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大人になったケーキ。(食エッセイ)

去年のお盆。

帰省の手土産は、近所のケーキ屋さんの色んなケーキの詰め合わせにした。
ショウウィンドウの中には、フルーツが乗ったケーキや、ショコラの上に金箔が乗っているもの、見た目にも華やかなものばかりだ。
どれも美味しそうだったし、みんな好きなものを選べるようにと、全種類を1つづつ買っていった。姪っ子や甥っ子たちの分も。

帰省し、手土産を見た大人たちは、目を輝かせた。
「上等なケーキやわ~。」
「美味しそう!」
「子供達には勿体ないわ~!」
「子供食べられるかな?」

???

小学生以下の姪っ子甥っ子たちが、ケーキを見ると「いらな~い。」「これなら食べれるかも。」

私の心の中(えっ!?全部すっごく美味しいよ!)

そう、私は子供のことを全く分かっちゃいなかったのだ。

子供にとってのケーキとは、イチゴが乗った「ショートケーキ」や「チョコケーキ」なのだ。
金箔がのったキラキラしたケーキや、フルーツが沢山のったタルトを見ても、美味しそうとは思わないらしい。

大人たちが子供たちの分まで、美味しく食べてくれたので良かったのだが、今度行く時には、子供も喜べるものにしよう。と考えている。

確かに、私も子供の頃、同じような経験をしたことがあった。
親たちが「子供にはもったいないわ~。」と言う中で、ケーキだと聞くと、「食べる!」と言い、目の前に出されたケーキが見たこともないケーキだったときの残念さ。

「これ、ケーキじゃない。」

何かとハイテクになっていく世の中で、子供にとってのケーキの王道は、今も昔も変わらないようだ。
そういう意味ではちょっとだけ安心した。

子供が金箔がのったケーキやフルーツタルトを食べながら、「やっぱりこうでなくっちゃ♡」なんて言っていたら恐ろしい。

私は、いつのまにか、子供の心を忘れていたのだ。

知らず知らずのうちに、私たちは、大人になっている。

この出来事がなかったら、私は子どもの頃に好きだったケーキの記憶など、もう一生思い出さなかったかもしれない、、、。


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