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検証 令和の増税って必要?

減税が討議される昨今の政局に鑑み、考察を書いてみました。

90年代のバブル崩壊以降の中央銀行と財務省の歴史を振り返り、増税の必要性や減税の可能性を、実際に公表されている政府の連結BSを土台に検証するなど、かなり内容が濃いものにできたと自負します。

その分、2万字を超えるかなりボリュームが出てしましました。(汗)

しかし断言します。読んでいただければ、必ずや、今後、皆さんが政府の正しい財政状況を把握し、投票行動などを考えていく上で,今までにはなかった有益な示唆を受け取って頂けると。

ご興味があればお時間があるときに覗いていただけると嬉いです。


第1章  はじめに・・・失われた30年への素朴な疑問


なぜ、私たち日本人は報われないのか・・・去年暮れからどなたか要路者にお伝えしなければ、と考え、書き留めていた事柄をここで投稿するのは、これから皆さんが投票行動を考える上で何らかの意味があるのではないか、と考え、そのころ書いた草稿にいくつかの加筆修正を加えて投稿したいと思います。

草稿を纏めていたのは、昨年暮れ、防衛増税が突然発表され、さらに5年に一度の日銀総裁人事で、後述する8パーセントへの消費増税を成し遂げた元財務事務次官の名前が最有力候補として挙がっていた時期です。日本経済のさらなる悪化への不安に、危機感を募らせていました。

しかし、その頃から状況もやや好転し、植田日銀新総裁は就任会見でインフレターゲットを定めた金融緩和の粘り強い継続を宣言。昨年検討された防衛増税も、GDP増に基づく税収の自然増によって煙草の値上げくらいで収まりそう。日経平均も高騰。消費者物価指数から値動きの激しい生鮮食料品、燃料費の変動を除いたコアコアCPIも3%を越え、労働市場での人手不足や賃上げが報道されるまでになりました。このような状態はわが国では今世紀初のような気がします。

遅まきながら消費増税によって激しく腰折れされた感があったアベノミクスが、安倍さんがお亡くなりになられた一周忌を迎えた今になって芽をふきつつあるように思えます。

さらに、なんでも「検討する」と言っていたのに減税だけはしないと断言していた岸田首相が減税に言及する、いい意味で信じがたい状況。ただ、お役所仕事の財務省や日銀が、今後何をするかは予想がつかない部分もある以上、油断はできないと考えています。

バブル以降長期化するデフレ不況。賃金の停滞によって多くの若者が子供を作りたくてもつくれない今の状況が大きいと思います。いったいなぜ、このようになってしまったのでしょうか。避けることはできなかったのでしょうか。私の思考はそこへの素朴な疑問から始まりました。

少子高齢化は日本に限った問題ではなく、先進諸国で程度の差こそあれ共通の課題であると聞いています。にもかかわらず、日本以外、例えばアメリカは90年代以降も実はGDPは右肩上がり※1。この頃から賃金が停滞しているのは主要先進国の中で日本のみです※2
※1(『日本病』(永濱利廣著,講談社現代新書)P113より転記)
※2(『賃金・人的資本に関するデータ集』令和3年11月内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局P12)。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai3/shiryou1.pdf
※1

※1(『日本病』(永濱利廣著,講談社現代新書)P113より転記)


※2(『賃金・人的資本に関するデータ集』令和3年11月内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局P12)

第2章 沈鬱の日本銀行、財務省平成史

高度成長みたいな好景気が永遠につづくことはない。反面、永続する不景気も本来はあり得ない筈。そのあり得ないことが起こっている以上、これは人災を疑った方がいいと思います。「・・・『誰か』のせいで必要以上にこじらせてはいないのか?」との自問です。

この問題意識をもって、中央銀行である日本銀行や政府・与党・財務省の金融・財政政策について振り返りつつ、その答え探しを試みたいと思います。

ア)平成の日本銀行史~長期の円高・デフレ不況を招いた本石町の日銀貴族

まず中央銀行としての日本銀行。90年代半ばまでの財務省OBと日銀OBが交互に総裁に就任する「たすき掛け人事」の通例を破って、速水優から福井俊彦、白川方明まで3代続いた日銀プロパーの総裁。90年代の日銀法改正で裁判官並みの身分保障(日本銀行法25条)を受けるようになって以降、「本石町の法王」と呼ばれ独立国家の宗主ようにふるまい始めます。

日本銀法25条

親会社である政府の長、総理大臣が直接会って話がしたい、と申し入れても「今忙しい」と15分の電話打ち合わせで済ませる信じがたい塩対応。政府・財務省からの景気対策に連動した再三にわたる金融緩和要請を軽視します。その結果、物価上昇率は世界最低。

(『日本病』(永濱利廣著,講談社現代新書)P59より転記)

どうも、日銀にとって「円高」や「デフレ」がいいこと。「インフレ」や「円安」は悪い事、という固定観念が働いているようにしか思えません。日銀自ら編纂した100年史でも、自分たちがいかにインフレと戦ってきたか、を長々といています。どちらもいい悪いはなく、行き過ぎは是正しつつ、コアコアCPI2~5%増のマイルドインフレに収めつつ、失業率の最小化と緩やかな賃金上昇に導く、が正論だと思うのですが。

白川法王は長期デフレ不況の原因に関して問われたインタビューで「企業努力が足りない」「政府の財政政策が有効に機能していない」「労働者に意欲がない」と、要するに~日銀以外の日本人全員が悪い~と宣います(2009年12月21日テレビ東京系経済番組『ワールドビジネスサテライト』)。2010年、週刊誌の取材に応じたポール・クルーグマン博士(2008年ノーベル経済学賞受賞)から「13年間もデフレ不況を脱却できない国の中央銀行のトップは銃殺」と名指しで批判を受けますが反省の色無し。

自国通貨を増刷して市場に供給することに否定的な立場の根拠として、「そもそも通貨増刷にデフレを克服する効果はない」「通貨増刷はハイパーインフレに繋がる」の二つに大別さえるように思います。ただ、この二つは同じ方向での主張でありながら、論理的には相矛盾し並び立たない理屈であることは金融のど素人の私でもさすがにわかります。しかし白川法王はこの並び立たない筈の理屈を時と場所に応じて使い分けていました。

日本には本来関係なかったはずのリーマンショックでも、通貨を大量発行して危機を乗り切る各国を尻目に見せかけだけの金融緩和でお茶を濁して影響が拡大。その結果自殺者が急増。東日本大震災、震災後の復興増税のトリプルショックを受けて、まさに若者にとって生き地獄です。この頃、「有事の円」などと円高を日本の強さの証明のように喧伝するメディアも見られましたが、何のことはない、単に相対的に円の供給量が少なすぎただけ・・・。以上の経緯や構造的問題についての記載は経済評論家の上念司著の「日銀貴族が国を滅ぼす」「デフレと円高の何が『悪』か」に詳しく、私の記述は上念氏のご著書を読んで教わった内容を基に、私なりの理解で要約を試みた内容です。私の理解不足のため、間違っている部分、誤解している部分があれば、上念氏および関係諸氏にお詫びしたい。読者の皆さんからご指摘をいただければ必要な修正等を検討します。

警察庁 自殺統計より転載

ミルトン・フリードマン氏、ベン・バーナンキ氏というノーベル賞を受賞するアメリカの、いや世界の経済学の泰斗が、バブル崩壊以降の日本経済に特に時間を割いて考察を加え、日本のファンダメンタルズの底力を高く評価しつつ、日本は➀インフレターゲットを掲げて②一定期間金融緩和を行い、③その間できれば減税、少なくとも増税を封印しさえすれば力強く復活する、税収の自然増でプライマリーバランスも改善し、累積債務残高も圧縮できる、と提示しました。バーナンキ氏は通貨供給の際に買い入れた長期債権の利息分を充てて減税することなど、かなり具体的な処方に立ち入りました(『リフレが正しい。FRB議長 ベン・バーナンキの言葉』(高橋洋一監修・解説,KADOKAWA))。

