【産業医が教える】マネージャーが読むべき "部下のストレスマネジメント教科書(ラインケア)"

こんにちは。産業医/精神科医の野原弘義です。
『「上司と合わなかった」と言って辞める部下を減らす』セミナー講師を務めております。プロフィールに関してはこちらよりご覧ください。

普段行っているセミナーが非常に好評のため、一部をまとめました。このように教科書としてまとめようと思ったきっかけは、セミナー聴講していただいたマネージャーの方がこんなことを嘆かれたことから始まっています。

「自分の常識で判断するしかないので、不安しかない」

『あるマネージャーのつぶやき』

自分のキャリアの中でストレスについて学ぶ機会や、会社に入ってそのようなセミナーを受ける機会がないと、自分の常識で判断しなければならないのです。ちょっとしたことを知っておけば、部下の方の体調不良になることの防止や、ご自身のストレスマネジメントに役に立つと思い、この周辺知識の共有をさせていただきます。本来、もっとエビデンスをもとに話を展開できればよいと思いましたが、そうしますと公開までの時間がかかってしまうため、一旦経験をベースに書いています。

理解をしっかりしながら読むとなると、30分から1時間ほど時間がかかりますが、インターネットで調べて良さそうなサイトを探すあるいは本を読むよりは時間をかなり節約できることをお約束いたします。

ぜひ、周りで困っている方がいらっしゃいましたら、こちらのnoteを是非ご共有ください!

1.結論(3分で把握するストレスマネジメント術)

noteブログ全体の情報量が非常に多いため、時間がない方用に、簡潔にまとめました。全編をお読みいただく方もここを何度か読んで頭に入れた状態で本文を読むと、理解が深まります。

【覚えていただきたい公式】
ストレス = 度合い × 時間
度合い =「否定」+「浪費」
フレームワーク = 知識 + 経験

ストレスの公式

✔️「ストレス=度合いX時間」である。例えば、上司に怒られても(度合いは大)、10秒後に忘れていたら(時間は小)、大したストレスにならない。一方、仕事の進め方で悩み(度合いは小)、就業時間以外に考えてしまう(時間は大)と、ストレスは大きくなる。精神科受診する人は、ほとんどが後者である。

ストレスはある程度あった方がよい

✔️一定のストレスがかかっている方が、パフォーマンスは高く保てる(ストレスが全くない、あるいはストレスがかかりすぎていると、パフォーマンスは上がらない)

✔️ストレスは発生した後に、減らすことは極めて難しい。そのため、"不要なストレス"の発生を防ぎ、ストレスを適正範囲内に保つことで、高いパフォーマンスを叩き出す。

✔️人がそれぞれ持つ知識と経験がフレームワークを形成する。この「フレームワーク」の相違(コミュニケーションのすれ違い)で起きる「否定」と「浪費」によって、"不要なストレス"が発生する。

✔️「否定」は、「注意される、ねぎらいの言葉がない」などが該当する
✔️「浪費」は、「急に指示される、言われた通りにやったのにやり直しになる」などが該当する

✔️「否定」と「浪費」を減らすには、上司の指示内容を明確化することが大切(不要なストレスは、指示内容が曖昧なため発生する)
✔️部下へのストレスを減らすために指示内容を明確化することが、結果的に自分に対しての不要なストレスも減らせる

✔️不要なストレスを減らす具体的な解決策は、「取扱説明書の運用」「ToDoリストの可視化」「1on1ミーティング」である。どれも真新しいものではないが、フレームワークの相違を意識して、3つを行うことで相乗効果が生まれ、否定と浪費の発生を防げる。

✔️メンタルの強い弱いは、「ストレス = 度合い × 時間」の「度合い」より「時間」の方が大きな影響を与える(失敗したことをいつまでも考える、仕事のことでずっと悩んでいるなど)。

✔️考えることや悩むことの時間を減らすには、自信が必要。
✔️自信は自己肯定感 X 経験である。自己肯定感は幼少期の影響を大きく受けるので、上司が部下のメンタルを鍛えるためにできることは、経験を積ませることである。

✔️部下の体調面に関しては、不眠や食欲低下が部下に現れたら、要注意(食欲がない方は、即休職を考えなくてはならない)。

上記は、行動原理学を基に、ポイントだけを展開しています。「否定」や「浪費」によってなぜストレスが発生するかなどの背景を知りたい方は、本編をお読みください。


2.すでに発生したストレスは減らせないと心得よ

発生したストレスを減らそうと皆さん頑張りますが、、、

〜発生したストレスを減らす方法はあるのか〜

「ストレスを減らすにはどうすれば良いですか」という質問をよくいただきます。仕事でストレスを抱えているからこそ、藁にもすがる思いで聞いていただいているのだと思います。その際に、エビデンスに基づいた「早歩きの運動をする、自然の音を聞くなど」をお伝えしますが、改善する方が少ないです。

そのため、「仕事で抱えるストレスはあまりに大きく、エビデンスのあるセルフケアの力が及ばない」と、私は考えるようになりました。また、結局セルフケアでストレスにうまく対応出来ているのであれば、こんなに世の中の人がストレスに困るはずはないと考え、不要なストレスを発生させない方法のセミナーを始めました。

