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メニュー開発の長い道のり。自信作なのに「出せない」季節限定商品

※今回は、サラダ弟こと、武文謙太の視点でWithGreenを語ります。

冬の限定スイーツ、温かい飲みもの、お鍋やグラタン。ブリや牡蠣、いちご、みかん、白菜に春菊……。寒い季節に食べたいもの、たくさんありますよね。

季節料理や旬へのアンテナが高いのは、四季がある日本に暮らす「ぼくたちらしさ」です。

WithGreenも、事業のアイデアは「​​日本らしさ」を突き詰めたところからはじまっています。(詳しくは兄がつづった1話へ )。

だから、WithGreenのメニューにも「季節限定」があります。2種類のメニューが2ヵ月に一度入れ替わる、日本の旬を感じるサラダボウル。いまでこそ各店舗で1日40食~50食も出る人気メニューですが、実は、全店舗で安定供給できるまでには相当な苦労がありました。

2022年秋の季節メニュー:柿ときんぴらごぼうのサラダ

メニューに載せているのに「無い」

2016年の創業から土台にあるぼくたちの想いは、国産野菜を味わってもらうことを通して、日本の農場と、お客さんの健康とをつなぐこと。

特に四季を通して移り変わる旬の野菜は、栄養価が高くお客さんに季節を楽しんでもらえますし、農家さんの個性や個々のストーリーを届けることができます。「季節限定サラダボウル」の販売は、WithGreenの価値を体現するものであり、どうしてもやりたいことでした。

開業してしばらくは、3ヵ月に一度入れ替わる2品を、季節メニューとして用意しました。「○○農家のパクチーとむし鶏のサラダ」といった、契約農家さんから直接仕入れた限定メニューとして、1店舗から3店舗までは、問題なく提供できました。

ところが、4店舗~5店舗と増えた3年目から、こだわって選んだ旬の野菜を使おうとしても、足りない。店舗数が増えれば、当然サラダの注文数は増えます。供給量が足りず、各店舗へ行き渡らない事態に落ち入りました。

あるいは、限定期間の3ヵ月の間に、価格が変動することもありました。農作物は天候などの影響で、供給量や値段が上下動します。産地直送の水ナスを使ったときには、契約していた農家さんが収穫できないことがありました。ならばほかで仕入れようとしたら、品薄から価格が高騰している。

はじめは利益が出なくても販売していましたが、原料費が高額すぎるゆえ、欠品にせざるを得なくなりました。やがて常態的に欠品し、お客さんの注文を受けられない。そんな状態が続いてしまいました。

「季節限定サラダボウル」としてメニューにのせているのに、野菜が店に無い。サラダボウル専門店と掲げる飲食店として、猛省するべき失態でした。おいしいサラダを出したいという理想を追求するゆえに、野菜の収穫量や農家さんの現実が見えていませんでした。お恥ずかしい話です。

色とりどりな季節ごとの野菜たち

"雰囲気で季節感を出す”に作戦変更

お客さんに安定供給できることを、最優先にしよう。

「季節限定メニュー」は、“雰囲気で季節感を出す”という方向に切り替えました。雰囲気で季節感を出すとは、たとえば、夏は辛いものが食べたくなるから「スパイシーチキンのタコラスサラダ」、冬には「生姜香るジンジャーチキンのサラダ」といった具合です。多くの飲食店が採用している、季節メニューですね。

これだと、野菜自体の旬は問われません。野菜の獲れる期間を考える必要は、なくなりました。

計画通り、旬の野菜の収穫量や供給量に左右されることなく、お客さんのオーダーに応えることも叶いました。一定数のご好評をいただくこともできました。

……でも、これでいいんだっけ? モヤモヤした違和感が、胸に残ったんです。

自分が選んだ原点に立ち返ると見えてきた

日本の農家さんを大事にすること。100%国産野菜を使うこと。ここは、ブレてはいませんでした。けれど、すっきりしないんです。

初心に返ると、見えてきました。

立ち止まったのは、2020年2月です。コロナウィルスの出現で営業ができなくなり、お客さん自体が減ったこと。時間がぽっかりできたので、考えるしかない環境に置かれたのは大きかったです。

なぜ、WithGreenを始めたのか?