イ)日本経済に光明~アベノミクス爆誕・黒田バズーガー


国内のリフレ派の代表的論客である岩田規久男学習院大学教授は➀のターゲットを消費者物価指数から値動きの激しい燃料費、生鮮食料品費の値動きを除いたコアコアCPIで2%以上、②①の継続期間を2年と提示し、その助言に沿ってアベノミクスが始動。2012年暮れに組閣した第二次安倍内閣がよかったのは、一次政権でいきなり憲法改正や公務員制度改革に着手して、特に後者のために組閣前から霞が関の官僚全員を敵に回してしまった反省を踏まえ、「まずは経済だ」と気づいた点。衆議院選挙圧勝直後に「景気が回復するまでお金を擦り続けます。」と発言してこれに日経平均はわかりやすく好感を示します。

明けて翌2013年、「翌年に10兆円の金融緩和を行う」と一見協力するような姿勢を見せつつ実は年内の金融緩和封印を表明した白川日銀総裁の態度に安倍首相は激怒。「本石町の白川を討て!!」と日銀法改正をちらつかせて総裁の辞表を取り上げ、財務省元財務官で、リフレ派とされる黒田総裁、政権のブレーンとして起用した岩田規久男副総裁の下で金融緩和を開始。一発目の「黒田バズーガー」は火を噴いた途端、日本株に外国人投資家が殺到して株価は上昇。日本経済の前途に80年代以降初めて光明が指した瞬間でした。

世論調査で8割を超える圧倒的支持を背景に、リフレ派の識者などを秘書官などにずらりとそろえる布陣。2013年夏の参議院選挙も圧勝し、民主党政権時代を含め長く続いた衆参両院のねじれ状態を解消。いままでタブーとされた内閣法制局長官人事にも介入。久しぶりの強力な内閣の登場でした。

ウ)財務省によるアベノミクス包囲網

しかし・・・ この強力な内閣の前に立ち塞がったのが時の財務事務次官の木下康司(現日本取引所グループ取締役兼取締役会議長, 2025年日本国際博覧会協会顧問)と、その直属の部下である佐藤慎一大臣官房長(現日本電産取締役)。 6月28日に事務次官に就任した木下はここまで強力な内閣を前にしても、消費増税に関して出身地元紙のインタビューに答え、最終的には官邸の決断次第としながら、増税検討を約した三党合意を盾に、「われわれの立場として予定通りに進めてもらうことを望む」と不敵な態度(『新潟日報』2013年7月20日付)。これに呼応するように財務大臣の麻生太郎も、参議院選挙に勝利した二日後に「これで増税ができない環境はなくなった」と不穏な発言。政権の行く末に暗雲が垂れ込み始めます。

木下次官の就任コメントを掲載する新潟日報記事

木下次官の下で佐藤官房長が司令塔となって操り人形の麻生大臣、財務省族議員、記者クラブにぶら下がる主要メディアを振付け、水も漏らさぬアベノミクス包囲網形成を開始します。

自民党の9割、公明党の全部、立憲民主の幹部全員が消費増税を主張。経団連はじめ主要経済三団体、日本労働組合連合会も無批判にこれに追従。6大主要新聞、在京主要キー局全てが増税支持を打ち出します。虚構の増税発表会見予定が捏造報道され、その都度菅官房長官が慌てて否定する始末。「増税発表は今日か、明日か」と増税既定路線でメディアと国民世論が「木下次官の掌の上」という名前のダンスホールで踊り狂います。

景気が良くなると、 GDPが上昇するだけでなく、税収率も上昇します。 つまり、わざわざ増税なんかしなくても、 景気回復させちゃえば、 GDP→増 税収率→増 よって、 税収→大幅アップ という事で、一気に財政は健全化されていきます。 ...

Posted by ラブ消費税 on Monday, May 26, 2014

全世界が固唾をのんで見守る中でした。2013年10月1日18時。安倍首相は顔面蒼白、何度もどもりながらふるえる声で準備された予定稿を読み上げ、翌年春からの消費税5→8%の税率アップを発表。その日の昼の閣議で消費増税決定の報が流れた時点で、東証株価は外国人投資家の大量の失望売りを招いて「ナイアガラ」と比喩される大暴落を起こしました。
(2013年10月1日増税記者会見)

各国の主要メディアで税率アップに歓迎の意を示したのは新華社通信のみ。ほかの先進国メディアの反応は軒並み、せっかく金融政策で経済再生に向けて勢いよくアクセルを踏んだのに、同時にこれに急ブレーキを踏むような矛盾した行動に「日本政府は正気か?」という論調。

木下や佐藤は増税に否定的な記事を書いた記者の所属する新聞社の社主に直接電話をかけて圧力をかけるなど増税反対派に強力な切り崩し工作を行ったと聞きます。 その結果、官僚のレクにそって「今の負債のつけを将来の子供たちに残すな」「増税議論から逃げるな」の大合唱で完全思考停止。麻生太郎大臣など「オリンピック誘致が決まったから増税」「増税は国際公約」と言い出すご仁まで現れる始末。戦争末期に起こった戦艦大和の沖縄特攻出撃への異論の封殺をはじめ、昔からこの国を繰り返し蝕んできた戦慄すべき「空気支配」でした(「空気の研究」,山本七平著,文春文庫)。

みなさん、お待たせしました! 川柳大会の結果を発表いたします!! 素晴らしい作品が多数あり、 財務省内の川柳審査委員会はかなり紛糾しました(笑) 最優秀賞『 財務賞 』 毛沢東 木下康司 スターリン by...

Posted by ラブ消費税 on Saturday, May 17, 2014

この辺りの経緯は、倉山満氏の「沈鬱の平成政治史」「増税と政局 暗闘50年史」などを読んで教わった内容を私なりの理解で要約を試みたものあることを付言します。
この部分のみならず、本稿の全体は、現在私が勝手に師と仰ぐ倉山氏のお考え、思想の影響を色濃く受けた内容です。私の理解不足のため、間違っている部分、誤解している部分があれば、倉山氏および関係諸氏にお詫びしたい。読者の皆さんからご指摘をいただければ必要な修正等を検討させていただきます。

エ)無念 アベノミクス

財務官僚が財政規律を理由にポジショントークとしての増税を主張するのは100歩譲って認めるとしても、ここまでの行為は民主的統制を受けない一介の官僚の矩を明らかに超えた異常な行動だと思います。仮に増税を検討するとしても岩田副総裁が提唱するたったの2年すら待てなかったのでしょうか。

また、この程度の官僚の動きすら制することが出来なかった安倍元首相にも高い点数はつけられないと思います。日本は代表民主制の国です。世論の圧倒的支持をバックにした内閣総理大臣が本気を出せば、官僚側になすすべなどなかったはずなのです。 三党合意の凍結と増税阻止を公約に解散総選挙に打って出ればよかったのです。実際に解散に出なくても、菅官房長官を通じて解散権の行使を匂わすだけで、とりあえず木下、佐藤の振付に従っているだけに過ぎない大多数の議員達は安倍首相の足元にすがる形で許しを請いに来たはずです。「私は長州人です。」増税発表会見で安倍首相は何度か口にしました。であれば・・・同郷の尊敬する高杉晋作に倣って、財務省と増税になびくメディア、議員を「平成の俗論党」とでも括って捨てて決起、「増税不可避」の「空気」を粉砕する胆力は残されていなかったのでしょうか。側近は解散をとどめたといいます。決起すべき時に自重を促す側近を「佞臣」といいます。