〜ストレスを発生させない方法を真剣に考える〜

産業医としてメンタル不調の方と1000名以上面談を行ってきて、メンタル不調になる方や退職される原因のほとんどが、人間関係(上司と合わなかった)でした。ハラスメントはなく、むしろ「上司は良い人だけど合わなかった」という驚きの発言を聞きました。

いろんな方の話を聞いていると、原因はコミュニケーションのすれ違いによりストレスが発生し、メンタル不調を来すことが判明しました。体調に影響を与えるのは、このすれ違いにより発生する小さいストレスの積み重ねでした。そもそもストレスが発生しないようにするためにはどうすべきかと考えるようになり、セミナーを行なっております。

〜このnoteで扱うストレス対応方法〜

このnoteでは、ストレス対応方法について全てを扱うわけではございません。

下図(図1)は、縦軸にストレス発生タイミング、横軸にストレスの度合いとし、世の中にあるセミナーや記事を分類したものです。体調に影響を与えるのは、このすれ違いにより発生する小さいストレスの積み重ねであることに気付いたため、このnoteでは②と③に関して触れていきたいと思います。

このnoteでは②と③に焦点を当てる(図1)

①ストレス対策セミナー(左上)…小さいストレスが発生した後に行えるストレス対策(運動、マインドフルネス、友人とご飯に行くなど)
②産業医セミナー(右上)…体調不良時のサインに気づく方法(食欲低下と不眠があったら危険)とその対策方法
③ストレス発生防止セミナー(左下)…体に不調を来す小さいストレスを発生しないようにする方法

④ハラスメント対策セミナー(右下)…ハラスメント(パワハラ、セクハラなど)に関する知識セミナー

このnoteでは②産業医セミナー(右上)にも触れながら③ストレス発生防止セミナー(左下)を中心にお話ししていきます。そのため、左上や右下の話を期待される方の期待にはお応えできないことをご了承ください。


3.ストレスの理解は行動原理学から始まる

ストレスについて整理してみる

ストレスがなぜ発生するかを理解するためには、「行動原理学」への理解が不可欠となります。

行動原理学は、
『本能的な行動(人が無意識に取ってしまう行動)』を解明する学問です。本能的な行動は、「生存確率をあげる」や「子孫繁栄をさせる」ために最適化された行動です。

行動原理学の定義

例えば、大きな音がしたときに皆さんどんな行動をされていますか?
振り向く、肩をすくめるなど色々あると思いますが、だいたい皆さん同じような行動をするのではないでしょうか。

これは大きな音がした時に、振り向いたり、肩をすくめた方が生存確率が高かったため、皆さんの本能に埋め込まれているのです。

そして、人類の歴史を振り返ると、我々の本能的な行動は、狩猟採集時代に完成したことが分かります。

人類が誕生した年代に諸説ありますが、600万年前に人類が誕生し、狩猟採集時代は1万年前まで続いてました。つまり、人類の歴史の99.8%は狩猟採集時代です。

そのため、本能的な行動は、狩猟採集時代で有利に生存することや子孫を残すことに最適化されていると考えるのが自然です。

一見合理的とは思えない行動も、実は行動原理学的に考えると合理的だと考えられることが世の中には多々あります。

行動原理学視点で考える身近な例

〜なぜ、ダイエットは難しいのか?〜

目の前にお菓子や食べ物があると、なんとなく食べてしまう人は多いのではないでしょうか。人の食に対する欲はとても強いです。

狩猟採集時代、目の前に食べ物があった時に、食べる人と食べない人違いを行動原理学的に考えてみましょう。

狩猟採集時代は、いつ食べ物が手に入るかわからない時代(冷蔵庫もないため保存することもできない)です。そのため、

<目の間の食べ物を食べる人>→生存確率が上がる
<目の間の食べ物を食べない人>→生存確率が下がる

が成り立ちます。

目の前に食べ物があった時に食べた方は、生存率が高かったのです。
ですので、現代人はダイエットに苦労します。目の前に食べ物があった時に食べるように本能にプログラムされていますから。

〜なぜ、汚い場所を不快に感じるのか?〜

多くの人が汚い場所を見ると、不快に感じると思います。
こちらも行動原理学的に考えてみましょう。

日本においては医療の向上(抗菌薬の登場)や、衛生環境の改善により感染症への脅威は薄れました。しかし、低所得国(発展途上国)は、感染症が死因の大部分を占めます。
狩猟採集時代も現在の低所得国と同様において、感染症は非常に怖い病気でした。

汚い場所は、一般的に細菌などが繁殖しており、近づくことにより感染するリスクが高まります。そのため、汚い場所を好まなかった人は生存確率が高く、我々の本能として受け継がれております。

〜扱う行動原理〜

仕事のストレスをマネジメントするために必要な行動原理学の原理は、「認識」「否定」「浪費」「想像」「比較」「回避」です。
※行動原理学は、考え方をシンプルにするため、二字熟語を使用して表現します(否定や浪費もそうです)。

このnoteでは、「認識」「否定」「浪費」「想像」を取り扱います。

それぞれを把握することで、なぜストレスが発生するかが明らかになり、対策も明確になります。


4.ストレスはパフォーマンスを上げる?!

