。
好きな作品のオマージュ作品だからこそ、元の映画の良さは残しつつ、自分なりのアプローチでぶつかる。
リスペクトする気持ちが物語を良い方向に進めてくれた気がしました。
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