安倍元首相は「戦後レジームの脱却」を政治信条に掲げていました。その是非に意見の相違はあると思います。これは敗戦国からの脱却を意味するのでしょうから、極論アメリカに再び戦争を挑んでリベンジを果たすくらいしなければ完全な達成は難しい話だと思います。私が思うのは、この程度の反対すら抑えきれずに、「戦後レジームの脱却」など夢のまた夢ではないですか、ということです。 以後、黒田総裁の金融緩和が功を奏して失業者の400万人分の雇用創出など、それなりのプラスの効果はあったとは思います。しかし、当初の国内外の期待が大きかっただけに、腰折れ感は否めません。個人的評価で60点。 いずれにせよ、「負けるはずのない戦い」に敗れ去った安倍政権は、末期には森友・加計問題で公文書管理の杜撰さ露呈する形でレイムダック化。グダグダな長期政権に成り果てました。

時は流れ、昨年は防衛増税。元財務官僚で財務省一家の切込み隊長、片山さつき参議院議員を筆頭に「防衛費の上昇を国民一人一人が理解することが大切」という、どこかの悪徳宗教のお布施勧誘のキャッチコピーか?と疑いたくなるような理屈を絶叫。その原稿をいつもの棒読み口調で読み上げた岸田首相の姿に接し暗澹とした気持ちになりました。思うに、90年代の竹下内閣における消費税導入以来、「直間比率の是正」の掛け声の下で消費増税に並行して法人税、所得税は下げられてきた経緯があります。しかし防衛増税においては「大丈夫、消費税率には手を付けませんよ」とさりげなく所得税、法人税の引き上げが提示されたことは財務省が真の意味での「増税一択」に振れた歴史的ターニングポイントとして注目すべきように思います。

政府は企業に賃金アップを要求します。しかし、賃金アップはマイルドインフレが起こって物を作れば売れる環境が整い、旺盛な消費者需要にこたえるために人・物への投資を行う下地が整ってから、人手不足から労働者への需要が旺盛になって各企業が労働者の争奪戦になって初めて発動するものであると思います。現に高度経済成長時にはそういう環境づくりを優れた大蔵官僚の方々が行っていたからこそ、勝手にインフレ率を超えるペースで実質賃金アップと可処分所得の拡大が発動していったわけです。デフレで安物しか売れず、しかも近い将来増税が予想される不透明な環境では多くの企業は不透明な将来に備えて利益剰余金を積み上げていかざるを得ない筈です。政府財務省がそういった、賃金アップをしやすい環境造りを怠ったまま企業に賃金アップを要求しても、ほとんどの企業はそのような経営合理性に反する要求に応じることはできないと思います。

第3章 検証:国の財政危機は本当か

ア)「統合政府」という考え方

元財務官僚の経済学者:高橋洋一、経済評論家の勝間和代、上念司に、憲政史家の倉山満といった諸氏によれば、実は政府連結ベースでのBS表でも日本政府には数百兆円以上の資産があり、日銀などの保有資産も含めた連結ベースの資産を加えれば、財務省が国民に主張する1,100兆円の赤字国債累積債務残高を軽く飲み込むとのこと。

また、財務省が喧伝する累積債務残高の増加率は、IMFが発表するデータでは2001年を100とした場合に2021現在でG7の中でも最下位。

(『日本病』(永濱利廣著,講談社現代新書)97頁)

外国人投資家には政府の子会社である日本銀行含めた連結ベースのバランスシートを見せてデフォルトの危険は皆無と提示しているそうです。
そうしなければ外国人投資家は多くの日本国民が信じ込まされているようなジャンキーな通貨を発行する政府の国債などに投資するわけがないのです。

この「連結ベースで日本政府のバランスシートを見る」という点は、私を含めた多くの日本人にとってあまりにも重要な点と考えます。そこで、永濱利廣氏(第一生命経済研究所 首席エコノミスト)の御著書から説明部分や図表を直接引用転記するとともに、ここで提示される「統合政府」という考え方に沿って、実際に政府の財務諸表のバランスシートを見ながら現状認識を深めるとともに、いろいろシュミレーションしてみましょう。

「(以下、引用)・・・日本では、政府債務をあまり増やさない方がよいという意見が多くみられます。政府の一般会計を見る立場で、政府内だけを見たら、確かに債務は増えない方が良いということで、プライマリーバランス(国や自治体の基本的な財政収支)を黒字化したくなるでしょう。日本で政府債務残高に危機感を持つ考えは、すべてこの立場から来ています。
しかし、もっと俯瞰的に見れば、『中央銀行』という特殊な存在に気づくはずです。
現在の日本の政府債務の約半分は、日本の中央銀行である日銀が新たに発行したお金で国債を市場から吸収しています。国債保有者に対して政府は利息を払いますから、政府は日銀に利息を払っていますが、(政府の子会社である)日銀の儲けは国庫納付金として最終的に政府に戻ってきます。また、元本についても、政府は民間企業や個人と違うので、借り換えで続けています。
つまり、政府債務のうち、日銀が持っている債権は(・・・日銀のBSでは「負債」ではなく「資産の部」に計上され、日銀を子会社として含めた政府の連結ベースのBS表では、単体のBSでは「負債の部」で計上される累積債務残高のうち日銀保有分が相殺されるため・・・)別枠で考えなければなりません。これはが海外の専門家では常識の『統合政府』という考え方です。
・・・(中略)・・・実際にグラフを見ると政府債務残高は毎年増えていますが、日銀保有分を抜いてみると一気に減ることがわかります。
・・・(中略)・・・ここで重要なことは、政府債務残高(単体)だけで財政の予算制約を図るのは間違いである、ということです。少なくとも現在、海外の専門家の多くはそう考えています。・・・」(『日本病』(永濱利廣著,講談社現代新書)98~100頁から引用・転記。括弧斜字部分は本稿筆者補充)。

(『日本病』(永濱利廣著,講談社現代新書)98~100頁から引用・転記。括弧斜字部分は本稿筆者補充)

イ)私たちの盲点 国の財政状況をバランスシートで俯瞰する、という発想


ところで、政府や主要メディアは累積債務残高、つまりは政府の「負債」にしかフォーカスしませんが、今更ながら「資産」はどうなっているのか、つまり、政府の連結財務諸表、連結バランスシートが存在していることを皆さんはご存知でしょうか。

考えてみれば・・・財政破綻の危険性を考察していく上で、赤字国債発行残高などの「負債」のみに注目するのはおかしな話です。企業役員や会計担当、個人事業主の方であれば容易にわかっていただけると思いますが、資産と負債の関係を示し貸借対照表=BSを見て、両者の差額である純資産(または純負債)を見てみなければ、破産の危険性や今後の打ち手は測れないはず。私も以前会計・投資の専門家にお願いしてコンサルタントを受けて、家計のBS、PLをつけて、今も継続しています。企業会計であれ、家計であれ、政府の財政であれ、これは同じはずです。我ながら・・・迂闊でした。

主要メディアが、この政府のBSについて、その存在を公に指摘して考察を加えたという話を私は寡聞にして知らないのですが、実は・・・あります。

国の財政状況をバランスシートで見る、という発想。残念ながら私のオリジナルな着想ではありません。どころか・・・私もつい最近まで知りませんでした。
おそらく、日本でこれを提唱・実践し始めたのは元財務官僚の高橋洋一氏だと思います。