〜ストレスがないことは本当に良いことか?〜

まずは、ストレスという言葉を聞いて、みなさん何を思い浮かべますか?
10個考えてみてください。

「思い通りにならない」
「待ち時間が長い」
「スマホがネットに繋がらない」
「PCがフリーズした」
「上司に注意された」
「仕事量が多い」
「周りの人が手伝ってくれない」
「評価してもらえない」
「人間関係がうまくいかな」
「残業を任された」、、、

など、人によってストレスという言葉を聞いて思い浮かべることは違います。10個書いていただいたのを見返すと、仕事に関係するものが多いはずです。

「ストレスなく働きたい」と無意識のうちにそう思われている方は多いです。しかし、「ストレスなく働ける」ことは、本当に良いことなのでしょうか?

〜ストレスは適度にあった方が良い〜

「ストレスは人生のスパイスである」
こちらは、生理学者のハンス・セリエ博士の言葉です。そして、実際にこれを証明したのが、ヤーキーズとドットソンが提唱したヤーキーズ・ドットソンの法則です。

最高のパフォーマンスを出すには適度なストレスが必要(図2)

図2は、縦軸にパフォーマンス、横軸にストレス負荷となっています。この法則は、「最高のパフォーマンスを出すには適度なストレスが必要」と結論付けたものです。ストレスが少な過ぎても、多過ぎてもパフォーマンスが下がります。

皆さんにも思い返していただくと、納得する経験が実際にあるのではないでしょうか。
例えば、「10分で書けそうなメールを10時間かけて送って欲しい」と言われると、やる気が上がりませんよね。逆に「書くのに10分かかりそうなメールを3分で書いて欲しい」と言われると誤字脱字や伝えたいことが書けるかななど不安や焦りが生じて、パフォーマンスの維持を続けるのに困るのではないでしょうか。

最適なパフォーマンスを出すためには適度なストレスが必要なことがわかります。

〜ストレスを適度にするには、"不要なストレス"を減らせ〜

「部下にストレス負荷をかけて成長してもらいたいけど、体調を崩したらどうしよう」

そのように悩みながら、普段部下へのマネジメントをされているのではないでしょうか。

ストレスは日々の積み重ね(総和)で溜まっていきます。下図のようにストレスが増えていくと、右にシフトしていきます。同じことをしていても人によって、ストレスの度合いが異なる点がマネジメントの難しい点です(青い方とオレンジ色の方で感じ方は異なります)。

青色の人とオレンジの人でストレス負荷が異なる(図3)

このような背景を考えると、部下へのストレス負荷の調整は一見難しそうに見えます。しかし、難しすぎる故、上司が行えることはたった2つしかございません。

一つは、不要なストレスを減らすように心がけること、もう一つは、時間期限を適切に設けて、適度なストレス負荷を与えることです。

不要なストレス減らすことでを、位置を右側から左側にシフトさせ、パフォーマンス最適範囲内に収めることが可能です(図3)。部下が不要なストレスを抱えていて右側に位置するようであれば、この不要なストレスを減らすことが必要となります。不要なストレスは否定と浪費を減らすことですが、詳細は後述します。

もし、部下が左側に位置するようであれば、締切など期限の調整によりストレス負荷を意図的に増やして、パフォーマンスを最適範囲内に調整することが可能です。少し追い込まれてるくらいの期限を設けることで人の集中力を上げることが可能です(ご自身に対するマネジメントも同様になります)。

以上のように、不要なストレスがかからないようにマネジメントをして、期限の調整で適度に部下に負荷を与えて、成長を促せるようにしましょう。

〜人によってストレス負荷が異なるのはなぜ?〜

上司に注意されても、人によって受けるダメージが異なる理由を考えていきたいと思います。ストレスがどのような要素で成り立っているか考えると答えが見えやすくなります。

結論
「ストレス = 度合い × 時間」

ストレスの公式

例えば、上司やクライアントから怒れることは、度合いとしてはとても大きいです。しかし、10秒後に忘れていれば、大したストレスになりません。反対に、仕事のことで悩むことは度合いとしては小さいですが、勤務終わりや土日に考えてしまうと時間が長くなるため、最終的にストレスは大きくなります。

小さい度合いのストレスより、大きい度合いのストレスを受けた方に注目されがちですが、大きなストレス1回よりも小さいストレスが連続で続く方が体への影響は大きいです。一回大きく怒られて、メンタル不調になり、休職する方はほとんどいません(一回大きく怒られて体調を崩してしまった方は大抵小さいストレスを積み重ねています)。

ここで注意しなくてはならないことがあります。ストレスは仕事以外にプライベートでも発生することです。明らかに仕事のストレスは少ないのに体調を崩される方は、プライベートのことで問題を抱えています。ストレスは総和でどんどん溜まっていくため、プライベートでのストレスも軽視できないことを覚えておいてください。


5."不要なストレス"が悪さをする

否定と浪費を防ぐことで、不要なストレスを減らせる

〜ストレスの度合いは否定か浪費で決まる〜

ストレスは度合 × 時間で決まり、ストレス量は、ストレスの総和であるというお話をしました。わかりやすく式にまとめると

「ストレス量 = ストレスの総和」
「ストレス = 度合い × 時間」

ストレスの公式

となります。これらの式を踏まえると、「ストレス量を少なくするにはストレスを減らす。そして、ストレスを減らすには、度合いや時間を調節しなければいけない。」ことがわかります。

