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Life Cinematic 2004-2010

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2004年から2010年にかけて書いていた映画エッセイをnoteにお引越し。 不定期更新。時間があるときにまとめて載せていきます。
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記事一覧

9年の平等-カレンダー・ガールズ-

「美容院で髪を切るとき、いつもなんて言ってる?」 という友人の質問があまりに的を射ている…

田中優子
1年前

鯨のすき焼き-家族の風景-

我が家では、すき焼きといえば、鯨肉のそれを指した。 中学に上がる頃まで、私は牛肉のすき焼…

田中優子
1年前
3

理想的な一日-ボンボン-

床暖房に寝そべってレシピ本などめくっていたら、うとうとと夢の世界に迷い込んだ。 ふと気づ…

田中優子
1年前
1

日曜、a ma terrasseの前で-おばあちゃんの家-

習慣というものをあまり持たない私が、近頃、日曜の午後に自宅の近くのカフェに行き、そこで読…

田中優子
1年前

揺さぶり-WIZ/OUT-

10年ほど前は何かというと足を運んでいた気がするけれど、最近は、映画を観るときくらいしか渋…

田中優子
1年前
4

菊花抄-枯野抄-

わずかな刺激で崩れ落ちてしまいそうな白く細い花弁のかたまりを、両手のひらで注意深く包みな…

田中優子
1年前

男の幻想、女の幻想-サヨナライツカー

「僕、活字中毒なんですよ」 ぱっと見は、活動的で人懐っこく、いかにもやり手の営業マン。 けれど、会話の端々に、幅広い知識と物事の本質を見る知性を感じる。 その理由の一つが、自称「活字中毒」の習慣にあったとは、意外でもあったし、なるほどとも思った。 どういう本を読むのかと訊けば、「なんでも」なのだという。 話題の新書も読むし、自己啓発本も読む。 ビジネス書でも、小説でも漫画でも雑誌でもいい。 本当にどんな本でもいいらしく、それは「一人の時間がもったいない」からなんだそうだ。

沢と煙-激流-

柄にもなくアウトドアづいた勢いに乗り、誘われるがまま、「ラフティング&カヤック合宿」なる…

田中優子
1年前

Restart-拝啓、父上様-

先月、引越しをした。 居を移すのは4年半ぶりだ。 帰る道がいつもと違う。 開けるドアがいつ…

田中優子
1年前
2

空に吸はれし-一握の砂-

少し遠出をした日のことを振り返るとき、真っ先によぎるのは、必ずといって、帰り道で渋滞する…

田中優子
1年前
3

軽薄な一日-今夜はブギー・バック-

子どものころ、自分も然るべき年齢になったら、髪を長く伸ばして、体にぴったりとしたワンピー…

田中優子
1年前
2

銀座の夜と彼岸花-岸辺のふたり-

高校野球を最高潮にして、この暑い夏もようやく落ち着きを取り戻した。 少しばかり過ごしやす…

田中優子
1年前

くされ縁-ハンニバル-

平日午後7時半から8時頃にかけて、銀座8丁目界隈は夢みたいな空気に包まれる。 蝶のように美し…

田中優子
1年前

富士山と愚問-もののけ姫-

「なぜ山に登るのか」と問われ、登山家ジョージ・マロリーが「そこに山があるからだ」と答えたことは有名に過ぎる。 なるほどとも思うが、少々エキセントリックだとも思う。 富士山に登ろうと思うと言ったとき、それに対して「なぜ」と訊く人はいなかった。 「一度登らぬバカ、二度登るバカ」というように、富士山に登ることについて、改めて説明はいらない。 大方の日本人が「富士山に登ろうと思う」とき、その理由はただ一つ、「富士山が日本一の山で、私は日本人だから」だと、それで十分事足りる。 「富