そして、財務省作成による政府の連結バランスシートは存在します。財務省のホームページの片隅にひっそりと、掲載・公開されています。


(財務省HP「令和3年度「連結財務書類」の概要」より転記)

確かに、負債の部をみれば、赤字国債発行額と思われる「公債」の1,103.1兆円を筆頭に1514.3兆円は莫大な数字に思えます。財務省や御用学者、主要メディアが国民に示して不安を煽るのは、この数字が根拠です。

しかし、資産の部に目を移せば、942.3兆円の資産があります。繰り返しますが皆さん、ご存知でしたか? 先に述べたように私は、最近まで全く知りませんでした。恥ずかしい・・・。

・・・とは言え、資産から負債を差し引いた「純負債」に当たる金額は、依然、-571.6兆円です。普通の企業や個人であればとっくに倒産、破産しているレベルでしょう。財政危機を回避するために増税もやむなし、となると思います。

・・・しかし、です。
「概要」ではなく、正式な「令和3年度「連結財務書類」を覗いてみましょう。

https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2021/national/fy2021renketu.pdf

注目していただきたいのは、17頁以下の「連結対象法人一覧」です。「株式会社日本政策投資銀行」を筆頭に、いかにも「The 天下り先」という名称の法人がずらりと並んでいます。財政危機が本当であれば、増税する前に、この中から不必要な法人の保有株式や事業を民間に叩き売って現金化し、借金返済に充てるのが先だろう・・・と感じてしまいますがいかがでしょうか。

高橋氏によれば、資産の部の「貸付金」「出資金」の183.6兆円はこれらの天下り先の特殊法人に流れている。もし、財務官僚が主張するように財政が危機的ならば、まずは身を切る行政改革の一環として率先してこれらの処分を断行し、もって国民に範を示すのが先。国民に増税を求めるのはその後であろう、と指摘されています(「日本は世界一の政府資産大国」(高橋洋一著, 講談社+α新書)22頁~,57頁~)。

また上念氏、例えば、「都市再生機構」、いわゆる「UR」への国費の支出は高度成長期の遺物であり、今や国庫からの出資でタワーマンションなどを管理し、敷金礼金ゼロのリスクを国民の税金で補填するのは意味が解らない、と指摘します(前掲同書21~22頁)。ここを行政改革の一環として民間に処分すればこれで1.1兆円の現金化が可能です。

上念氏や高橋氏の意見を踏まえてここを眺めているだけでも、読み物として、それなりに楽しいのですが、私たちがもっと注視すべき項目は別にあります。

そう、中央銀行としての「日本銀行」が連結対象法人に入っていないのです。

これは先に紹介したように、永濱氏が「海外の専門家では常識」であると説明した「統合政府」の考えに反するのではないでしょうか。

財務省はこの点について、
「日本銀行については、国の監督権限が限定されていること、政府出資額は僅少であり、補助金等も一切支出していないことから、連結対象ではありません。」
と説明しています(「令和元年度「国の財務書類」の骨子」6頁より引用)。この趣旨に従って財務官僚が作成した原稿を棒読みしたと思われる鈴木大臣の動画もあります。

https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2019/kossi.renketu.pdf

確かに、日銀は総裁を筆頭に役員に強力な身分保障が付与され、独立性が担保された組織であり(日本銀行法25条)、通常の株式会社のように親会社が株主総会を通じて経営陣(総裁、副総裁、理事)を自由に選任・解任してコントロールができない組織なので、一般企業会計原則がそのまま適用されない、という主張にも理由があると思います。

【再掲】日本銀行法25条

しかしながら日本銀行は東証ジャスダックに上場した株式会社(銘柄コード8301)であって、一般人もお金さえあれば株式(日銀のそれは正式には出資証券というそうです)を取得できます。そして発行済み株式総数の55%は政府が保有しています。この株式保有率からみれば、まごうことなき子会社です。

また、「国の監督権限が限定されている」から日銀は連結対象にはならない、という財務省の見解についても、衆参両議院で多数を占める政府与党、首相官邸が本気になれば、日銀法25条を改正して、いつでも高度な独立性とやらは剥奪できます。

財務省との見解の相違を認めつつも、くどいようですが永濱氏のご説明によれば「海外の専門家では常識」であるところの「統合政府」の考えに沿って、ためしに日銀の資産・負債を政府のバランスシートに加えて連結したうえで、親会社・子会社間の債権債務等について相殺すべき項目・金額を控除してみましょう(以下、単位はすべて兆円)。

ちなみに、「統合政府」の定義は、元財務官僚で現在公認会計士をされている桜内文城氏の用語解説に従って、「政府と中央銀行の連結財務諸表」とします。

ウ)検証 政府の連結バランスシート♪


まず、政府の令和3年の連結BS(表1)です。これは前述のとおり。

表1

次に参考として、令和3年の日銀の連結BSです(表2)。下記に掲載されています。

ところで・・・なぜ直近の令和4年度の日銀の財務諸表が発行されているのに、それではなく令和3年度で計算するのか・・・と疑問を持たれた読者の皆様の感は鋭い。この理由は、政府の財務諸表が令和5年11月現在で令和3年度分までしか公表されておらず、これに合わせるためです。財務省連結財務諸表、連結BSは2年遅れの発表が通例になっているようです。この間抜けた状態の原因・理由は不明ですが、何となくいろいろ邪推は膨らみます。財務省の連結BSの歴史については、元財務官僚である高橋氏の著書や動画に接するとさらに興味深いお話を知ることができます。
(日銀のBSも貼ってこようと思ったのですが、鮮明に示せません。下記は総額のみなので、必要に応じて、下記から閲覧できるPDF財務諸表の5頁を必要に応じてご覧いただきつつ、以下をお読みください。)

https://www.boj.or.jp/about/account/data/zai2205a.pdf

表2

上記を前提に、まず、政府BSに日銀BSを単純に足してみます(表3)。日銀の純資産は5兆円弱ですから、少し負債が減っても「純負債」は依然あまり軽くはなりません。

表3

次に、連結決算における相殺処理を行います。表3の資産・負債それぞれから、日銀が保有している国債分(日銀のBSの資産の部に「国債」として計上されている526.2兆円)を相殺して引いてみましょう(表4)。

表4

続いて、政府のBSで資産の部に「現金・預金」として計上されている86.3兆円の中で、日銀のBSの負債の部に「政府預金」として計上されている13.0兆円は相殺できると思います。それぞれ引きます(表5)。

表5

これ(表5)が、「統合政府バランスシート」の一応の完成版でしょうか。

どうでしょう。表1の段階で私たちが普段、メディアを通じて目にしてきた政府の負債1514.3兆円(うち国債残高で1,103.1兆円)だけの情報と比べれば、
まず政府連結BSで資産の部に942.8兆円以上ある(表1)、連結で1139.8兆円が存在する、という点を考慮に入れると、見え方はかなり変わってくるのではないでしょうか。しかも、道路や空港など処分が難しい有形固定資産は280.2兆円であり、すぐに使える現金(86.3兆円)や有価証券などの現金同等物(353.7兆円)は案外豊富です。

・・・ただ、相殺処理したところで、その金額は負債の部のみならず資産からも引かなければなりません。これでも資産-負債の純負債は-566.9兆円で、変わらず・・・世の中そんなにうまい話はなく、やはり増税は・・・。

エ)日銀のBSにおける「負債」の特殊性 「発行銀行券」「日銀当座預金」の取り扱い

さて、ここから高橋洋一氏や上念司氏による、通貨発行権を持つ日本銀行の特殊性を踏まえたご主張に基づいて、いくつかシミュレーションを試みたいと思います。

まず、日銀の「負債の部」に掲載されている「発行銀行券」として計上されている119.9兆円についてです。これは、少なくとも政府の財政破綻のリスクがどの程度あるかを考えるにあたっては、負債からはずしてもいいのではないでしょうか。