この「度合い」は、「否定」か「浪費」で構成されております。つまり、仕事上では「否定」か「浪費」のどちらかが起こり、ストレスが発生しています。

「否定」と「浪費」についての理解を深めるために、改めて行動原理学について考えていきたいと思います。

〜「否定」と「浪費」を行動原理学で考えてみる〜

なぜ、人は否定と浪費を嫌うのか(恐れるのか)、行動原理学的に考えてみましょう。まずは行動原理学の復習です。

行動原理学は、
『本能的な行動(人が無意識に取ってしまう行動)』を解明する学問です。本能的な行動は、「生存確率をあげる」や「子孫繁栄をさせる」ために最適化された行動です。

行動原理学の定義

上記を踏まえて、否定について考えてみます。
狩猟採集時代における否定は、群れから追い出されることを意味します。そして。それは「死」を意味していました。
一人で食料を得るのは難しいですし、寝ている時に襲われるリスクも高くなります。

否定されることがストレスになる人と、そうでない人の行動パターン 違いを見てみましょう。

<否定されることがストレスになる>
否定されることでストレスになる→否定をなるべくされないように立ち振る舞う→群れに居やすくなる→生存確率が上がる

<否定されることがストレスにならない>
否定されることでストレスにならない→否定をされても気にしない→群れに居づらくなる→生存確率が下がる

「否定されることがストレスになる」能力を持っている人の方が生存確率は高かったため、現代人には、否定がストレスになるように本能として備わっています。

「人は自分自身が否定されていると感じるとストレスになる」

次に浪費を見ていきます。

浪費に関しては非常にシンプルです。
資源や時間を浪費してしまうと、それだけ生存確率が下がります(だから、人はムダを嫌います)。食べ物もそうですし、衣服を作る際に無駄を許してしまうと、衣服が作れず寒さに耐えられず、亡くなってしまっていたかもしれません。

以上のように、日常生活で否定されることや浪費を感じることは、ストレスになるように本能に組み込まれています。その結果、否定や浪費が発生しないように、人間は行動するようになっています。

〜否定が仕事で発生する例〜

それでは具体的に仕事で否定が発生する例を見ていきましょう。
こちらは上司が部下にメール送信をお願いしたケースです。

図4

ケーススタディ
上司:メール送っておいて!
部下:分かりました!
ーーー部下がメール送信ーーー
上司:なぜ、次の商談につなげなかったの? →ここで否定が発生します。

例え、上司としては、とても柔らかく言っていたとしても、部下の立場からすると注意されたと感じてしまう方や、ひきずってしまう方もいます。そのため、否定が発生するのです。

上司と部下の頭の中で何が起こっているか見てみましょう。

上司と部下でフレームワークに違いがある、、、

上司の頭の中には、「メールを送る」という仕事に紐づけられたフレームワークが存在します。このフレームワークは、その人の知識と経験から成り立ちます。

一方、部下の頭の中にも、同様に「メールを送る」という仕事に紐づけられたフレームワークが存在しますが、最後の項目(上司は「次の商談へつなげる」、部下は「スピードを重視する」)が異なります。

この場合、上司と部下のフレームワークの相違により、部下は上司から注意を受けてしまうのです。これが否定であり、この否定がストレスの発生につながります。

例え小さい否定であったとしても、この否定の積み重ね(総和)で、「この上司と合わない」と部下が感じるようになります。さらに、否定の回数が多いとよりストレス負荷がかかるため、パフォーマンスの低下、体調不良、離職や休職を引き起こします。

〜気が利く部下と、空回りする部下の違い〜

フレームワーク(知識+経験)という概念を使うと、実はできる部下と空回りする部下の説明が簡単につきます。あなたの周りでも空回りしてしまっている部下はいませんか。その部下はちょっとしたことに気を付けることで大きく改善する可能性があります。

気が利く部下と空回りする部下の頭の中をのぞいてみましょう。

フレームワークの一致率で説明がつく

気が利く部下のフレームワークは上司と完全に一致していますが、空回りする部下は一致しておりません。

このようにフレームワークの一致率で、気が利く部下と空回りする部下の違いが説明できます。周りで空回りしている部下がいましたら、このフレームワークを合わせにきて欲しいというお願いを部下にすると、仕事がとてもしやすくなりますね(後述します、取扱説明書の運用をすると解決することができます)。

(余談:なぜ、否定が発生するか行動原理学的に考えてみる)

行動原理学に興味ない方はこちらを飛ばしていただいても構いません。
フレームワークは知識+経験とお伝えしました。このフレームワークですが、行動原理学の「認識」と大きく関わっています。

<行動原理学:認識>
「人は頭の中にあるフレームワークに照らし合わせて、様々な出来事を "認識" する」

人は、同じものを見ていても、異なった認識をします。例えば、月の模様(クレーター)を見た時に、その模様は何に見えますでしょうか?
日本で育った方は、「餅つくうさぎ」と答えます。しかし、この見え方は国によって異なります。南ヨーロッパではカニ、インドではワニ、中国では薬草を挽くうさぎに見えると答えるのです。

この違いがなぜ生まれるかというと、
人は頭の中にあるフレームワークに照らし合わせて、様々な出来事を認識しているからです。そして、このフレームワークは、知識と経験から成り立っております

