政府の連結バランスシートを読んでみよう~その1(全3回)
1.はじめに
そもそも令和5年度現在で増税が必要か?この問題意識を元に前回記事をアップさせていただきました。
なんでもかんでも盛り込もうとし過ぎた結果、文字数は2万3千字を突破。
ある方から指摘された一言。
「長くて読めねぇ」。
ごもっとも(汗)。
そこで今回、前の記事で最も皆さんにお伝えしたかった、政府の財務諸表の話題に絞って簡略化を試みています。3回シリーズでお届けしたいと思います。
2.検討の出発点 取り残された日本~過去30年間のGDP、実質賃金の伸び率
「失われた30年」と言われて久しいに日本経済。どれほど「失われ」たか。その「失われ」っぷりを、日本の過去30年間のGDPと実質賃金の推移を、他の先進諸国と比較したグラフで表したのが次の表1、表2。
日本だけが停滞しています。
さらに、物価上昇率は日本「だけ」が下落。
日本の少子高齢化はかなり深刻。これはやっぱり否定できません。ただ、主要諸国でも程度の差こそあれ同じ。しかし日本だけ停滞、下落しています。
そう、「日本」だけが。。。悔しい!!・・・そして、不思議。。。なんで?
私の素朴な問題意識はこの悔しさ、不思議さから出発しました。
この3表を前回の記事に続いて再掲したのは、読者のみなさんに私と同じように悔しがって、不思議がってほしいからです。
そして私と皆さんとで共有された「悔しさ」「不思議さ」を、この記事を読み進めるモチベーションにしてほしいからです。
3.政府の連結バランスシートを見る必要性
この日本経済停滞を尻目に、政府自民党、財務省、主要メディアは「財政危機」を根拠に、「恒久財源の確保」「社会保障と税の一体改革」を掲げて2014年度以降の消費増税を進めてきました。昨今はさらに防衛増税。
しかし彼らは累積債務残高、つまりは政府の「負債」にしかフォーカスしません。でも「資産」はどうなっているか。その「資産」と「負債」を比較して、どの程度深刻なのか。政府や主要メディアがきちんと比較検討して国民に向かって説明した例を私は寡聞にして知りません。
でもこの異様さ。よくよく考えてみればおかしいですよね。企業役員や会計担当、個人事業主の方や、その金庫番の方であれば容易にわかっていただけると思います。
「負債」のみならず、「資産」も併記。その関係を示し貸借対照表=バランスシート(以下、「BS」)を見て、さらに両者の差額である純資産(または純負債)を見てみなければ、破綻の危険性や今後の打ち手は測れないはずなんです。これは会社であれ、個人事業であれ、家計であれ、政府であれ、同じです。
昨年暮れ、とある元財務官僚の女性参議院議員は防衛増税の必要性について「防衛費の増加を国民一人一人が実感することが大切」といった観念論を持ち出しました。
私は思いました。「どこかの悪徳宗教のお布施の勧誘か?お前何様だよ?」。
しかし、本来きちんと行われるべきなのはそういう観念論、道徳論といった類の話ではありません。国民に対してきちんと説明すべきは財務諸表の連結BSを示した上での客観的な検証です。
財政状況や、そこから見えてくる今後の打ち手は、財務諸表のBSが教えてくれるのです。BSが「増税は必要ない」と教えてくれれば、増税推進派がどのように主張しようが増税は必要ないし、逆に「増税すべきだ」と語れば、増税反対派がどんなに頑張っても、増税せざるを得ない。
増税反対・賛成など、政治信条などが入り込む余地がない、純粋に会計学的な話なのです。
人間は嘘をつきますが、数字は嘘をつかない。
そこで、、、見せてもらおうか、政府の連結バランスシートが語る、財政破綻の可能性とやらを・・・♪。
BS表になじみがない、ついていく自信がないという皆さん。安心してください、大丈夫です。次回から、私と一緒に思考過程を一つ一つ確認しながら、丁寧に見ていきましょう。
今までごく一部の人しか入り込んだことがない未踏の地に探検に出かけるような、ワクワクした気持ちになりませんか?
約束します。このシリーズを読み終えた時、皆様は、日本の財政について、ほとんどの政治家、メディアの政治経済記者を凌駕するリテラシーを手にしていると。皆さんにとって、これは一生ものとなる強烈な「武器」になるのです。
その2に続きます。乞うご期待。
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