この点、日銀は負債に市中に出回る発行銀行券分を加えることについて、次のように説明しています。

「(略)・・・当初、日本銀行の発行する銀行券は、銀との交換が保証された兌換銀行券でした。その後、金本位制度の採用を経て、金との交換が保証されました。こうした制度の下で、日本銀行は、銀行券の保有者からの金や銀への交換依頼にいつでも対応できるよう、銀行券発行高に相当する金や銀を準備として保有しておくことが義務付けられていました。・・・(中略)・・・このため、日本銀行は、金や銀をバランスシートの資産に計上し、発行した銀行券を負債として計上しました。
その後、金や銀の保有義務は撤廃されましたが、・・・(中略)・・・銀行券は、日本銀行が信認を確保しなければならない「債務証書」のようなものであるという性格に変わりはなく、現在も負債として計上しています。
なお、海外の主な中央銀行においても、こうしたバランスシート上の取り扱いが一般的となっています。」(以上、日銀HPからの引用)
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/outline/a23.htm

日銀のこの見方は会計的には正しいのでしょう。

しかし、日銀も指摘するように銀行券の金兌換義務は1971年の米国によるブレトン・ウッズ体制に基づく金兌換停止と通貨の変動相場制への移行に伴って停止されています(いわゆる、ニクソンショック)。

その意味で、発行通貨に国による兌換義務はないことを考えると、少なくとも日本が破産する危険はどの程度か、を見るにあたっては、これを負債から抜いて見てみる、ということもありではないか、と考えます。

この点上念司氏は「・・・(日銀のBSの)負債の欄に「発行銀行券」という科目で・・・計上されていますが、これは世の中に流通する日本銀行券(現金)のことです。日銀の借金ではありません。もちろん、便宜上その流通価値を日銀が保証しているという点では負債なのかもしれませんが、一般的な意味でいう負債とは全く性質を異にするものです。・・・」とおっしゃっています(『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(上念司著,講談社+α新書)107頁から引用)。

そこで、「発行銀行券」の約119.9兆円を表5の負債から抜いて試につくったBSが次の表6です。純負債がー566.9兆円か-447.0兆円に減少っ!!。

表6

次に、同じく日本銀行の負債の部に「当座預金」の約536.4兆円はどうでしょう。これは「発行銀行券」と合わせて、中央銀行による市場への貨幣供給量(いわゆる、マネタリーベース)に含まれるものです。
この点、私の理解が浅いので、上念氏が「発行銀行券」とほぼ同じ理由と、さらに日銀が通貨発行権を持っているが故に、少なくとも財政危機のリスクを測るにあたっては、負債から外してよいであろうと主張されていることと、その参照箇所を紹介するに留めます(前掲書103~108頁を参照)。
これを負債から引くと、表7になります。

表7

なっ・・・なんと・・・!!資産-負債の差額が+116.2兆円のプラスに反転。表題が「純負債」から転じて「純資産」となりました!!。

ここでお気づきかと思いますが、日銀の負債の部から除いた上記2項目の金額は合算して683.0兆円。日銀の負債合計が731.6兆円ですから、全体の93%に当たります。「海外の専門家では常識」であるところの「統合政府」の考え方を前提に、日銀のBSで負債に計上されている金額は、少なくとも財政破綻の危険性を測るに際しては、総じて負債から除いて考慮して問題なし、とするのが、高橋氏、上念氏の基本的なお考えの土台、話のパンチラインであると理解しています。

オ)政府の「徴税権」の取り扱い


最後に、高橋氏は、資産の部に「隠れ資産」の一環として政府の「徴税権」を見積もって計上すべきとおっしゃっています。
(動画の6:10過ぎからその説明をされています。)

高橋氏のご主張の内容は、私はまだまだ不勉強で十分に理解できたとは言えません。誤解、勘違いが含まれていたら、高橋氏はじめ諸氏にお詫びしたい。
高橋氏は上記動画の他にも前掲のご著書などで「徴税権」の資産価値を見積もっています。
私が氏のいくつかの著書読んだ限り、高橋氏の見積もりは、450~750兆円で試算されています。それは、算定の計算式が時々の経済状況によって異なるからだと思います。これは仕方がない。

仮に高橋氏の主張する説が正しいと鵜呑みにして徴税権を資産として計上してみましょう。
ただし、資産価値については、
「・・・もっとも、徴税権を資産に加えると、将来を拘束している国の支払い義務もあるので、その分の負債もカウントせよとの意見も出てくる・・・」『財政破綻の嘘を暴く 「統合政府バランスシート」で捉えよ』(高橋洋一著,平凡社新書14頁)とのこと。そこで、ここはひとつ最も控えめに、450兆円と見積もって表7の資産に足すと・・・。

表8

・・・声を失います。
こうなると日本政府の財政状況は政府や主要メディアが主張するような財政危機どころか、実は純資産が566.2兆円。政府の総資産1,589兆円に占める割合(いわゆる自己資本比率)は35.6%。
株式投資の際に、会社の倒産リスクを計るために使われる、この自己資本比率という指標、一般企業では倒産の危険を避けるために少なくとも15%から20%以上、望ましくは30%以上、理想は50%以上と言われます。
その意味では、政府のそれはかなり優秀なレベルといえるでしょう。

仮にこの仮説としてのBSが正しいとして、それを認識しつつ、それでも十分な説明義務を果たさないまま、増税を主張し、減税を渋るとすれば、残るところは増税とバラマキを通じて天下り先を増やし、中抜きなど利権を拡大させたい財務官僚の人格問題のみ、と考えるのは言い過ぎでしょうか。

ゆくゆくはプライマリーバランスを改善して赤字国債に依存する状態から脱却する方向に向かうべきとしても、それは景気を回復させてから後で十分ではないでしょうか。少なくとも、母子家庭で子供が飢餓に窮するようなニュースが流れる現状において、財政規律を云々するのは正しいとは思えません。まして増税など・・・正気の沙汰ではありません。

税収=名目GDP×税率ですから、増税を検討する前に、経済成長させることで税収を増やす、が第一。先に述べたように行政改革の一環としてURなどの不要な事業を叩き売って現金化したうえで返済に回す、など、増税の前にやるべきことはまだまだある筈です。

また、バブル崩壊前の日本や他の主要先進国では中長期的にマイルドインフレが継続する結果として、国の負債が同額であれば、あるいは負債が増えてもインフレ率がそれを上回れば、貨幣価値の低下に伴って実質的な負債は減っていきます。実はこの理屈は不動産ローンなどでも同じです。30年間デフレから脱したことない私たち日本人の創造がつきにくいところではありましょうが。。。白川以前の元日銀の残党などが「ハイパーインフレーが起こったらどうする」とギャーギャー騒いでますがこれ稚拙な極論。マイルドインフレに伴う上記のような状態は日本以外では極めて普通で健全です。皆さん、一緒に旧日銀の悪質なマインドコントロールから脱却しましょう。

第4章 迷走する財務省と忘れられた財務省の栄光の歴史

ア)国債の格付けに関する財務省の迷走


ところで、以前財務省は、日本の国債の格付けを下げられたことに対して、格付け会社に強く反論しています。倉山氏の 著書から説明部分を引用するとともに、財務省のHPを貼っておきます。
「(以下、引用)・・・実際に財務省は、海外に向けて『日本の国債は破綻しません』とホームページで発信しています。・・・『外国格付け会社宛意見趣意書要旨』によると『日米などの先進国の自国通貨建ての国債デフォルトは考えられない』と財務省ははっきり書いています。