餅をつく文化がない国は、当然餅に関する知識や経験もないため、餅つくうさぎと言う発想にはならないでしょう。反対に当時ワニがいない日本では、月をワニに見えるとは、ならないことが良くわかると思います。

頭の中にあるフレームワークで、様々な出来事を認識することで脳のエネルギーの消費を抑えて素早い判断ができるようになり、生存確率が上がったため、現代の我々に受け継がれています。そのため、行動原理学的に「認識」がとても大切な概念なのです。

〜浪費に関して〜

「ストレス=度合い×時間」で成り立ち、度合いは否定と浪費で構成されると説明してきました。ここで、もう一つの構成要素である浪費について深く理解するために、まずは行動原理学の「想像」を説明します。

<行動原理学:想像>
「人は行動する前に必ず "想像" する」

行動原理学「想像」

皆さんは、想像という言葉を普段何気なく使っていると思います。
「この仕事がうまくいくのが想像できない」
「この人と付き合い続けるのが想像できない」

想像と行動には密接な関係があります。
「人は想像することができないと行動を起こすことができない」のです。

では、この想像できるできないの違いはどこから生まれるのでしょうか。

人が行動を起こすためには、「フレームワーク(知識+経験)→想像→行動」の流れを辿ります。

そのため、フレームワーク(知識+経験)がないと、想像ができないため、行動が止まってしまいます。

例えば、仕事を部下にお願いしていたけど、全然進んでいなかった。これは部下のフレームワークが不足しており、想像できず結果として行動ができていなかったため起きてしまいます。

それでは、行動原理学「想像」を踏まえて、浪費に関して説明していきます。否定に比べて少しわかりにくいので、日常生活で起こる例を交えながら説明していきます。

<浪費でストレスが発生する背景>
「行動前に描いた"想像"」と「実際の"行動"」を比べて浪費していると感じるとストレスが発生する

浪費には大きく2つ「時間浪費」と「資源浪費」に分けられます。まずは時間浪費から見ていきましょう。

〜時間浪費について〜

時間浪費は、「行動前に描いた"想像"」と「実際の"行動"」を比べて、時間を浪費していると感じるとストレスが発生します。身近な例で言えば、レジの待ち時間が挙げられます。

自分が想像している時間より待ち時間が長いとイラついてくる

左は、青い人が頭の中でレジの待ち時間の予想を無意識に思い描いているものを表現した画像です。2分待てば、自分の番に来るだろうと想像しています。しかし、実際は8分かかりました(右)。そのため、この人は「6分時間を浪費した!」と感じて、ストレスが発生するのです。これが待ち時間でストレスが発生するメカニズムとなります。

では、仕事ではいかがでしょうか。こちらは、部下が上司に確認をお願いしましたが、一向に進まなかったケースです。

自分の時間を浪費していると感じるとストレスが発生

ケーススタディ2
部下:部長、この資料の確認をお願いしても良いですか。
上司:了解!後で見ておくね
ーーー1時間後ーーー
ーーー2時間後ーーー
部下:先方にメールが送れないんだけどな、、、 →ここで浪費が発生します。

このように上司の方が仕事を進めず、自分の時間が浪費されていくと、ストレスを感じていきます。

〜資源浪費について〜

浪費には大きく2つ「時間浪費」と「資源浪費」とお伝えしました。続いて資源浪費について説明します。資源浪費は、「行動前に描いた"想像"」と「実際の"行動"」を比べて、資源を浪費していると感じるとストレスが発生します。ここでの資源は自分のリソースを指します。

下図(図9)は、身近な例として、起床時から家を出るまでを表しています。

家を出るまでに行うことが一つ増える(図9)

左は起床後、顔を洗って、朝食を食べて家を出る、いつものルーティンを表したものです。それに対し、右は起床後、顔を洗い、朝食をこぼす、床を拭く、そして家を出るという流れになり、床を拭くという動作が一つ増えているのがわかりますよね。時間がない中で自分の行うことが増えるのは、限られた時間の中でこの自分の資源を浪費していると同じことなのです。

仕事の例として、上司から部下に対しての連続的な急な指示が代表的なものが挙げられます。一例を図10に載せます。

追加で立て続けに指示が来ると、、、(図10)

ケーススタディ3
上司:A社にメール送っておいて!
部下:分かりました!
上司:資料の印刷もよろしく!→ここで浪費が発生
上司:あと、B社にもメール送っておいて!→ここで浪費が発生

「A社にメール送っておいて」と上司から頼まれた後、立て続けに指示が2つ来ています。このケーススタディだけで見ると、ストレスとしては小さく思えます。しかし、忘れてはいけません。ストレスは総和であることを今一度思い出してください。

ここで頭の体操をしてみたいと思います。それぞれ、否定、時間浪費、資源浪費、どれにあてはまるか考えてみてください。

いかがでしたでしょうか。この場合、否定と答えた人もいれば、浪費と答えた人もいるのではないかと思います。
否定と答えた方は、クレームはある種自分への否定となるので、そう捉えるのは自然です。また、時間浪費と答えた方は、そのクレームを言われている間が時間の浪費と考えたと思います。資源浪費と回答した方は「クレームの後処理が大変だ」と感じていたと思います。このように仕事で起きているストレスは、人によって異なります。また、一つのストレスに対して否定、時間浪費、資源浪費の全てが入っている混合型もあるので要注意です。


6.身近な仕事術で"不要なストレス"をなくせ!

