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文芸やまなみ 佐藤亜弥美の紀行文・エッセイ

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山並みのあいまから。 恵那市笠置町に暮らす佐藤亜弥美のエッセイ・紀行文を不定期にアップしていきます。 日々の暮らしのこと、里山のこと、アフリカ旅のことなど。
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2022年2月の記事一覧

天国と呼ばれる国  レソト 【旅のエッセイ】

天国と呼ばれる国  レソト 【旅のエッセイ】

レソトの肩を越えて

 南アフリカ共和国のなかに、九州ほどのちいさな王国がある。ドラケンスバーグ山脈を南東に抱えるレソトという国は、四方を南アフリカに囲まれている。
南アフリカの海岸の都市ダーバンに滞在していた時に、旅する若いフランス人カップルに出会った。特に行く当てもなかったわたしを、レソトへの旅に誘ってくれた。カップルの旅行についていくなんて悪いな、と思っているわたしに、ふたりより三人のほうが

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人魚のいる海 ーモザンビーク・ヴィランクロにて【旅のエッセイ】

人魚のいる海 ーモザンビーク・ヴィランクロにて【旅のエッセイ】

 なぜヴィランクロに行きついたかは詳しく覚えていない。モザンビークは対岸にマダガスカルを置くアフリカ大陸の東側の海洋国で、インド洋に面しているため中世より海からの客人が多い。わたしは二十代だった。北部の世界遺産モザンビーク島、中部のベイラを経て、知り合いのいる南部の首都マプトにたどり着く前に一度インド洋らしい海を見ておきたかった。海岸沿いで豪雨に見舞われやすい古都ベイラから首都マプトまでは海岸線に

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