『日本は世界最大の貯蓄超大国』『日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備高も世界最高』と国債の格付けが低いことに対して『そんなに低いわけないだろ!日本の国債ほど優秀なものはない』と散々に文句をつけています。
それなのに、国内では借金していけないという全く矛盾した論理がまかり通っています・・・(以上、引用終了)」(『これからの時代を生き残るための経済学』(倉山満著,PHP新書P133~P134から引用))

流石、日本が世界に誇る財務省。よくぞビシッと指摘してくださったと言いたいところですが・・・・。最近では自ら固執する増税路線と辻褄が合わなくなると気づいたのか、格付け会社への批判をやめるどころか、逆にそれをネタに危機を煽るなど、明らかに迷走。


【財務省該当HP】

さらに神田財務官が発表した昨年10月の為替介入では結果的に110円近辺で買い集めた米ドルを150円弱で売りぬいており、外為特会で一説には50兆円以上の差益を得ているといわれます。高橋氏や上念氏は、この差益を外貨準備金として無駄に寝かせておくことこそ不合理であり、5年間の25兆円の防衛費増額分などこれで賄えばよく増税は全く不要との主張です。

失われた30年の原因は無策な日銀、もはや増税省と名前を変えた方がいい財務省、これを適切にコントロールできないメディア、財界、政界、そして、「誰よりも」適切な政治家を選出してこなかった「私を筆頭にした」主権者である国民自身による思考停止と怠慢失策に行きつきます。全く情けなく、今の20代~30代の若い世代に申し訳が立たない気分です。

イ)かつて、大蔵省の官僚たちは素敵だった・・・


ところで、財務省の歴史をたどれば、実は官僚が今のように「恒久財源の確保」との名目で「増税」を言い出したのはせいぜい1980年代後半以降の40年強。それ以前の大蔵官僚にとって「増税」は戦時にやむを得ず一時的に行う「最後の手段」。戦前、金解禁と均衡財政達成のために強権を発動した井上準之助大蔵大臣ですら「増税」は最後の最後まで躊躇した禁じ手でした。日本経済の安定成長のために、全国民の守護神として様々な敵対勢力、無責任・無軌道な積極財政・増税圧力に果敢に戦いを挑んで国益を守り、戦後の荒廃から日本を高度成長に導いてきたパワーエリート集団、それが大蔵省、財務省であり、大蔵官僚でした(『財務省の近現代史』倉山満著)。

それが・・・そんな素晴らしい組織のDNAは忘れ去られ、なぜ今みたいなになってしまったのでしょう。憲政史家の倉山氏の考察によれば、財務官僚の「変心」は高度経済成長時からバブル崩壊までに味わった、財務省としてのある「トラウマ」に起因する、という仮説に行きつきます (前掲同書)。

しかし、では何のために東大法学部成績上位の秀才を官僚の任に充てているのか、そういった原体験への感情的、非科学的な思考に抗するためではないのか。なんで増税してばらまくことだけが大好きな増税フェチ集団に堕してしまったのか。木下元財務事務次官を筆頭に、あれほど周到にアベノミクス包囲網を敷いた財務官僚の頭脳が恐ろしい程明晰なのは認めます。しかし・・・惜しむらくは、その使いどころを激しく間違っている。いい頭の無駄遣いと言わざるを得ない。

個人的にどう考えても意味が分かりません。子供の小遣い帳の収支管理じゃあるまいし。今の財務官僚諸氏に、大蔵省の素晴らしい先輩たちに合わせる顔はあるのでしょうか。財務、大蔵省はその予算編成権を握る主計局を筆頭に「我は富士山、周りの省庁は並びの山」を自任する戦後日本の最強官庁です。また、その歴史は権力の源泉であるところの予算編成権や徴税権を奪おうとする外部諸勢力からの攻撃に対し、一枚岩となって組織防衛を図ってきた歴史でもあります。局や課が違えば普段は仲が悪くて口もきかないにも関わらず、いざ外からの攻撃を受ければ「大蔵省一家」と譬えられる強力な団結力を発揮し、アメーバ―のように一枚岩になって組織防衛に徹して検察や占領軍民生局など数々の強敵を返り討ちにしてきたのが財務省です。

一例をあげます。倉山氏の前掲著書によれば、戦後の片山社会党政権の基、GHQ民生局は、内閣に「経済安定本部」なる組織を創設。大蔵省の予算編成権を奪おうと画策します。それを日本の弱体化政策と見抜いた大蔵省は、当時の主計局長で後に国会議員→総理大臣になる、福田赳夫を中心に果敢に反撃に移ります。
当時、権限も名誉も予算もはく奪された彼らは、残された知力のみを駆使して権力的には圧倒的な民生局への無謀とも思える反撃に移り、結果的に民生局の企みを粉砕、圧勝します。詳細は倉山氏のご著書をご覧いただきたい。

単なる役所の歴史なのに、なぜか涙が出てしまう。感動の物語です。
彼らのような愛国心と志の高い男たちの決死の献身があったからこそ、今の日本が残っている。現に反撃の陣頭指揮をとった福田主計局長は昭和電工事件で逮捕、起訴され、最終的に無罪になるも、次官への昇進の道を絶たれ、失意のうちに大蔵省を去ります。他にも有形無形の報復を受けた官僚は少なくないと聞きます。

そんな危険を十分理解しながらも、福田主計局長を筆頭に彼らを「無謀な荊の道」へと突き動かしたのは、同世代や若い世代を戦争に送り込み死に至らしむ事態を防げなかったことへの贖罪意識や、であればこそ敗戦と飢えに苦しむ庶民、未来の世代を守るのは生き残った自分たちしかいない、という護民官としての大藏官僚の強烈な矜持だったはずです。

現代の優秀な若者たちには、「こういう人間になりなさい」、若い女性には「こういう素敵な男と出会って惚れて嫁ぎなさい」と申し上げたい。

そうした組織防衛で守られる省益が国益とほぼ一致していた80年代以前は、大蔵省の勝利が日本国民にとっての福音でもあったのでしょうが。しかし、それが激しく乖離してしまった現在、その権限の強力さ故に恐怖を感じます。彼らはこれから我が国をどこに導こうとしているのでしょう。激しく周りを破壊しながら都内を徘徊するゴジラを見守る気分です。

第5章 主要メディア、経済団体、労組、そして・・・

ア)財務省の走狗と化した主要メディア

また特に、第4の権力である筈のメディアが2010年以降くらいから劣化が激しい。2013年10月の消費増税発表の際はさんざん自分たちで煽っておきながら、発表後にぬけぬけと安倍内閣の増税方針への批判に転じました。政権を叩いとけばとりあえずは仕事をやった感じになる、という軽薄なノリしか見えてきません。記者クラブという同業者団体で新規参入を排除して官僚のレクにぶら下がって横並びの記事を書くだけ。

記者クラブの排他性については別の機会に検討したいと思いますが、
日弁連が問題点を指摘して改善を訴えた決議文がありますので、ご興味があればご覧ください。20年以上前に出された日弁連から提示された決議によって、状況は改善されたといえるでしょうか。むしろ激しく悪化しているように思えます。

最近では安倍内閣で問題となった検察官の定年延長問題。週刊誌によれば検事と新聞社のメンバーがかけ麻雀に興じていたことは記憶に新しいでしょう。

メディアはニュースを他社に先んじて報道される、いわゆる特オチを何よりも嫌います。

その結果キャリア官僚とズブズブに癒着して、横並びで官僚から渡されたレクをそのまま報道する。レクのメモをそのまま記事にするだけなので、経済評論家の上念司氏は記者クラブを「ヤギ牧場」と揶揄しています。