不要なストレスを減らす方法は、いくつかあります

ストレスは否定と浪費の混合型で起こることを前の章で説明しました。
否定と浪費を防ぐには、それぞれ何をすべきか考えていきます。

〜否定を防ぐには?〜

否定の解決策>
①指示を出すときは指示内容を明確化する
②お互いにフレームワークの相違を把握する

お互いのフレームワークの相違による認識のずれにより、否定が発生しました(ケーススタディ1参照)。そのため、お互いのフレームワークの相違が起こらないように、指示内容の明確化と、お互いのフレームワークを把握することが大切です。

〜浪費を防ぐには?〜

<浪費の解決策>
①指示を出すときは指示内容を明確化する
②指示を出すときは可能な限りまとめて出す
③お互いにフレームワークの相違を把握する

①と③に関しては、否定を防ぐための解決策と変わりません。フレームワークの相違の解消や、指示内容が明確化されていないと、作業の手戻りが発生し、浪費が生まれます。②に関しては指示が立て続けに来ると、浪費を感じる頻度が増えます。

〜具体的な解決策の紹介〜

否定と浪費を防ぐ解決策は
①お互いにフレームワークの相違を把握する
②指示を出すときは指示内容を明確化する
③指示を出すときは可能な限りまとめて出す
が達成できていれば、可能になります。

具体的な解決策は、企業規模や業種によって大きく異なります。

このnoteでは、オフィスワーク勤務が主となる企業様へご提案させていただいている3つの解決策(取扱説明書、ToDoリスト、1on1ミーティング)のうち、取扱説明書に関して詳細を説明させていただきます。

改めて復習ですが、フレームワークの相違で否定や浪費による不要なストレスが発生しました。

上司と部下でフレームワークに違いがある、、、(再掲)

上司と部下のフレームワークのズレをなくすには、上司のフレームワークが可視化されていれば、部下は否定や浪費による不要なストレスを減らすことができます。こちらの例で言えば、次の商談へ繋げることを上司が重視していることを可視化されていれば、部下は不要なストレスを減らせることができました。

フレームワークを可視化できるのが、取扱説明書です。

取扱説明書は、ご自身(上司)がどのような人物か、言語化していただきます。参考までに私の取扱説明書の一部を載せさせていただきます。

野原の取扱説明書

2.好ましいコミュニケーション

基本、iPhoneは集中モードにしているため、Slackやメールなどの通知には気付きにくい(その代わり意識的にメッセージの確認をするようにしている)。PCを開いている時は、通知に気付きやすい。

スマートフォンで気軽に返せるもの(簡単な日程調整や質問)は、数時間以内に返信できることが多いが、PCで行った方が効率の良いもの(いくつかの日程候補を上げる、質問に対してしっかりとした回答が求められるもの)は基本的に夜返すことが多い。

移動が多いが、昼ごはんを食べる時に必ずPCを開く。そのため、午前に送ってもらえれば、PCでなければ返信しないものも昼に返信できる。 EメールとSlackの対応に大きな違いはない。 読むのは基本的に早い。

分からないことがあればすぐに聞いてほしい といっても、なかなか話しかけづらいことがあると思うので、10時から11時であれば、いつでも聞いてください(タスクの処理をしているだけなのでそんなに集中力がいらないため)。ただ、13-14時は集中したいので、緊急性がない場合は聞かないでほしい。

野原の取扱説明書の一部

他にも、「どんな目的でどんなMTGをすべきか」や「業務の取り組みで期待すること」などの項目を取扱説明書に盛り込んでいきます(これらの項目は、業種や企業文化によって異なります)。

人は気分によってフレームワークの内容が変わってしまいます。フレームワークが気分によって変わり、否定が発生すると、部下目線では「理不尽」と見えます。この取扱説明書を作成することで、理不尽と思われる機会を減らすことができます。

実はこの取扱説明書ですが、amazon、Google、NIKKEI、KDDIなどに電子決済システムを提供しているStripeの代表取締役が、社員全員に取扱説明書を作る様に指示し、業績があがったと言われています。

取扱説明書を作成することで、フレームワークの相違がなくなり、不要なストレスの発生を防げます。そして、それが個人のパフォーマンスの向上につながり、組織全体の業績アップを達成することができるのです。

〜それでも、指導しなくてはならないときはどうすれば良い?〜

否定と浪費を恐れて、全く注意ができないとなると仕事になりません。実は、否定や浪費に限らず、度合いを減らす方法が一つだけあります。
それは心の準備をさせることです。
何かを受け入れなくてはならないときに事前に言われているのと、当日急に言われるのでは心への負担は大きく異なります。そのため、何か指導をしなくてはならないときは事前に「今度のミーティングでこの前の商談のフィードバックをさせてもらうね」など具体的にお伝えすると良いですね。本人も心の準備が出来て、度合いが減り、ストレスを減らせます。

あくまで否定と浪費の発生を防ぐことは絶対ではなく、不要なストレスを減らすために必要な手段として捉えてください。


7.部下への不要なストレスを減らすことが、自分のパフォーマンスを上げる

部下のストレスを減らすことは "あなた(上司)"にもメリットがある

ここまでは、部下への不要なストレスを減らす方法について、説明してきました。とはいっても、皆さん(上司)にメリットがないと、なかなか行動を起こそうとは思えないと思います。そのため、部下への不要なストレスを減らすことが皆さんにどのようなメリットがあるかお話ししてきます。