やりたかったことは、日本の農家さんが四季を通して生産した野菜をサラダボウルにし、ファストフードの業態で地産地消や、旬の野菜を提供すること。

それを愚直に実践してみたものの野菜の供給量が足りなくなったため、メニューで季節感を出すことに切り替えた。この変更は、自然とともにあるサービスの宿命であり、現実的な施策を選んだといえるかもしれません。

ただ一方で、「国産だったらいいよね」と甘んじ、早々に諦めていたところは否めませんでした。

国産野菜へのこだわりは、日本の農家さんのストーリーも一緒に伝えることで「おいしい」を増やそうとしていたからなのに……。ほんとうに追求するべき自分たちのコンセプトと、メニュー開発が離れてしまっていたことに気づけました。

「メニューに載せておきながら、出せない」という苦い敗北で、真正面からその課題に向き合うことが怖くなってしまっていたのだと思います。

創業者兄弟で、秋メニューに使った「柿」の生産地を訪問

「限定メニューの期間」「仕入れ方法」を解決して実現

どうすれば、実現できるのか?

旬や季節の食材そのものを味わえる飲食店で、1,000円前後の価格帯は、ほとんどありません。WithGreenといえば「ここでしか味わえない旬の野菜」と言ってもらえるような、これがぼくらの価値だと胸を張れるメニュー開発から、逃げないことにしました。1年前、2021年のことです。

整理してみると、2つを改善すれば突破できると見えてきたんです。

1つは、季節限定メニューの入れ替え期間を「3ヵ月」から「2ヵ月」に変えること。

農家さんと改めて話をするなかで、もともと出していた「3ヵ月に一度入れ替わる季節限定」の期間が最適ではないとわかりました。以前のぼくは、春夏秋冬に合わせて、年に4回メニューが入れ替わればいい。そう思い込んでいました。

ところがよくよく聞くと、ほんとうの野菜の旬は1ヵ月〜2ヵ月しかない。「3ヵ月間で替わる」設定は、獲れる野菜や収穫量に対して、農家さんに負担をかけていました。野菜の事情に合わせた、2ヵ月サイクルで、季節メニューが移り替わる設計にしました。

2つめは、農家さんとの直接契約ではなく、農家さんと産地直送でしっかり結ばれている八百屋さんと新たに組むこと。複数の農家さんとつながれることで、季節野菜の安定供給ができるようになります。

具体的には、11月、12月の限定で出している「ジンジャーチキンとあやめ雪かぶのサラダ」の場合、かつては、この時期しか獲れない「あやめ雪かぶ」を集めてくるところから担っていました。そこを、生産農家さんと複数取り引きをしている八百屋さんとタッグを組むことで、信頼してお任せできるようになったのです。

構造を見直すことで、できないと諦めていたことを更新することができました。いまの供給サイクルを拡大すれば、これからWithGreenが50店舗に増えても、全店舗で対応できると考えています。

2022年冬の季節メニュー:ジンジャーチキンとあやめ雪かぶのサラダ

Whyはそのサービスの根幹であり世界観

「Howは変えていい。でも、Whyは変えてはいけない」

これは、サラダ兄こと、ぼくの実兄でありWithGreen代表の言葉です。季節限定サラダの理想を諦めなかったことをはじめ、事業に対するぼくたちの姿勢がよく表れていると思います。

目的のためのやり方(How)は、あらゆることを粘り強く試す。やり続ける。けれど、それをなぜやるのか?(Why)は、揺らがない。Whyは、創業時に最初に描いた地図であり、世界観であり、事業の根幹だからです。Whyに立ち返ると、やるべきことがクリアになりました。

この時期に人が食べたいものは? そんな問いから商品開発ははじまる

この時期に、人が食べたいものってなんだろう?

メニュー開発を担うぼくの、アイデアのはじまりです。11月、12月の季節限定メニューは、生で丸かじりできるほど甘いたまねぎがおいしい「スマイルボールとビビンパのサラダ」と、紫と白の色合いが美しいかぶを使った「ジンジャーチキンとあやめ雪かぶのサラダ」です。いましか食べられない旬の野菜を活かしつつ、冬のはじまりを感じるサラダボウルに仕立てました。

1月、2月となると、お正月太りも気になるでしょう。胃を休めるものだったり、カロリーの低いものだったりがほしくなる。ここでは、"メニューの雰囲気で季節感を出す”も大切な視点です。季節限定サラダの理想を追い求めたプロセスも、いまに活きています。

2023年1月、2月メニューは、実のところまだ、完成しきっていないんです(毎回、時間の許すギリギリまでねばってしまいます)。現時点(22年12月26日)でお伝えできるのは、「WithGreenがこれまでトライしていなかったこと」×「いまが旬の『古代蓮根』!」です。

ぜひ、ぼくたちの自信作を確かめにきてください。お店で、お待ちしています!

次回は、兄の視点に戻ります。休業を強いられ、お客さんの足が遠のいた「コロナとの攻防」を振り返ってみます。

▶︎第1話はこちら

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WithGreenのサラダボウルで、日本のおいしさを

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サラダボウル専門店 WithGreen/ウィズグリーン編集協力/コルクラボギルド(文・平山ゆりの、編集・頼母木俊輔)


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