今や財務省の「観測気球新聞」と揶揄される日本経済新聞、東洋経済などは財務省のレクに阿鼻追従する記事しか書かずに情けないとは思わないのでしょうか。戦前、浜口内閣、井上蔵相による世界恐慌時の金本位制導入に対して、主筆の石橋湛山を筆頭に様々な圧力を受けながらも容赦ない厳しい筆誅を加え続けた東洋経済も今や、、、です。ちなみに彼らを「観測気球新聞」と揶揄しているのは財務官僚だそうです。要は激しく尾を振りつつ必死に忠誠を表す当の飼い主から露骨に馬鹿にされている訳です。メディアとして悔しくはないのでしょうか。職業人としての矜持はどこに行ったのでしょうか。

NHKは、先日黒田総裁時代の金融緩和を総括する番組を組んでいました。黒田前総裁や岩田元副総裁など金融緩和推進派の論客の意見もひろってはいたものの、所詮はガス抜きの感を否めず。全体としては結局うまくいかなかった、と日銀や財務省の意図をなぞる内容でした。NHKに限らず、日銀の金融緩和政策に対して、こういった批判は主要メディアにおいては支配的です。しかし、この論者は総じて2回にわたって断行された消費増税の影響を軽視・無視する傾向があります。先ほど述べたように一定期間の増税を封印する、という三要件の一角が崩れてしまった以上、アベノミクスの成否は正確には問えないはずなのに。

考えてみてください。市場に供給される通貨の総量(いわゆるマネタリーベース)を体の血液に譬えると・・・2013年に開始された金融緩和は、白川日銀法王の御世に、デフレ、震災、復興増税で出血多量のひん死の状態に陥った日本経済に、大量の輸血を行う緊急蘇生措置でした。しかし、病院の処置室で必死に大量の輸血をしている最中に、医者を装ってこっそりとどこかの動脈に注射器を刺し、血液をちゅーちゅーと吸っているドラキュラがいたらどうなるでしょう。当然ながら増税は市場からお金を吸い上げる作用として働きますから、それが財務省からの圧力に屈して安倍内閣が断行してしまった消費増税だった訳です。

さらにアベノミクスを通じて実質賃金が下がった、という財務省の意を受けたであろう厚労省のレクを主要新聞がそのままぶら下がって垂れ流した記事には頭を抱えました。非正規とはいえ雇用が増えて失業者が減ったのは間違いなくアベノミクスによるデフレからの脱却の成果だと思います。
この方々はインフレ率と失業率は反比例するという、フィリップス曲線をご存知ないのでしょうか。念のため高橋氏が作成した図表を貼っておきましょう。

(『財政破綻の嘘を暴く 「統合政府バランスシート」で捉えよ』
(高橋洋一著,平凡社新書))P28 から転載)

上念司氏によれば、多くの人が失業に苦しんで少数の正規雇用者しか働けなかった頃の実質賃金に比べ、非正規で安い給料とはいえ数百万人が職にありつけた後の実質賃金が下がるは当然だという説明です。

イ) 経団連の退廃

加えて、経団連もトップが「増税議論から逃げるな」と、我が国の今の淀んだ「空気」の中でもっとも安直で、しかしながら世界的基準に照らせば時代錯誤も甚だしい頓珍漢な声明を出して財務省に追従する始末。税率はそれ自体利権ですから消費税で軽減税率の適用を受けて財務省の飼い犬に堕している新聞社同様、財務省に媚びて自分たちの産業に有利な税制軽減措置や交付金給付にあずかりたいというセコイ下心が見え見え。

医療や介護や学校教育、住宅用の住居、 それぞれ消費税非課税分野だけど、 この「輸出」みたいに還付金まで払われて、 完ぺきに免税になっている分野は、 実は他には無いんだよね~。 それに対してさ、 「なぜ輸出業だけ優遇するの?」 「医療や学校...

Posted by ラブ消費税 on Saturday, May 3, 2014

結局、 国会で行なっている予算のやりとりなんて、 われわれが作成したものをベースにしているので、 言い方を変えると、 国会なんて、 財務省の手のひらの上で踊っているだけなんですね(笑) つまり、 軽減税率だって、 われわれ財務省が認めるか...

Posted by ラブ消費税 on Thursday, May 15, 2014

増税をやめて民力休養を断行、企業間で連携しつつ適切な賃金ベースアップを実行すれば、国としては逆に名目GDPと税収アップにつながり、企業としても、軽減税率適用などの税制優遇や、輸出還付金といった交付金受給、賃金抑制等で拾える小銭とは桁違いのリターンに預かれる、という、少し考えれば想像できるはずのことが見えなくなってしまっているようです。

みすみすチャンスロスを繰り返している点で、善管注意義務違反によって投資家に与えた損害は甚大です。社会全体への裏切りでもあります。

国全体の成長を願い、安直なことを何より嫌った旧大蔵省の先輩官僚や、高度経済成長時に、国民全体のより豊かな生活の実現を目指して無税国家論を建学の本義として松下政経義塾を創設した松下幸之助をはじめ、日本を戦後経済をけん引してきた昭和の起業家たちは草葉の陰から、後輩たちのあまりの情けない醜態を前に頭を抱えつつ、自分達の教育が至らなかったが故に、今の若い世代が食い殺されていく様を断腸の思いで眺めているのではないでしょうか。

ウ)企業との健全な対立を怠る労組

それから、先ほど述べたように、高いインフレが続きながらも税収増に伴う減税措置や、賃金増によってインフレ率を上回る可処分所得の増加につなげ、さらなる税収増と企業の成長、全体的な経済成長を果たしている国はイギリスはじめなんぼでもあります。

それらの国に共通しているのは、労働組合がしっかりと賃金アップに向けて行うべき仕事を行い、企業側と健全な対立構造を維持しながら適正な賃金のベースアップを実現しているという事実です。

かつて世界最強とされたイギリス労組と真正面から対決しつつ、官僚の大反対を抑えて大規模な行政改革を断行してイギリス経済を救った「鉄の女」サッチャー元首相も、行き過ぎた労組の要求には断固対決しながらも、その存在意義までは決して否定しなかったのは慧眼です。

日本の現状を見れば、本来賃金など労働者の労働条件の改善のみに注力すべきはずが、特に政治色が強い極左的活動家に浸食されたり、あるいは労組と企業側と融和が進みすぎて仲良しクラブ化したりして機能していない事例が多い。

日本労働組合連合会の会長がSNSに「財務大臣とランチしました♪」とアップし、経済同友会との会合で「消費増税に賛成」を表明してしまう当たり、職務への自覚がこの御仁に備わっているのか。疑問です。


第6章 結び 肝心なのは、これから、「どうする日本」

ア)最近の状況 好転への兆し


しかし、今年に入って希望も見えます。

新日銀総裁に就任した植田氏は初の学者出身で、我々国民の世論動向でどうとでもなる感じです。

今のところ黒田路線を継承してインフレターゲットを設けた金融緩和策を継続。岸田総理も財務省の言いなりになったままでは国民共々食い殺されるだけ、と気付き始めた様子。 まずは日銀総裁人事を誤らなかったことは高く評価できます。

コアコアCPIも3%を越えてデフレは脱した、と言って差し支えない局面を迎えつつあります。税収は自然増で史上最高の71兆円へ大幅上振れ。遅まきながら安倍さんと黒田さんがまいた布石が、今になってようやく生きてきた感じがします。円安によって半導体事業など過去日本のお家芸と言われた分野でも力強く国際競争力を回復しつつあります。