まずはこちらのケーススタディをご覧ください。

ケーススタディ3
上司:さっき頼んだ資料の印刷終わった?
部下:先にクライアントへのメールを打っていました→上司に浪費が発生
上司:資料が印刷されていないと、みんな仕事進められないじゃん。優先順位を少しは考えて(怒)→部下に否定が発生

部下(右側)を見ていただきたいのですが、否定によるストレスが発生しております。そして、よく見ていただくと、実は上司(左側)にも浪費によるストレスが発生しているのです。資料が印刷されていないことにより、自分(上司)の仕事が止まってしまい、時間浪費が起きてしまっています。

部下から、上司の方への否定は発生しにくいですが、浪費は日常茶飯事に発生します。

「仕事を頼んでいただけれど、思った以上に進んでいなくて、イライラした(時間浪費)」
「部下が良かれと思ってやったことが、逆に先方に迷惑をかけてしまい、謝罪をしなくてはならなくなった(資源浪費)」
「頼んだ仕事が全く違う方向に進められていた(時間浪費&資源浪費)」

浪費が起きている例

部下を持ったことがある方はそのようなことは一度はあるのではないでしょうか。

否定や浪費が起きないようにすると、下記のように変化します。

(何も意識しない時)
上司:資料の印刷をなる早でお願いね。
上司:さっき頼んだ資料の印刷終わった?
部下:先にクライアントへのメールを打っていました→上司に浪費が発生
上司:資料が印刷されていないと、みんな仕事進められないじゃん。優先順位を少しは考えて(怒)→部下に否定が発生

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

(否定と浪費が起きないようにした時)
上司:資料の印刷を第一優先でお願いね。
上司:さっき頼んだ資料の印刷終わった?
部下:終わりました
→上司への浪費と、部下への否定の発生を防げる(不要なストレスを発生させない)

以上のことから、フレームワークのズレをなくすことで部下への不要なストレスを防ぎ、最終的に自分自身の不要なストレスを減らします。そして、不要なストレスを減らせることが、パフォーマンスを上げることに繋がります(ヤーキーズ・ドットソンの法則)。

フレームワークのズレは、上司の指示の明確化、そして前の章でお伝えした取扱説明書の導入をしてみてください。必ず、皆さんのパフォーマンス向上に貢献してくれます!


8.メンタルの強い人は、「〇〇」が少ない!

鋼のメンタルを持っている人は何が違うのだろうか?

部下を指導する際にもう一つ気になるのが、メンタルの強い部下と弱い部下がいる点です。この違いがなぜ生まれるかを理解して、指導方法のヒントにしてみてください。

「ストレス = 度合い × 時間」のうち、メンタルが強い人は、度合いを小さくしているのか、それとも考える時間が少ないのかを考えると答えが自ずと見えてきます。

度合いを減らす方法は、事前に心の準備をすることしかないとお伝えしました。部下自身でできることは、最悪の事態や精神的な負担を事前に想定することに限られています。

しかし、私は、心の準備をすることが、メンタルの強い弱いに大きな影響を与えないと考えています。
例えば、心配性の方は、常に最悪の事態や精神的な負担を事前に想定するため(心の準備をしているため)、「度合い」を減らせていますが、メンタルが弱い傾向にあります。それは、度合いを減らせていても、結局心配性で考える「時間」が長いため、結果的にストレスを溜めてしまうからと考えます。

一方、メンタルが強い方は考える時間が、弱い人に比べて短いため、抱えるストレスが少なく、結果的にメンタルが強く見えることがわかります。

つまり、受ける度合いは皆さんほとんど変わりませんが、メンタルが弱い人は長く考えてしまい、ストレスが大きくなります。メンタルが強い人は、上司に注意されても立ち直るのが早く、メンタルが弱い人はずっと考えてしまいますよね。メンタルが強い人と弱い人は、考える時間の長さで違いが生まれます。そして、考える時間が短いほど、回復までの時間が早いです。

〜回復力に大きな影響を与えるのが自信〜

自信がないと、自己嫌悪に陥ってしまい
「私は能力がないから失敗してしまったんだ」
「注意されてばっかりで、この仕事向いていないのかな」

など、次第に悩みが深くなっていき、考える時間が増えると、ストレスも大きくなります。また、頭のリソースも悩むことに囚われて、同じようなミスを何度もしてしまう悪循環が起こるのです。

自信を付けることを考える場合、これも分解すると分かりやすくなります。

<自信の公式>
「自信=自己肯定感 × 経験」

自己肯定感は幼少期の環境が大きな影響を与えます。そのため、上司の方が介入して、自己肯定感をあげることはとても難しいです。カウンセリングに通っても、長い期間通ってトレーニングをしなくてはなりません。
その反面、経験は仕事でも積ませて上げることは出来ます。上司の方が行えるのは、部下に経験を少しでも積ませることです。経験が上がれば、自己肯定感が高くなくても、自信が増えるため、くよくよしてしまう時間が減り、ストレスが最終的には減ります。

以上の説明は、ストレスが発生するメカニズムと、発生を防ぐ方法でした。


9. 食欲がない部下は、即休職を

不要なストレスの発生を減らすようにしていても、残念ながら体調不良者が出てしまうことがあります。この章では、体調が悪くなる時のどのような経緯を辿るか説明していきましょう。

まず、前提としてストレスを抱えるとどのような症状が出てくるかは人によって異なります。
そのため、自分が重症なのかどうなのかの判断ができず、手遅れになるケースが多いです。この章では、周りに助けを求めるべき基準と、その対処方法に関してお伝えしていきたいと思います。

〜ストレス負荷がかかるとどうなるのか〜

人がストレス負荷を感じると、第一段階→第二段階→第三段階という順で悪くなっていきます。ダムに溜まっている水をストレスと例えています。ダムが崩壊すると、精神科の病気になると考えてください。

水(ストレス)が溜まりすぎると、ダムが崩壊してしまう、、、(図11)

第一段階…めまい、耳鳴り、動悸、気持ち悪さ、寝過ぎてしまう、食べ過ぎてしまうなどが挙げられます。しかし、第一段階は人によって出てくる症状や度合いが異なります。
第二段階…不眠症状です。寝つきが悪い、途中で起きてしまう、寝た気がしない、どれか一つでも1週間以上続いていたら不眠だと思ってください。
第三段階…食欲低下です。食欲が全くなくなります。第三段階の食欲低下に到達してしまうと、ほとんどの方が休職してしまいます。

図を見ていただくとわかりますが、第二段階の不眠がある時点で誰かが手を差し伸べてあげることがとても大切です。

〜不眠や食欲低下がある場合の対応〜

不眠症状がある場合、「友人とご飯に行く」「運動をする」などの一般的なストレス対策での対応は難しくなります。不眠があるということは、体は慢性的に疲れているため、ご飯に行った時や運動した直後は気分が晴れますが、翌日に疲れがどっと出ることが多いです。

そのため、不眠や食欲低下がある場合の対応の優先順位は上から、
①医療機関(精神科や心療内科)に受診する
②医療機関受診に抵抗があり、産業医がいる場合は産業医面談を申し込む
③産業医がいない場合は、スポットの産業医を探す
④上記がいずれも難しい場合は、タイミングを見計らって再度受診を勧める
となります。

不眠症状が出ている場合は、薬での治療を行わないと改善しない可能性が高いため、医療機関受診を第一優先となります(産業医面談しても方針を示してもらえますが、薬の処方はできないため、結局医療機関受診となります)。

「③産業医がいない場合は、スポットの産業医を探す」に関しては、産業医は一般的に受診を促すことに長けております。それは、このままの状態を続けるとどのような状態になるかを詳しく説明できるからです。
説明例としては、「このまま働き続けると2-3ヶ月後には、全く会社に行けなくなることが多いです。今休職すれば、3ヶ月以内に戻って来られますが、2-3ヶ月後ですと6ヶ月近くかかることがございます。就業規則的に傷病手当で休める期間は3ヶ月となっているので、今休んだ方が良いと思います」などとお伝えすることで、その人に今休むことのメリットを詳しくお伝えすることができます。

〜周りが気付く方法はあるのか〜

ここまでをお読みいただいて、気付いた人はいらっしゃるかもしれませんが、第一段階から第三段階の症状はいずれもご自身でないと気付けません。そのため、周りの人が気付くことが非常に難しいのです。

よく休職に入る前の方は、思考力の低下(ケアレスミス)や遅刻欠勤が増えるなどと言われております。しかしながら、思考力の低下や遅刻欠勤は第一段階で出る人もいれば、第三段階で出る人もおり、どの段階で出てくるか人によって異なります。つまり、思考力の低下があるから即休職だというわけにはならない(第一段階で思考力の低下が出る方もいる)ので、周りが気付けないのです。

〜それでも上司が気付くにはどうすればよいか〜

睡眠が取れているか食欲がないかをストレートに聞くと、警戒されてしまうので、下記のように何気なく聞くのが良いと思います。
例えば、「仕事がプレッシャーになって、夜寝る前に考えて寝られないことがある?」、「プレッシャーがあって、食欲がなくなっていることない」などと仕事と絡めて聞いてみてください。「自分も同じようになったことあるんだよ」と自己開示しながら話をすると、部下が心を開いて相談してくれるかもしれません。


10. 最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。2022年は人的資本経営元年とも言われ、人材への投資がより活発になります。「働きがいは働きやすさから」が私の考えの礎です。いくら綺麗なパーパスを掲げても、働きにくい環境では、達成できません。不要なストレスを発生させないようにして、人間関係を円滑にすることで働きやすい環境づくりを目指してください!

私は、産業医の枠を超えて、組織コンサルタントとして、活躍する場を増やすことに注力しております。そのためには、皆様のお困りごとをより理解するために、今お悩みのことを教えてください。

御礼として、お手伝いできる範囲での無料相談や、セミナー研修のニーズがございましたら、お受けしたいと思っています。以下に問い合わせフォームとセミナー概要のホームページのリンクを貼っておきますので、少しでも興味がある方は、ご連絡ください!

長々とお付き合い頂き、ありがとうございました! 野原

【問い合わせフォーム】
https://forms.gle/BRBgaFEaHCk4gnRQ8

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