ただ、有効求人倍率は昨年末に比べ下がっているなど、未だインフレが賃上げ→可処分所得の増大につながっているとは言えません。またインフレも望ましいディマンドプル型ではなく、コストプッシュ型インフレに移行しつつある好ましくない状況です。仮説通り、まずは2年間の金融緩和の継続が望まれます。

インフレ下での税率の現状維持では実質的に増税と変わりません。かつて高度成長期の日本や、現在の日本以外の諸外国があたりまえのようにそうしているように、今こそ税率を下げて税収増加分を国民に還元し、その結果さらなるGDP増と税収自然増が達成されるか検証すべきです。

自民党税調が防衛増税の再来年以降への封印を宣言するなど、最近財務省が明らかに今までのように与党と官邸をグリップしきれていない感が伝わってきます。性懲りもなく通勤手当や退職金への課税強化など、日経新聞など御用メディアを通じて次々に気球を投げ上げてはきますが。

イ)どうする、日本

財務省と日銀には、戦前の高橋是清大蔵大臣や戦後の池田勇人総理大臣の時にそうだったように、一体となって金融緩和と金融引き締めをハンドル、減税と増税をアクセルとブレーキとして臨機応変に使い分け日本経済を安定成長に導く、という本来の姿に戻ってほしい。

倉山氏がそのご著書で説明されているように、かつての大蔵省は与党自民党とともに「国民を食わせる」ことこそ自分たちの使命とする愛国官庁でした。
今だって、東大法学部を優秀な成績で卒業しながらも、お金儲けのための起業や就職はせず、あえて薄給の公務員を志すわけですから、元々は公共性、利他性といった志が高い人々なのです。それが任官後、時を経るにつれて組織内の淀んだ空気の中で少しづつ理想は失われ、気が付けば省益優先に行動している自分に気づく。前述した木下元次官のように、「増税を成し遂げた官僚が評価される」という狂った組織構造の中で、頭のいい彼らが「何かがおかしい」と感じていない筈はありません。

かつての大戦においては、よく言われるような「軍部」などといった一体的な組織はどこにも存在せず、陸軍と海軍は「まるで別の国」と例えられるほど。さらに各々が統制派・皇道派、条約派と艦隊派に分かれ、互いに敵国の米英中以上に反目対立し合って予算を奪い合い、殺し合っていました。その結果、米国を仮想敵として予算をとってきた海軍は「勝てません」とは口が裂けても言えなくなります。「じゃあ、なんのために莫大な予算を要求してきたのか」と憎き陸軍の前でメンツが潰され予算を奪われるわけですから。そんなこと省益第一の彼らには死んでも絶対にできません。陸軍も同様。その結果、「負けるまで戦争がやめられない体質」が出来上がってしまいました(『お役所仕事の大東亜戦争-未だに自立できない日本の病巣』(倉山満著,マキノ出版)。

今の官僚、政治家、国民はこれを笑えるでしょうか。成長したでしょうか。
日本では、こういう「部」や「課」「派閥」間の維持やメンツが交じりった予算争奪、や不毛な対立は政府、省庁のみならず、一般企業でもよく聞かれるところ。私も胸に手を当てれば、恥ずかしながら理解できる心情でもあります。皆様はいかがでしょう。所属組織内での「和」は他部署への遺恨や対立を伴う場合が多い。

おそらく官僚の過半数以上は内心は「このままでは先の戦争同様、増税をやめられないが故に滅亡する」とわかっている筈。財務省の若手の皆さんには、今の増税一択に汚染された省内の淀んだ空気の前でなすすべなく立ちすくむ情けない状況を脱して欲しい。

かつての偉大な先輩たちの事績を思い出し、省益、既得権益確保に狂奔する姿勢から脱せよ、と。昔、大蔵官僚が抱いていたノーブレスオブリッジの精神を思い出して気高く立ち上がれ、と申し上げたい。

そして財務官僚をそういった本来の姿に戻すためにも、まずは私を筆頭に主権者・有権者である国民自身が、成熟して適切な民主的コントロールを行う能力を備えるべきである、そのように思いませんか?
1億2千万人全員は無理だとしても、本稿をここまで読んでくださった中からたった一人でもいい。同じ問題意識を共有して、「これから何ができるか」を考える仲間が欲しい。そういう想いを込めつつ、本稿を書き上げました。

ここまで最後までお目通し下さり、深く感謝いたします。

【参考・引用文献一覧】

『増税と政局・暗闘50年史』(倉山満著,イースト新書)
『沈鬱の平成政治史 なぜ日本人は報われないのか?』(倉山満著, 扶桑社新書)
『これからの時代を生き残るための経済学』(倉山満著,PHP新書)
『検証 財務省の近現代史』(倉山満著,光文社新書)

『デフレと円高の何が「悪」か』(上念司著,光文社新書)
『「日銀貴族」が国を滅ぼす』(上念司著,光文社新書)
『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(上念司著,講談社新書)
『あなたの給料が上がらない不都合な理由』(上念司著,扶桑社)
『何をしなくても勝手に復活する日本経済』(上念司著,ビジネス社)

『日本は世界一の政府資産大国』(高橋洋一著,講談社+α新書)
『財政破綻の嘘を暴く 「統合政府バランスシート」で捉えよ』(高橋洋一著,平凡社新書)
『デフレと超円高』(岩田規久男著,講談社現代新書)
『ミルトン・フリードマンの日本経済論 「金融緩和の下で減税せよ」』(柿埜真吾著,PHP新書)
『自由な社会をつくる経済学』(岩田規久男・柿埜真吾共著,読書人)
『リフレが正しい。FRB議長 ベン・バーナンキの言葉』(高橋洋一監修・解説,KADOKAWA)
『さっさと不況を終わらせろ』(ポール・クルーグマン 著, 山形 浩生 解説, 翻訳 ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
『日本病』(永濱利廣著,講談社現代新書)
『デフレ不況 日本銀行の大罪』(田中秀臣著,朝日新聞出版)
『官僚との死闘七〇〇日』(長谷川幸洋著,講談社)
『財務省が隠す650兆円の国民資産』(高橋洋一著, 講談社)
『財務官僚の出世と人事』(岸宜仁著,文春新書)
『追跡 税金のゆくえ ブラックボックスを暴く』(高橋祐貴著,光文社新書)
『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋』(渡瀬裕哉著,光文社新書)
『2020年 世界経済の勝者と敗者』(ポール・クルーグマン・浜田宏一共著, 講談社)
『中央銀行―セントラルバンカーの経験した39年』(白川方明著, 東洋経済新報社)
『日本銀行は信用できるか』(岩田規久男著, 講談社現代新書)
『日本銀行百年史』(日本銀行百年史編纂委員会編、1982~86年刊行)※
※掲載場所

『消費税は民意を問うべし ―自主課税なき処にデモクラシーなし』(小室直樹著,ビジネス社)
『シリーズ日本の近代 - 官僚の風貌』(水谷三公著,中公文庫)
『お笑い大蔵省極秘情報 官僚はなぜ腐敗するのか』(テリー伊藤著,飛鳥新報)
『大蔵官僚の復讐 お笑い大蔵省極秘情報2』(テリー伊藤著,飛鳥新報)
『日本近代史』(坂野潤治著,ちくま新書)
『官僚制』(マックス・ウェバー著・阿閉吉男訳, 恒星社厚生閣)
『職業としての政治』(マックス・ウェバー著・脇圭平訳, 岩波文庫)
『空気の研究』(山本七平著, 文春文庫)
『お役所仕事の大東亜戦争-未だに自立できない日本の病巣』(倉山満著,マキノ出版)


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